猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

会いたい会えない会わない

秋の始まりの頃のようだ。 いつもの時間、いつもの場所。待ち人(待ち猫?)は姿を見せてはくれない。 彼の特等席に陽があたる。そして、その時間はどんどん短くなっていく。 冬の入り口。 彼も私も会いたいのに会えないから会わない。 とびきりのいい声が、…

やっぱり違うと

あなたは朝を味わい尽くし わたしは夜を味わい尽くし そのうち互いを味わい尽くし やっぱり違うと離れたのでした あなたは朝に風を溶かし わたしは夜に雨を溶かし そのうち全てに愛想をつかし やっぱり違うと離れたのでした それでも忘れられなくて それでも…

傷つけあうかわりに

「あなたはやさしいから」 「なんだか冷たいのねえ」 同じ人からぶつけられる 感情、なのだろうか 記憶、だろうか あなたに似たのよ、とは言えず はいはい、と笑う 今が満たされるのなら どこかに優しい嘘が混じっても 許されるだろうか 傷つけあうかわりに

冬の入り口

複雑すぎる空の色だ 冬の入り口はいつもそうだ 薄紫で辛そうで なのに桃色が紅さして笑っているんだ まるでいつかの春の色だ まるでいつかのあなたのようだ 遠く旅するあなたのようだ

妄想より童話より奇なり

散歩コースのひとつに、猫好きのご夫婦が暮らしているお宅がある。 割と自由にさせている様子だが、ご近所の理解が深いのだろう。トラブルめいた話を聞いたことはない。4〜5匹(もっとか?)は暮らしているはずだが。 車の通行量も少なく、人も猫も譲り合っ…

休日

「誰かと約束を入れて遊び倒す!えーと前後1日は余裕を持って予定を入れない、んでもって天気予報を確かめて服買ってバッグ買って交通調べてプレゼント用意して」。 出かける前からくたびれてしまいそうだ(汗)。 楽しみたいのか、疲労困憊になりたいのか…

ここにいる理由

鳴らない。今朝も。 そろそろこちらからかけてみようかと、寝床を離れては考え込む。そんな朝は13回目を数える。 モーニングコールの約束を交わしたのは随分前だった。 互いにマメなたちだったので、遅れたりフライングしたりすることはあっても、鳴らさない…

嫉妬と憧れと尊敬と安堵

久しぶりに男友達の車に乗せてもらった。 幸せこの上ないことに互いの家族公認。いわゆる「異性の親友(戦友?)」である。 いっき〜悪い!運転手提供するから、ケーキ屋さんとスーパーでいつもの頼める? 「いっきー」とわたしを呼ぶのは、後にも先にもこの…

昔々のある日

クリームパンのような人生だ 甘いんだよお前は、の代わりに そんなことを言ってくる人がいた 伝わらないとでも思っているのか やさしさだと信じ込んでいるのか こちらから言わせれば あんたってば、お幸せね そんなところであるのだが 知らん顔して 評判のク…

フルーツドロップ

みかんをひとふさ あなたの胸に飾りましょう 丁寧に剥いて 丁寧に舐めとる 甘いか酸いか苦いか辛いか いつまでもフルーツドロップみたいな月を ふたり飽きもせず 痛いと笑って 心地がいいねと息を吐き 結局やっぱり寂しかったと 泣いてみせる みかんをひとふ…

乾杯!

それじゃ わたしの正直さに …違うな きみの嘘つき度に …かもしれないけど今は違うな なんでもいいよ また会えた生きてふたりとも だね だね 🍻🍻🍻✨✨✨

ケンカ

本音はどこか 本心はどれか かみさまあくま しょうじきうそごと 天と点 織り込まれ寄り添われ 真実はそれか 悪意はここか 誤解も理解もかやの外

別れ

あなたは いつもわたしと一緒にいるのです 生きていようがそうでなかろうが たとえ多次元でも たとえ異次元でも 概念がどうであれ 宇宙空間の外には行けないのだから 祈るように願うように儚く淡く あなたはわたしと一緒にいる 永遠に触れ合えなくても

金曜のラジオと僕と君

金曜のラジオは苦手で 導入したての有線に切り替える はしゃぐでなく 笑い飛ばすでなく ただ音楽がいつまでも 空間を満たし続けるのだ 自己嫌悪に陥る日 元気のよいパワフルな明るさがつらくて 導入したての有線に切り替える ただ音楽がどこまでも 精神を満…

ふこうを嘆くことはしあわせを嘆くこと

ふこうを嘆くことは しあわせを嘆くことだと 今朝もきみに笑われる あなたといることがしあわせじゃないとは 思ってないけど ふこうだって同じ場所から生まれるでしょ そうだよ 隣り合わせどころか 混じり合ってひとつになっていくものだ きみとこうしていら…

