32通のメールが 振り分けられている ご丁寧に “彼女の嫌いな愛の言葉” なんて名付けられたフォルダに 届かないから即座に戻ってくる 戻ってきては振り分けられる 送信箱のは捨てるけど フォルダはいつまでも捨てられない 喧嘩もだいじ 笑い話も大切よ そんな…
新年度になり、何がどうしたというわけでもないが、自分用の弁当を作るようになった。 簡易的な容器に簡単な昼食を詰める。それだけのことだ。 冷凍食品を気まぐれに選ぶこともあるし、生真面目に野菜炒めをこしらえることもある。 朝食の片付けの前に、ささ…
包丁で切り刻んでいると 興奮してくるの 人生で最後に刻んだのは なあに? そっと尋ねた意地悪なわたし それには応えず ままごとのお鍋をスプーンで混ぜている ほおら寒いねえ、シチューにしよっか 初夏の陽気だと どこかから天気予報が流れてくるのに あな…
日常がどれほど空回ろうと、 喉も乾けば腹も空く 季節がどんなにねじくれようと、 花も咲けば葉も茂る あたしがどんなに泣き喚こうと、 あなたは難なく幸せ見つけて あの日のように笑うんだ ランキング参加中詩
とりあえず 言葉がそこにあること おなかが痛くないこと わたしもあなたも 身体の中が鎮まって 明日を迎えられること ランキング参加中詩
声をかけない 話しかけられない空気感を めいっぱい纏う ショートヘアにピンクを入れて 後ろ姿であたしだと悟らせない SNSは 報告してブロックね(あんまし効果ないけども) 長い付き合いだったけど 無理して「嫌悪」を受け取る必要ないんだもの 幸せになろ…
引き金になったのは あなたの声だった 引き金になったのは あなたの背中だった 引き金になったのは 雨粒を確かめた あなたの視線だった ランキング参加中詩
二月きさらぎゆきげつき 逃げれば惑う恋の月 二月けいふううめみづき 追うほど増すのは悲しみだけで 二月友チョコ本気チョコ 逃げたい追いたいあなたに逢いたい ランキング参加中詩
詩人さんにとって、 親孝行とはそんな感じである。 そして、そればかりか。 どんなに自己中心的でどんなにわがままであるかも、 痛感している。 …と、打ち明けたところ、 相手は「親孝行は、わがままでいいんですよ。それで間違ってないですよ」 そう言って…
どんっ! てっきり、下手な魔法が自分から漏れ出たのかと思った。 昨夜書き物をしていたところ、キッチンのほうで大きめの…寝た子が起きるくらいの物音が響いた。いや、響いたと感じた。 なぜなら、耳で聞いたのではなかったから。 これはひょっとして、もし…
綿菓子のような 思い出だったのでしょう 口を開いた端から少しずつ キラキラ壊れて静かになった 風にさらわれるような 記憶だったのでしょう ペンを持つ指先から僅かずつ チラチラ崩れて見えなくなった 忘れたいことほど 刻み込まれている身としては あなた…
もう10分も過ぎて だけど他にすべもなく バスが来るのを待っている 時間、わかりますか 同じく所在無げに立っていた女性が 話しかけてきた そこから なんとはなしに正月頃のことやら 手放したいもののことやら ほんの数分話が弾んで ほんの少し気が紛れた 自…
甘くあたたかで口溶けのよい 言葉を 罪と悔いとで 斜めに束ねました チョコレートみたいだね、って あなたが笑うからです ほんとうにとろけそうな眼差しで わたしの時間をとりあげるからです ランキング参加中詩
あなたのことを思うたび とても乾いて ただそこにある愛を飲み干したくなるんだ だけどいつまでも満ちることはなくて あなたの声を忘れてしまうんだ あなたのことを思うたび とても乾いて ただそこにある優しさを飲み干したくなるんだ だけどいつまでも満ち…
