猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ベレー帽と猫そっくりの店主-7

季節はずれの陽気な風は あっという間に飛び去って トーザ・カロット岬は いつものように 雪まじりのひんやりした日々になりました このところ 猫そっくりの毛糸屋の店主は ベレー棒の編み図をこさえながら しっぽをパタパタ動かしています 途中で模様を入れ…

心の模様

穴ぐらいはあく 傷もつく そりゃあ ひどく壊れることだって だけどね あなただけじゃない わたしだけじゃない がんばれも 大丈夫も 笑顔も涙も ただただ疎ましい そんな日が続くことだって 車窓の景色が うつりかわるのと どこか似ている 空模様が 刻々変わ…

雨が雪を黒く染めれば

雨が雪を黒く染めれば やがて春がやってくる 心に降る雨は 何も染めてはくれないのだ 引き裂かれようが 血が流れようが 洗い落とすことも 逃れることも 叶わず そのまま片隅に 追いやっているだけに過ぎぬ 雨が雪を黒く染めれば 必ず春がやってくる 心に降る…

愛が重い

愛が重い とても重い 手にも足にも腹にも背中にも 重く重くのしかかる 家族愛は ぎゅうっとからみつく きみの愛は ねっとりまとわりつく 空にも地面にも おそらくは互いの体内にも 重く重くのしかかる ふふっ 重いのよね うん、重いの なんでだろね 重いのよ…

コインパーキング

図案屋さんさんによるイラストACからのイラスト

やさしい食べ物

ぼくが 調子を悪くするたびキミは 仕方ないわねって 小さなキッチンに立つ はやりの店のパンケーキとも 老舗喫茶のホットケーキとも 似ても似つかぬいびつな姿 ちょっと甘くてちょっとしょっぱい やさしい食べ物をキミは焼く 普段の料理なら ぼくのほうが手…

哀しみは

キイロイトリさんによるイラストACからのイラスト

毛糸屋さんと詩人屋さんとラジオとお酒

とぽぽぽぽ カランカラン ジャズと雲予報がかわりばんこに 流れるラジオ放送を肴に 鍵しっぽの詩人屋さんと ながしっぽの毛糸屋さんは またたび酒を乾杯しました 酒豪のふたりではありますが だいぶ気持ちよくなってきて ジャズのリズムに体をまかせてゆらゆ…

冬は深くあなたは遠く

どんなにやさしい雨が降っても 冬はまだ深く どんなにやさしい風が過ぎても 春はまだ遠い どんなにやさしい言の葉並べど あなたの声はもう届かず どんなにやさしいhugをされても あなたの抜け殻しか見あたらない

もしもあたしがあなたより

もしもあたしがあなたより 先にあちらへ行ったなら 今日は あなたを満たす涙になって 明日は あなたの涙を乾かす光になって 明後日には あなたを笑わせる雲になって それから 寂しいという言霊を あなたから永遠にとりあげる 強い風で 散らしてあげる 愛しい…

緋(あけ)

トーザ・カロットの街の辺りでは “緋色のコーヒー”という飲み物が 猫らの間でも 人らの間でも とっても人気です もともとは どこかの遠い遙かの街だか星だかで 猫そっくりの生き物が 緋色の豆で作る飲み物を気に入って お土産に豆を持ち帰り それを 人らや森…

あたしがいなかった世界に

あたしがいなかった世界に あたしは生まれ落ちて あたしがいた世界から あたしはこぼれていく あたしのいる世界で あたしの質量は不確かで 意味のない称賛と 意味ありげな退屈を 一息に飲み干した きみがいなかった世界に あたしは生まれ落ちて きみがいた世…

兎にも角にも

音霊も言霊も消え 思いも想いも存在しない 光も闇も隠れ 全ての質量は存在しない それこそが 永遠であり瞬間であり リアルとバーチャルの中間地点である

ベレー帽と猫そっくりの店主-6

トーザ・カロットの岬に 季節はずれのあたたかな風が吹き込んできました 猫そっくりの毛糸屋の店主は 何かが落ちてくるのではないかと 思わず空を見上げました もっとも 雲予報士たちの予報によれば ほんの一時的で また いつもの風模様に戻るでしょう との…

