猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

猫がわたしを呼んだ朝

お腹が満たされていて あなたの話がちょっと退屈で 晴れていて風が強く 眠る前に泣きたくなったことを 思い出す頬の冷たい午後 猫がわたしを呼んだ朝

あなたに会えない日も

空の色は こんな色ではないかもしれない もっと灰色で濁っているかもしれない 寒くはないかもしれない 喜びに溢れているかもしれない きっと悲しいふりをしているだけだ 空の色は こんな色ではないかもしれない もっと清々しく凛として 泣いたことなど忘れて…

やっぱり違うと

あなたは朝を味わい尽くし わたしは夜を味わい尽くし そのうち互いを味わい尽くし やっぱり違うと離れたのでした あなたは朝に風を溶かし わたしは夜に雨を溶かし そのうち全てに愛想をつかし やっぱり違うと離れたのでした それでも忘れられなくて それでも…

今はまだわからなくても

動きなさい 鍛錬しなさい そうすれば大事にすれば それはきっと あなたの命に刻まれる 今はまだわからなくても 今はまだ信じられなくても 今はまだ憎々しげな言霊に溺れがちでも

翻弄するぐらいの勢いで

運命とは。 人智の及ばぬところ、宇宙の理(ことわり)、自分ではどうにも動かせぬもの。 で、あるはずだ。 だが、手をこまねいているだけでよいのか。 逃げではないのか、と自身に問う。 翻弄されるのではなく翻弄するぐらいの勢いで生きたい。 運命という…

そうでなければ、そうでないなら。

揺らがない。たとえ世界が滅んでも。 そんな言い草は夢物語の飴玉にでも閉じ込めておけばいい、とは思うが、ここへきて現実と妄想が入れ替わりそうな心持ちになってくる。 心持ちだけでは、平和は訪れない。 心持ちさえなくなったら、平和を人らは忘れる。 …

詩人、バスに乗る

路線バスをよく利用する生活が戻ってきた。久しぶりのことである。 初めての行先番号、初めてのバス停に出会ってもアプリが手助けしてくれるので、それほど困ることはない。 ご乗車ありがとうございます、の声が女性であることも昔より増えた印象だ。 学生た…

傷つけあうかわりに

「あなたはやさしいから」 「なんだか冷たいのねえ」 同じ人からぶつけられる 感情、なのだろうか 記憶、だろうか あなたに似たのよ、とは言えず はいはい、と笑う 今が満たされるのなら どこかに優しい嘘が混じっても 許されるだろうか 傷つけあうかわりに

今よりずっと

仕事柄、ちょっとした問題集というかドリルのようなものを作っていた。 教科書というほどでもないのだが、家庭用パソコンにはあまり頼れなかった頃のことなので、手書きでコピーして。 今よりずっとアナログで、今よりずっと不便だった。 理不尽なことも、そ…

冬眠するんだろうか

寒くなったのか 大きい猫の恋人でもできたのか あの子を見かけなくなった 僕も自分ちの大きな猫の隣か 膝の上が定位置で うつらうつらしながら 冬を満喫している 窓の外に鳥や葉っぱがくるくる踊って 素敵な時間が生まれ続ける ご先祖様は冬眠していたんだろ…

ひとりたび

遠くへ行きたいと願いながら その一歩はとても重く 体が固まってしまうほど心が縛られた 持て余す思いは乱れて 使いこなせるから無茶をする 足元はいつも回り続けて 風が噂を蝕んでいく 立ち止まれば 僕の心も散り散りになって やがて見えなくなるだろう 宇…

愛があふれる人に触れるたび

愛があふれる人に触れるたび 愛が死ぬようで 愚かなことよと苦笑しつつも 羨ましくてならない 愛が止まらぬ人に触れるたび 愛を殺すようで 思い過ごしよと苦笑しつつも 鼓動のスピード隠している 愛を求める人に触れるたび 愛を抱えたふりをする 何をどう言…

わたしとともに去るのです

見よう見まねで 紡ぐ手紙が 誰かに 届いても届かなくても やがて忘れてしまっても わたしはここに生きて わたしとともに去るのです

「愛しい」「切ない」と言葉があふれるとき 人は酔いやすく行き先を見失う 「ああなんと幸せであったことか」 後になってしみじみ思うとき 初めて人は道を見つけるのだ

手の中の恋

あなたを知る人の多くは あなたが知らない人ばかりで あなたを知らない人の多くは あなたがよく知っている人だった 不条理はいつもそばに 不義理もこの胸の中に 手の中の恋がいっそ かき消えてしまえと祈りながら 晩秋が溶けるのを眺めている

はじめましてとは

以前、「はじめましてが、おわるとき」という詩集を発表した。 その頃から「はじめまして」とはなんだろう、挨拶を交わした瞬間に終わるのだろうか?などと考え続けている。 はじめて会う。 人でも猫でもいい。よほどの切羽詰まった状況でない限り、ちょっと…

