猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2016-01-01から1年間の記事一覧

私の中のお墓

お墓詣りをしてきました お別れしたぬいぐるみ 幼馴染のあのこ 切り出せなかったさよならも 差し出しそこねた優しさも そっとそっと葬って もっともっと前向いて きっときっと笑えるから きっときっと叶うから 私の中のお墓の前で 間抜けなぐらい泣いたって …

季節

季節と対峙したせいでしょうか もう誰も好きになれないのです 季節が混ぜ合わされるからでしょうか もう秋の白さを忘れそうです 季節に溶けていきたいのでしょうか もう鳥の声がこんなに近くに 季節にあらがいたくなくて いつまでも ふわふわ漂うのです

通路

列車の通路にはいつも 顔ぶれの違う数人がいて ふたつみっつ先の車両を 遠巻きに眺めてる 燃えてるね 燃えそうだね まだかな まだかな 真実の行方とか 瞳に映るもの心に映るもの 見間違えてもお構い無しに いつでも通路には 誰かがさざめきながら集っている …

閉ざすのは早すぎたね

広げるだけ広げて それでも離れていった 開くだけ開いて それでも素通りされた 伝わらなかったとしても 傷が深くなったとしても 心のドアを閉めること 気持ちに鍵をかけること もう少しあとでもよかったね 言葉で取っ組み合いを とことん とことん やったあ…

あなたと私

涙を止めるすべを 心を潤すすべを 傷を癒すすべを 熱を抱くすべを 笑顔のすべを おしまいの時まで わからずにいたんだ

かみさまの手料理

ぐるぐると景色が回って ああ今日もかみさまに かき混ぜられているのだと 倒れこむ ぐるぐると空が回って ああ今日もかみさまの 手料理の中にいるのだと 安堵する

空の在処

世界は複雑になりすぎて 敵も味方もよく分からない 世界は混沌と濁りすぎて 心の声さえ暴かれる それでも わたしたちは恋をする わたしたちは夢をみる 空の在処を わたしたちは信じてる

わたしの中に空はなかった

空はありませんでした はじめからなかったのです だから 雨も降らず 陽もささず 何もない色の中で うずくまっていたのです 笑っていても 泣いていても その意味がわたしにはわからなかった 空はありませんでした はじめからなかったのです だから 風も吹かず…

良心

雨音に混じって 悪意が垂れ流しになるあの感覚 知っているくせに そよ風に混じって 嫉妬が膨れ上がるあの感覚 初めてじゃないくせに 知らないふりをいつまで決めこめば 許されるだろう あたしに取り憑いた良心に

すれ違い

すれ違い 怒り喜び見殺しにする

幾度目かのさよなら

選びとっては素敵と笑う 捨て去ってはまたねと泣いた 手にしたのは 花の名と占いの果ての 誰かの噂 選びとっては幸せと笑う 捨て去っては嫌だと泣いた 残ったのは 星の名と祈りの果ての 心のノイズ

かみさまの

かみさまの ため息ひとつ紅葉狩り

切り取っても生えてくる

夏休み最初の日 さよならを手渡された 断ち切られても切り離せず 思い出しても思い起こせないけど やさしい風も あたたかな雨も 心を満たしたのはほんの数日で 夏休み最初の日 さよならを手渡された 切り取っても生えてくる憎しみを 僕は雨で洗えるだろうか

もう一度だけ

もう一度だけ あなたに話しかけてみたいのです 嫉妬の毒で汚れるのだとわかっていても もう一度だけ あなたの胸で泣いてみたいのです 嫉妬の網で絡めとられるのだとわかっていても もう一度だけ あなたの声を感じてみたいのです 嫉妬でなじりたくなるのがわ…

白い月がのぼる街

白い月がのぼる街に 君を探す かすれた笑い声と不器用なウインク 背中をバンバン叩く荒っぽい挨拶 白い月がのぼる街を 僕は歩く 森の香りとやわらかな光 途切れた歌声と不器用なハグ 白い月を見上げて 僕は泣く 波のざわめきとかすかな傷あと 君が遺した確か…

溺れるふたり

どうしてそんなに 流れているの ほら 僕の腕も肩も すっかり濡れてしまった どうしてそんなに 流しているの 見て 僕の胸も腰も すっかり浸かってしまった どうしてそんなに泣いてるの どうして紅く染まっているの

雨が染まるまで

雨が風を閉じ込めるまで 泣くのを忘れようとした 雨が哀しみを洗うまで あなたを探し続けた 雨がゆっくり染まるまで 消えそうなぬくもりを抱きしめた

とても昔のどうでもいいこと

とても昔 おもちゃのような誓いを たてたことがありました 嘘はつきません 秘密は作りません あなたを大切にします とても昔 おもちゃのような誓いを たてたことがありました やわらかな言霊を交わしましょう 緩やかに愛し合いましょう 穏やかに日々を重ねま…

悲しいのは

悲しいのは 残像のような季節 さびしいのは わずかな希望と残酷さを映す空 恋しいのは いつだってあなたの背中だけだ 衣擦れの音さえ聞こえない あの時間だけだ 雨に染まった あの時間だけだ

かみさまのせいじゃない

夕日が悲しいのは かみさまのせいじゃない 多分あたしが恋をしてるからだ

思春期

まだ傷のついてない心の底に 苛立ちを携えて 少年は戸惑っていた 黒いもの 濁ったもの 尖ったものやら重いもの 大人たちは愛情の合間に 時々無茶苦茶な 言霊を投げてくる 投げ返したものか 避けるべきだったのか まだ傷のついてない心の底に 苛立ちを携えて …

日常

デジタル表示のチケット 触れることのできない紙幣 百冊の本も指先で思いのまま 心も時も重ねるほどに疲弊して 便利というご都合主義な気分から いつか解放されるだろうか 素早く愛の言葉をスクロールしながら 改札すり抜ける日常

待ちぼうけ

君を待ち つるべ落としの薄暮かな

器はここに

壊したものは ひとつとしてありませんでした 大切に大切に 守り抜いたつもりでいました だから代わりに内側が こんなに壊れてしまった 器はここに 中身はどこに行ってしまったのでしょう

最後の会話

まだあついね サヨナラの代わりに そう言った まるで遠い国の言葉のように 舌の上でもたつくけれど まだあついね 追いすがる代わりに そう返した 元気でいますか 心も体も

時が隔てるもの

時が隔てるものは 距離の隔てより 限りなく 残酷で 優しくて 美しい

君の名は

君の名は 思ひ届けや秋茜

あなたの涙が枯れるとき

あなたの涙が枯れるとき 風が頬を包むでしょう あなたの涙が枯れるとき いくつも星が流れるでしょう あなたの涙が枯れるとき 誰かがそっと抱きしめる あなたの涙が枯れるとき わたしの涙も乾くでしょう

生き人形

あなたはあたしを組み立てた パーツを切って ヤスリをかけて 丁寧に丁寧につなぎ合わせた あなたはあたしを組み立てた パーツを切って 色を塗って 丁寧に丁寧に貼り合わせた あなたはあたしを抱きしめて 丁寧に丁寧に囁くの どこへも行くな 何色にも染まるな…

耳たぶから1センチ

信じていてもいいよね 照れた笑顔は 僕だけが知ってるって 反時計回りのひまわりみたいで 夏の夕立みたいで つむじ風みたいに 感情を撒き散らした 信じていてもいいよね 涙を隠したくて不意に駆け出す癖 僕だけが知ってるって 耳たぶから1センチの君の声 僕…