ベレー帽と猫そっくりの店主-5

トーザ・カロットの岬に びゅうびゅうと強い風が吹いています 猫そっくりの毛糸屋の店主と “kanade”に浸している毛糸玉たちが 再度向き合う日がやってきました 自分のためだけの毛糸玉を仕上げるのは とても久しぶりです どんな色になるのでしょう どんな音…

睦月

三が日

滅び

右にも左にも光はあるのに 道は暗いままだった 上にも下にも影がさすのに 光は見つからないままだった 空も海も星から漂い始めているのなら ぼくらに何ができるだろう 絶望に身をまかせるか 眠りが覚めない日がくるまで 耳を塞いでいようか casa4さんによる…

言の葉途切れ

夜を愛しく抱き寄せた

瞳の奥で青が弾け 胸の奥に香りは宿る 耳の奥で赤が弾け 喉の奥に歌は宿る 指の先で世界をかき混ぜ 踵で雨は行き止まり 空と孤独を両天秤に 夜を愛しく抱き寄せた 瞳の奥で青が弾け 胸の奥に香りは宿る 耳の奥で赤が弾け 喉の奥に歌は宿る

なにもの

いま 手にしているものを 何もかも手放したなら それでようやく 愛がなにものなのか わかるだろうか それとも 目を閉じ 耳を塞ぎ 美しい言葉を飲みくだせば それでようやく 愛がなにものか わかるだろうか 空は足もとに 海は夜空に広がるというのに まだ 愛…

接触不良

接触不良になったとき きみはなんとするだろう 祈るか あきらめるか 気のせいだと思いこむか 接触不良を起こしたままで きみと離れ離れになった それは ある意味喜劇だが こっけいなほど悲劇でもあった 接触不良になったとき きみはなんとするだろう ぼくは…

みょうと

時は容赦ないが もっと優しく生きようと思った 今までより 澄んだ言霊を交換できるのは この上なく幸せである 時は容赦ないが もっと空を見上げようと思った 幼い頃よりずっと狭くなっているが それでも 空は全てを受け止め続けてくれる テレビもパソコンも …

不安~空想版「フシギナカラダ」より

形のないものなのに 手も足もからめとられ 気づいたときには 体の内側いっぱいに広がっている 時に 起こってもいないのに 先回りしがちな事象である

ベレー帽と猫そっくりの店主-4

つるりつるり注意報が 頻繁に発表される季節です お店を開けられないこともたびたびなので 猫そっくりの毛糸屋の店主は いっそのこと 雪がすっかり消えるまでは お店をおやすみにして 自分にも冬眠の魔法を施して ぐうぐう眠ろうかという気持ちになりました …

ベレー帽と猫そっくりの店主-3

三日三晩大鍋の中を 栗のお玉でくるりくるり やさしい火加減で とろとろとろ 美しい“kanade”が出来上がりました 久々に風どまりの朝 猫そっくりの店主は まだ熱々の“kanade”の鍋を よいしょよいしょと 店の裏へ運び出しました それから 雪の中に半分ほど埋め…

ベレー帽と猫そっくりの店主-2

猫そっくりの毛糸屋の店主は 自分用のベレー帽を編むために “毛糸屋さんのいない街”へ旅をして 緑の香りがする風と 浮かぶ海の波音と 黄色のリサラヌアの花に出会いました 大事に大事に持ち帰り 無事に毛糸玉に“kanade”を染み込ませている ところです 今回は…

かくれんぼ今昔

ー昔ー 「鬼」が誰か 顔が見えて だから 夢中になって 鬼ごっこだか かくれんぼだか もうわからないぐらい 走ったり ひそんだりを 存分に楽しんだのです ー今ー 「鬼」が誰か すぐには見えない あるいは 「鬼」が誰か 探して吊し上げることを よしとする ま…

みんなみんな過去のもの

4人分量のレシピ本 背伸びして揃えた寸胴鍋 見栄をはってた中華包丁 みんなみんな処分した 挨拶回りの手書きメモ 商店街のがめ煮の匂い チビたち用のプレゼント みんなみんな手放した おざなりのおめでとう 止まったままのパン焼き器 蜘蛛の巣からんだ恋の…

夢~空想版「フシギナカラダ」より