冬の入り口

複雑すぎる空の色だ 冬の入り口はいつもそうだ 薄紫で辛そうで なのに桃色が紅さして笑っているんだ まるでいつかの春の色だ まるでいつかのあなたのようだ 遠く旅するあなたのようだ

今夜も星を齧りに

寂しくて寄り添うのは 人らと猫だけだ きみはそんなことを言う もともと猫だとしても? もともと猫だとしても! きみは尻尾をピンっと立てる 今夜も星を齧りに出かけるのだ おっと 僕らを膝にのせてニコニコしている彼には ナイショだよ

妄想より童話より奇なり

散歩コースのひとつに、猫好きのご夫婦が暮らしているお宅がある。 割と自由にさせている様子だが、ご近所の理解が深いのだろう。トラブルめいた話を聞いたことはない。4〜5匹(もっとか?)は暮らしているはずだが。 車の通行量も少なく、人も猫も譲り合っ…

夢の種

蒔いた種が虫に食われ鳥にほじくり返され そのうち何粒かは雨に愛され光に守られ 芽吹きの朝を見るだろう 蒔いた種が干からびどこかへ流れ そのうち何粒かは土に愛され温もりに守られ 結実の朝を見るだろう あなたが忘れた頃 わたしがあきらめた頃 誰かが笑…

ぱたぱたっ 早起き鳥が小さく文句を言いながら 飛び去った あまりにも早朝すぎて 大きな猫(なのだろうか?尻尾はないようだが)は まだ眠っている 鳥を捕まえてどうこうしよう そんな趣味もない 目的地は目と鼻の先 おはよう、という言葉はさすがに 発する…

休日

「誰かと約束を入れて遊び倒す!えーと前後1日は余裕を持って予定を入れない、んでもって天気予報を確かめて服買ってバッグ買って交通調べてプレゼント用意して」。 出かける前からくたびれてしまいそうだ(汗)。 楽しみたいのか、疲労困憊になりたいのか…

ここにいる理由

鳴らない。今朝も。 そろそろこちらからかけてみようかと、寝床を離れては考え込む。そんな朝は13回目を数える。 モーニングコールの約束を交わしたのは随分前だった。 互いにマメなたちだったので、遅れたりフライングしたりすることはあっても、鳴らさない…

のたうちまわるほどあなたが好きだ

のたうちまわるほど あなたが好きだ 夜ごと夜ごと夢で逢瀬を願うほど あなたが好きだ のたうちまわるほど あなたを想う 朝な夕な寒くはないだろうかと心砕けるほど あなたを想う のたうちまわるほど あなたが好きだ 絶望と孤独の中で溺れても あなたが好きだ

続・こしらえる

弁当箱を買おうかどうしようか、小さく迷っている。 なぜなら、この「弁当持参」の日常。ものの見事に期間限定だから。 断捨離の一環として、使わなくなった古い弁当箱を全て手放したのは何年前のことだったか。蓋が割れたり、ヒビが入ったり、どうにも落ち…

歩数

いわゆる万歩計を手放して、かなりの年数が経った。 スマートウオッチのようなものを探していた時期もあったが、結局はスマホの中に歩数計のアプリを入れることで落ち着いた。 ひとつ問題があるとすれば、「スマホを持ち歩いている間のみ計測が行われる」と…

大掃除

住む人が居ないと、家は死ぬんだよ 兄が珍しくロマンティックなことを言った。 外界から隔てられ、薄暗くかび臭い。 ここが祖父とほんのいっとき暮らしていた家ということらしい。 昔のことは? 体育祭に来てほしいとねだった食卓ぐらいか 我々兄弟の記憶も…

食卓

よかった、今夜は機嫌がいい。 学校の話題を切り出すとき、流行りの楽しいことを話すとき。 兄と私は、食卓の下でこっそり膝をぶつけあう。 いつの間にか身につけた兄弟だけの秘密…祖父が知れば小賢しいと喚くだろうが。 料理は兄も私も好きなたちで、まあま…

私と朝と晩秋と

朝が私を締め出そうとしている。 いつもと変わらない通学路なのに、寝坊して10分遅い出発となった。それだけで、日常光景は見慣れないものに変容する。 学校に通っていた日々からはすでに遠ざかり、今日も今日とて急用があるわけでもない。 いつもの光の角度…

はじめまして、暗号資産

画風が好きで、折に触れ作品を集めている。 そんなお気に入りのアーティストがいる。 あるとき、その人がNFT ARTを手がけているという情報が入ってきた。 デジタル。 only one。 売買可能。 暗号資産。 うむ、よくわからない(汗)。 中でも暗号資産(仮想通…