猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

嬉しいことが何にもなかった日

それは とても幸せなことだ 生きていて 指先の届く未来で 嬉しいことを見つける可能性に 満ちあふれているのだから ランキング参加中詩

悲しいことが何もなかった日

ほんの体温より高めの 湯に浸かる 免疫力が高まるとも 気分が明るくなるとも 言われている それでいくらかは信じてみたのだった 何もない日 ほかほかたぷたぷ うたうたのさのさ ほんの体温より高めの 湯に浸かる 珍しく 悲しいことが何もなかった日 ランキン…

だがしかし水面(みなも)にけむり

滴る思い出は だがしかし誰かのもので 滴る響きは だがしかし虚空の砦に 滴る景色は だがしかし水面(みなも)にけむり 苦いも苦しいも大差なく 痛いも忌みも忘れ去る だがしかしいくるものなり だがしかし死にゆくものなり ランキング参加中詩

手元まで訪れるから

すくすくもりもり。 作業机の上、PCの向こう側に小さな森ができた。 初夏が近づき、手元まで風が訪れるから、小さな森も小さく揺れる。 何も考えたくないほどくたびれて、 何ものも縦にだって横にだってしたくなくて、 それだのに、 水が足りてないかな 光は…

季節がどんなにねじくれようと、

日常がどれほど空回ろうと、 喉も乾けば腹も空く 季節がどんなにねじくれようと、 花も咲けば葉も茂る あたしがどんなに泣き喚こうと、 あなたは難なく幸せ見つけて あの日のように笑うんだ ランキング参加中詩

一筆箋

選びがちな色がある 薄いピンク、桜色と君は呼ぶだろうか スマホカバー ボールペン そして 久しぶりの一筆箋 春でもないのに 夏でもないのに ましてや恋でもないのに 選びがちな色がある 薄いピンク、桜色よと君は笑うだろうか キーケース 淡く溶けるケーキ …

湧きあがってはかき消され やがて干上がって

数えきれなかった あたしの中のあたしだけしか知らないはずの 数えきれなかった 湧きあがってはかき消され やがて干上がって 数えきれなかった 律したことも歪んだリズムも 見送った背中も。 ランキング参加中詩

乾くか乾かないとか そんなことだけ心配している 風そよぐ朝 彼女はあたしを見向きもしない 降るか降らないか そんなことだけ心配している 暖かな空 彼はあたしを見向きもしない 何を口に入れたところで 腹痛のもとだから こっそり食べたふりをする あたしは…

やぶれ上手のオムライス

やぶれたオムライスに 出盛りの菜の花 へたくそ、と君が笑う だけど あったかいから美味しいよ いつもありがとね これよ、これ やさしいね だからいつまでも やぶれ上手なんだろうな よしっ、いただきます! ランキング参加中詩

春はいつも

知らない歌が耳たぶにたまって 僕は少しイラッとする 春はいつもそうだ 体にも心にもやわらかいのは 日差しだけで 泣く隙も吹き飛ばしてしまう はしゃぐ甲高い声 パタパタ小さな足音 よろしくね と 知るもんか が 同じ意味だなんて この世は残酷だ ランキン…

ソフトクリーム色の空

ソフトクリーム色の 空が落ちた 今朝はだから 音がしなかった 声を上げず 瞳も上げず あたしはただその光景を うけとめる ソフトクリーム色の 空が落ちた 今朝はだから もうさびしくならなかった 綺麗でちょっと嘘つきで 隠した愛憎なんかをひっかきまわした…

月夜

のたのたすぼすぼ 月夜を歩く 散歩なんてもんじゃなく 迷子なんてもんじゃなく 速くも遅くもないリズムで のたのたすぼすぼ 月夜を歩く 春と冬とが手に手をとれば 西から急に雨こぼれ 苦い思い出脳からあふれ 速くも遅くもないリズムで のたのたすぼすぼ 月…

夜と光とわたし

夜にあふれかえる 星の瞬きだけを喰べれば この身から美しい音ばかりが 口をつくのだろうか 夜にあふれかえる 月の糸屑を纏ったなら この身から恨みつらみなど こぼれ落ちないのだろうか 口をつぐみ無理やり笑って 自分は幸せなのだと言い聞かせ 泣き笑いの…

逃げれば惑う恋の月

二月きさらぎゆきげつき 逃げれば惑う恋の月 二月けいふううめみづき 追うほど増すのは悲しみだけで 二月友チョコ本気チョコ 逃げたい追いたいあなたに逢いたい ランキング参加中詩

愛以上、悲しみ未満

詩人さんにとって、 親孝行とはそんな感じである。 そして、そればかりか。 どんなに自己中心的でどんなにわがままであるかも、 痛感している。 …と、打ち明けたところ、 相手は「親孝行は、わがままでいいんですよ。それで間違ってないですよ」 そう言って…

