猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

喉仏~空想版「フシギナカラダ」より

幼いころから 欲しくてたまらなかったものの ひとつ マフラーに隠されている季節は いっそう思いが強まる

最終章あるいは人生の

その物語は まだ終わりが見えず ラスト一行 なんとしようか あぐねている 明るめに 静かに それとも 丁寧すぎるほど よく編んで 控えめな あるいは ありがとうをかき抱き あるいは いつかまたねと笑って その物語は まだ終わりが見えず ラスト一行 なんとし…

拡散

かわいい かわいいかわいい かわいいかわいいかわいい いいね いいねいいね いいねいいねいいね すごい す い いぃぃ 正しいのは しくったのは バグったのは 初めのを せば 消 る 終 だ ら だからなあんにも 心配いらない まって よ だ っ い う 静かにして …

真夜中の止まり木

25時をこえたので もうバッハでもシューベルトでも どうかとすすめるものもおらず このまま 車でも呼ぼうかと スマホに手を伸ばす 星も月も 猛スピードで流れていくので 猫にも追いつかれはしないだろう 例えばそこに 風磨きうさぎが現れて 人生どうよ? そ…

風磨きのうさぎ〜ダンス

まだ 星が溺れるほど雨が降ったり ついには空ごと降ったり そんなことが起こる ずっとずっと前のお話です 大気がすっかり冷え切って そこかしこがカチンコチンになった夜 湖畔にふわふわした生き物たちが 姿を見せました 風を磨くうさぎたちです こんな日は …

客人-2

雨のたびに 透明な色した孤独が 僕の隣に訪れます もう行ってしまったとばかり 思っていたのですが そしらぬ顔で 気づけば隣に座っています 外は雨 誰も通らない静かな朝 透明な色した孤独が 僕の隣に訪れます もう行ってしまったとばかり 思っていたのです…

反覆

自分を全否定し始めたのは 言葉を何とか操れるように なった頃でした 家の人らは 愛の言霊より先に 手が出るタチであったので 甘えることも 頼ることも すっかり諦めて 大人になってここから離れることばかり 小さな脳みそで夢みていたのです 命の片付けごと…

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん〜店主、旅に出る-4

ごとんごとん ごとんごとん 列車は 毛糸屋さんのいない街 という駅にさしかかりました もう随分と前のこと ただただその名前に惹かれて ホームに降り立ったことがあります トーザ・カロットでもよく知られている ゴロンゴロンしたみかんの樹が 駅のホームを…

冷えこむ

かみさまとうさぎ

虚空に青い光が見え隠れしています ぷかりぷかりと 浮かびながら くるんくるんと回るさまを 風磨きのうさぎたちは 遥か遠くからこわごわ眺めていました なにもかも 星ごとぷかぷか溺れているもので 風磨きどころではなくなってしまったのです それで お天気…

風のほどける春までは

月にあらわにされるなら 恋も悪くはないのでしょう 闇に隠しておくのなら 苦悩も魅力になるのでしょう 風のほどける春までは 溶けることさえ忘れましょう

散乱

私はあなたを見つけられず 風を弄んでいた あなたは私を見つけられず 時を置き忘れていた まるで 履き慣れない靴のようだと 苦い顔して振り返りもせず ふたりはそのまま 出会うことなく 光と影の混ざった木陰 さびしいと 可笑しいは つながってることに 気づ…

珈琲

耳を満たすのは 深煎りコーヒーに添えられた ボサノバの奏で 記憶にさした 一葉の栞を抜きとれば すでに涙もこぼれず 元に戻すか 読み進むか 少し笑ってコーヒーを含んだ 耳を満たすのは 深煎りコーヒーに添えられた ボサノバの奏で 記憶にさした 一葉の栞を…

雲を数えることを覚えたのは

雲を数えることを覚えたのは 言の葉を ようやっと舌の上に のせられるようになった頃 誰もがそうだと疑わず 数えて見せては 大人に困り顔された 雲の色は深く 風の色は濃く やがて空が落ちるのだと知っても 怖いとは思わなかった 雲を数えることを覚えたのは…

冬晴れ

墓標~空想版「フシギナカラダ」より

体とココロの境目に そっと立てておく柱のようなもの 大抵は 掘り返したくもない 記憶たちが葬られている

ひとりごはん

年の瀬の うらさびしさを 刻み混ぜ込むドライカレー

欠礼の

欠礼の 届く季節に心解け 今ならきみを 許すべかりもこそ

日常光景

いま すれ違ったのは 朝のかみさまだろうか それとも 夜のかみさまだったろうか 襟元すくめて ふと考える 日の出前のアーケードを抜けながら

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん〜店主、旅に出る-3

猫そっくりの毛糸屋の店主は 久しぶりに鉄道の駅まで やってきました あと30分もすれば 小さなホームに ゴロンゴロンしたみかんと同じ色の 列車が着く時刻 毛糸屋の店主は “みかんの香りが懐かしくなった” という名の毛糸玉をとりだすと さささささ! 魔法の…

冬の朝

冬のカマキリ

冬のカマキリのように 彷徨えば すでに鎌もやわらかく 喰うべき相手も見当たらず ただ孤独に寄り添っている 冬のカマキリのように 彷徨えば すでに卵も産み落とし 狩るべき相手も土の底 ただ季節に寄り添っている 冬のカマキリのように 彷徨えど いつかの夢…

影~空想版「フシギナカラダ」より

触れたいのに触れられない 隠れたいのに見つからない 切り離せればいいのにと 強く願う代物

ほろほろと

ほろほろと ささめきほどけ きみを抱く

届かぬ想い

さよならを 敬語で書けば ありがとうになる

影ふみ鬼

一生に一度だけ 約束は 果たされるかもしれない 伝わらないかもしれない それでも 一生に一度だけ 強く強く願う 虫の音は あの日と変わりなく 空の青も むしろ鮮やかすぎて だから 一生に一度だけ 影ふみ鬼たちが 儚く混ざり合っても きみの幸せを 深く深く…

触れる~空想版「フシギナカラダ」より

音 ことば 指 口元 触れる 触れられる 胸の奥が騒がしくなる事象を こう称することがある

隠れ鬼にもなれやしない

とうに名前をなくしたから 鬼も味方につけましょう とうに夢を手放したから 鬼も笑ってくれましょう 隠れ鬼にもなれないのなら せめて味方になりましょう とうに明日を見失えば 鬼も笑ってくれましょう

いじわるくじ

ひいてしまいました きっとそうです ただのくじなんですから 気にしなくていいはずなのに 大当たりなんです きっとそうです ただのくじなんですから 泣かなくてもいいはずなのに あの子の小さないじわる あの子の小さな嫌がらせ そんな日々の落とし穴 いじわ…

家族

酸味が気にいらない 些細な出来事が 食卓を行き交って 誰もが無口になる 冬休みなんていらない 不用意に口にすれば 食卓に不機嫌が充満する 音楽なんて煩い 会話なんて面倒だ 愛の破片と 嘘つきな人の群れ 食卓は今日も冷め続けている