きみの言い訳を黙って聞いてる

昨日はそりゃ暑かったから すぐ気づいてよかった 忘れてたのよなんてこと 残った肉炒めをレンチンして そのまま半日忘れたの ごめんね 口に入れちゃおかな ほんの一瞬だけ思ったけど やっぱりそりゃ暑かったし だいじょぶそうな気もしたけど しょうがないね …

あの人は本当に

「始まるよ」 あの人の声に誘われるまま アプリを起動する ありえないのに あの人は本当にとても遠いところで 「ほら」 こんなふうに繋がっても困るよ だって だってさぁ 「約束したでしょ」 夢とも死ともつかぬのに 生とも闇ともつかぬのに 「始まるよ」 あ…

過去

夜と猫

小さい命の寝息と いつまでも続くゴロゴロ音 ウニャウニャ寝言 熱帯夜なのに ぴとっと寄りかかって きみの体感温度はどうなってるんだい 小さい命の寝息と いつまでも続くゴロゴロ音 ウニャウニャ寝言 熱帯夜なのに ぴとっと寄りかかって 僕は枕元の水筒に手…

きみの言葉

クリームチーズが 包み紙にしがみつく きみの言葉はいつだって そんなふうなんだ ひっかくでもなく 擦り寄るでもなく ぼくをまるでいないかのように 振る舞って ぽつりつぶやくんだ “孤独なんて” クリームチーズが 指先にしがみつく きみの言葉はいつだって …

頬に浮かぶ悲しみ

「どこにでも、いる」 その人の頬に悲しみが浮かんで すぐに消えた 励ますことが無意識の意地悪につながりそうな わたしたちは同じ光景を見たのである ため息はつかない 不穏な空気を察したら姿を消す 自分を大事にすることは 逃げじゃない その上で できる…

伝える

自分の中だけで、とどめておいたことがある。 ひそかに、そっと。ひそかに、ずっと。 DMやメールで伝える内容ではないな、と悩んでいたところ、幸いなことに直接伝える機会に恵まれた。 伝え方には気を遣ったが、誰かに訊かれてもわからないように言葉を選ん…

そんな雨など存在しない

特別でやさしい そんな雨など存在しない 激しいか静かなのか それだけだ 寄り添うようにあたたかい そんな恋など存在しない 激しいか静かなのか それだけだ 触れ合うほどにつのるのは 孤独に似た痛みで そこに温度は存在しない あなたがいた ただそれだけだ

今日は今日とて

今日は今日とて あめざーざー 昨日の晴れ間は何処へやら 90パーセントの湿度だってさ そだね いつもの天気で いつものことだし いつもの会話を繰り返すだけ 今日は今日とて あめざーざー 昨日の晴れ間は何処へやら 雷雲が抜けそうだよ そだね いつもの天気で…

ことば

あなたの国の言葉で まっさきに「好き」を覚えました それから 「愛してる」と「おはよう」を知りました わたしの国の言葉で お別れを言われた日 「ありがとう」と「またね」を あなたの国の言葉で伝えられなかったことが 今でも心残りです 元気でいますか …

手に入れたのは

手に入れたのは 唇でも愛の言葉でもありませんでした せっかく受けとめてさしあげたのに あなたときたらいつも知らん顔なさるんですもの あたくしに心臓をやろうと 約束なさったではありませんか もしや最後のひとつだったのでしょうか ご自分のためにお使い…

風を味わいたくともすでに四季すら曖昧で

とても悲しい とても嬉しい 我らは「とても」にしかもはや 反応できなくなっている とても許し難い とても心に刺さる 我らは 「とても」にしかもはや 心が動かせなくなっている 風を味わいたくともすでに 四季すら曖昧で 雨に委ねたくともすでに 天気すら曖…

遠慮がちにカーテンをひく音が どこかの部屋から聞こえて 今朝は明るすぎるのか 早起きの妻を思う 二度寝の習慣は僕にしかない いわゆるショートスリーパーの妻を 羨ましがったり 体が保つのか気にしたり 無理に合わせようとしてみたり そんな時間はもう見当…

灯台躑躅

「だけど」をやめ、た 断言したか、った 灯台躑躅はつぶやくと ふるりふるり体を揺らした 「それなりに」をやめ、た 愛したか、った 灯台躑躅は俯くと ふるりふるり体を揺らした 去年と同じ場所で出会っても 器に宿るものは僕の知らないあなたなのか 来年ま…

大先輩のこと、少し。

詩人は嘘をつく。 虚構と現実を見極めた上でね。 敬愛してやまない大先輩が、 悪戯っぽく話してくれる。 画面の向こう側で。 私は自分の未熟さを指摘されたと思い込み、 いつものように少し落ち込む。 深読みしすぎだ、と大先輩がニヤニヤする。 虚構世界を…