とりあえずでいいから

とりあえず ご飯を炊いておく(おむすび作ればなおよし、だけど無理せず) とりあえず 水まわりをなんとなくでいいから 片付けておく(拭きあげればなおよし) とりあえず 少しのお金と身分証明と飴玉なんぞを バッグに入れておく とりあえず 空を見上げてう…

一筋縄ではいかない

詩人さんは、ときどき驚かれるような行動をする。 日帰りで九州から東北へ旅してみたり、例えば本を出してみたり。 それでも、いざ動くまでには人より時間がかかっている。計画中に誰にも話さないから、アクティブだと映るようであるのだが。 時として、慎重…

身勝手だとしても、だ

沈黙が好きだ その時間が愛しく溺れたくなる それを寡黙とも大人しすぎるとも (あるいはどっか足りないのか?と) 過ぎる心配と比べ過ぎマウントに 悩むことの多かったこと! モラハラという単語はまだ 一般的ではない頃の話 はてさてそんな家庭に育っても …

わたしの声をわたしは

わたしの声をわたしは わたしはワタシの思いを私は ワタシとわたしの願いをあなたに 押し付けるばかりなのでした 強さも弱さもむしろ さびしい悲しいとやがて 無になり無理を生み出しては ようやく夢と訣別する わたしの声をわたしは わたしはワタシの思いを…

変化するもの

抑えつけという意味合いに変化しがち それはもらった方も手渡した方も 長らく気がつきにくい 「愛」という一言に 「腹立ち」やら「恨み」が巧妙に紛れ込むのだ できれば近しい人々からは受けとらずに(手渡さずに) いきたいものだ ランキング参加中詩

芽吹き初めての場所

芽吹き 初めての場所 明日の約束 家族が逝った日 思い出を発酵させる 寒すぎる時刻の 悩みの種を抱えて まだ 信じていた頃へと 芽吹き 初めての場所 明日の約束 家族が逝った日 ランキング参加中詩

温もり

夜明けが痛みを拭ってくれるなら 誰かの朝が救われるから 夜明けが絶望を軽くしてくれるなら 苦手なあのひとに 呪いではなく祝いを届けられるから あなたの言葉ひとつより 蕾ひとつ冬をこえたなら 温もりを知るでしょう ランキング参加中詩

いつかへの祈り

乾いた空に音楽を 乾いた言葉にユーモアを 乾いた心にあなたが いつか気づきますように ランキング参加中詩

わたしに夢はない すでに叶えたから あちらこちらで美しい珠のような物語は 転がっているけども わたし自身が夢そのものであればいい 儚く燃えて 静かにたちのぼる 命そのものだ 夢そのものだ ランキング参加中詩

喉が乾くとき

あなたのことを思うたび とても乾いて ただそこにある愛を飲み干したくなるんだ だけどいつまでも満ちることはなくて あなたの声を忘れてしまうんだ あなたのことを思うたび とても乾いて ただそこにある優しさを飲み干したくなるんだ だけどいつまでも満ち…

野の花を見よ

去年、念願のトラディスカンチアが手に入った。 蔓性植物で育てやすく、春に可愛らしい花をつけるらしい。 葉がところどころラベンダー色に染まっているところが、なんとも和やかな空気感を作り出してくれる。 植物は偉大だ。そんなことを思う。 植物はたく…

片付けと誇り

自慢、と位置付けると 慢心が全てを拭い去ってしまいそうだが 誰かの何かの参考になるのなら 悪くはないだろうか 靴を 靴箱を空にするのである できれば年に一度といきたいところだが とにかく 大掃除ついででも腹たちまぎれにでも 理由づけなんぞはどうでも…

抱負と柵(しがらみ)

11月、冬の「ふ」の字もないうちに 決めておいた 全てに当てはまり 全てをあらわし 全ての意味になる 季節のよろしいときは 多少ガツガツして 季節の厳しい折には 多少静かに暮らす 誰とも同じでない時を 誰とも比べることなく 過ごすのである せきとめるも…

繰り返し

誰彼ともなく いつもより念入りに磨き始めて それは唐突に終わる 少し半端に残ったとしても そこはあまり気にせずに 朝はやってくる 古くなるなどあり得ない 夜もまた同様に 同じ時間は二度紡がれない 瞬間ごとに生まれ変わって 瞬間ごとに何かを忘れては ま…

侵食されたい

新しいことに侵食されたい そう願う日々が今年もやってくる 侵食され続けて いずれは黒々した感情が消えるなら あの人への妬みも この人への理不尽さも まあそんなには不条理ではないだろうと 上書き なんて単語ほどスッキリした感覚でなくていい いつもいつ…