一日家を空けていて パートナーはまだ帰ってなくて だけど 「タダイマァ」って玄関先で元気よく どちらが先でもそれがあたしたちの約束だった いつしか約束は約束じゃなくなって ご飯いらないってどちらからともなくLINEしあって 「タダイマァ」っていったい…
「魔法がちょびっと使えるんだから、ポケットなんかいらんでしょ」 口の悪い友人が、そんなことを言う。 いやいや、コントロールできぬのだよと返しながらポケットからのど飴を取り出し、手渡す。 去年のじゃないから安心しな、と付け加えて。 ポケットにビ…
猫街区域は夜のはじめまで空落ちにご注意くださいその後は雲合わせのできる気象条件となるでしょう 立ち上げたままの音声アプリが 風変わりな天気予報を告げる 雲予報士による特別予報で 素敵な音楽の 音符と音符の間に隠されるように流されるものだから 知…
体の中で金属の軋む音がする。 連れ合いには気のせいだろうと言われて、 自分でもそんなことだろうと納得して、 昼の間はあれこれと立ち回っているから忘れてしまう。 夜になって、 連れ合いが訊いた、まだ聞こえるのかと。 自分でもそんなことだからと納得…
時間の使い方がもう少し上手になれば。 季節の終わり、焦りを微かに感じる時の中で そんな思いに駆られる。 時間があれば、ではなくて。 時間ができたら、ではなくて。 いつか、も。いつでも、も。 幻想だ。 乱暴に決めつけ、僕はコーヒーを飲み終える。 ひ…
真っ黒に染めた髪で きっちり切り揃えた髪で 女友達は 「あのね」と切り出した 一緒に暮らすパートナーが こんな色でこんなヘアスタイルが好きで ちょっとでも伸ばすと不機嫌になるの 好きは従属じゃないでしょ そんな言葉を何度も飲みこむ僕は どんなに罪深…
ひどく苦いコーヒーを啜りながら 愛情あふれた単語を探します 背中に投げつけるなら 少しはやわらかな響きがいいでしょう ミルクの代わりにふたかけみかけ カラカラ氷を入れるのです 血が冷えて頭が冷えて 少しは穏やかに座っていられるでしょう 空は青みの…
さびしいと恋しいを 天秤にかけては またあくびする あなたはそれを知らない 優しさと距離を かけ合わせては またあくびする あなたはそれを知らない 怒りと孤独がないまぜになり 深く息をする あなたはそれをまだ知らない ランキング参加中詩
これでようやく これでやっと おかげさまだねえ その人は若い時分から“最期”を心待ちにしている 困ったことに、とも やれやれまたか、とも どうにも感じなくなるほど疲弊したり、も あるにはあったが 自分を責めようがその人を責めようが 事態はそんなに変わ…
手放していければいいのに 手放せないものがあって 執着ではないのだけど こびりついた記憶は容易に削ぎ落とせない 投げつけられた単語のひとつひとつを 何かと縛りつけられた心のありようを 今さらなかったことにはできない だから綴る だから刻む 例え目の…
ランキング参加中詩
あ〜あ 飛んでみたいなぁ その人はひとりごとのように つぶやきました うちわを使いながら なんでもないことのように あんたさえいなければね よく通る声で 夏空に向かって告げたのです ランキング参加中詩
邪魔するのは幸せな光景 安堵するのは不器用な心 もてあますのは輝きの空 そろえあぐねたあなたの夏服 ポツリポツリと降る雨に 声かけあぐねたあなたの背中 ランキング参加中詩
あなたのために祈ること いつかの時間に置いてきた わたしのために祈ること あしたのもっとその先の あなたのためを思うこと いつかの時間に忘れてきたの わたしのためを思うこと あしたのもっとその向こう あなたとふたりで笑えたら あなたとふたりで祈れた…
昔、占いに人生を捧げているような知り合いがいた。 月初め・年初めには著名な星占い師の著書を買い求め、血液型うらないを頑なに信じこみ、新聞の占い欄にくまなく目を通し、手相占いにも足しげく通う。 どうせ、悪い運は星のせい。 だって、〇〇座だから。…