猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

氷山の一角

先輩でも後輩でもなかったその人は テキパキテキパキなんでも得意で かと言って 決して背負いこみすぎず 決して押しつけすぎず 笑顔も泣き顔もあけっぴろげな人でした そんなふうに理解していたのですが 氷山の一角とはよく言ったもので あるときシュレッダ…

語らひに

手元の風

通知音をすべて 葉擦れサウンドに変更した 雨がひどくなっても ざわわわわ あの人からのLINEも ざわわわわ どこかの国での不穏な動きも ざわわわわ みんながみんなそうしたところで 心のざわわが消えるわきゃないけども 風の時代に手元から 風を吹かせるのも…

とりあえず

愛も闇も言語化できない 日もあるが とりあえず丁寧に生きてみようじゃないか ほんの数分だけでも

そんな雨など存在しない

特別でやさしい そんな雨など存在しない 激しいか静かなのか それだけだ 寄り添うようにあたたかい そんな恋など存在しない 激しいか静かなのか それだけだ 触れ合うほどにつのるのは 孤独に似た痛みで そこに温度は存在しない あなたがいた ただそれだけだ

アメと雨

季節は記憶をなくしていた 狂った恋の あなたの向こう側で 風は香りをなくしていた 溺れた恋の あなたの背中で 想い出は光と闇に汚れ ねじれた鎖の如く絡みつく 会いたい アイタクナイ 忘れたい ワスレタクナイ

激情とは経験の親であり よくよく編んだ麻紐のようである 心を縛り 肉体を縛り 知恵を遠ざけ 人の間を巡り続けるものである 激情とは経験の鏡であり よくよく燃え盛る焚き火のようである 心を引っ掻き 肉体をすり減らし 人の間を巡り続けるものである

ため息も悪くない

いちどきに、多くの人と接する機会があった。 テリトリーに他人が入ってくるのは、誰しもそうだと思うが、それなりの気遣いと気疲れが伴う。 ひとりになって気づいた。かなりの回数、ため息をついている。 つまりは、大勢でいるときに、どこか呼吸が不自然な…

かき消される声だけを

かき消される声だけを 花瓶にいける 剥がれかけた記憶だけを ジュエリーボックスに片づける 流さなかった涙だけを 心に蓄えて ほんの少し俯いて笑う 空を見上げるのはその後でいい 正直になるのはその時でいい かき消される言葉だけを 鞄に詰める 剥がれかけ…

応答せよ命ども

消えた器を懐かしむ間もなく 星はいく 光も空も流れ流れて 命はむせかえる 嗚呼幸せよ どこに逃げた 嗚呼哀しみよ なぜこうも近い 応答せよ命ども 応答せよ愚かびと わたしを置き去るな 魑魅魍魎どもの内に

日々がまわっていく

月曜が憂鬱だったことはない むしろ家族全員揃う日曜は 大人になるまで苦手だった 空気が薄くなりそうで 心のありかを見失って 表情すらなくせば 冷たいやつめと睨まれた 家族という単語に 安堵を覚えることは夢のまた夢 それでも 幸せという言葉に囚われす…

L字型

50メートルほど行くと 道はそこで一度終わって 右折の後左折という指示になっている アルファベットのLをなぞるように 進むだけの話だ だが あの日の猫にはもう会えず 地図を広げて一緒に悩んでくれた店員は 知らない街へ引っ越したとかで あいにく連れもお…

連鎖

好きを知り 嫌いを知って愛を知る

閉じた「和」の中で

閉じた「和」の中で 独りよがりの正義が生まれた 小さな小さなグループ活動には ありがちなのだろう 悪口大会でガハハと笑ってはいおしまい 「大会」にも「笑っておしまい」にも なんだかどうだかと思い悩み 年度の変わり目理由をつけて 結局のところ「不参…

絶望と安堵が命を充す

器をなくしても 宇宙は消えないと 生まれ落ちる前に教わってはいたが では 閉じ込められたままどこへも行けないのか 同時に絶望と安堵が命を充す でも 宇宙ごと消えたらどうしようもないのだな すっくと立った猫の命を選んだのは自分であるから それもまた宿…

向けられる感情

きみに嫉妬する 面と向かって言われたことが 何度かございましてね それはまだカラリとして どこか冗談めかしていたので 半分褒め言葉だと受け止めたことでした では 本気の嫉妬はどうするんだい? そう訊かれてましてもねえ… やっぱり半分は憧れから派生し…

また熱を知る

ちょっと大袈裟なくらい、そのくらい 自分を褒めなさい (ただし紡ぎ出すものに満足してはいけない) ちょっとやりすぎなくらい、そのくらい 自分の毒を知りなさい (ただし心身を委ねすぎてはいけない) あなたは生まれ あなたは死んで また空を知る あなた…

黒い楽器を手放した日

奏でることをやめた日 雪が降った 五線に書かれた粒々はすでに無意味で 心から楽しいとは思えなくなった 黒い楽器を手放した日 ほんとにほんとにようやくようやく 心の底から ああ音楽が大好きだ なくてはならないものだ 命を器を潤す最上のものだ 生まれて…

魔法の一種だとされている。

耳を持っていかれそうな風を背に 平然と傘をさす いつか魔法はほどけ 心すら去りゆくさだめだが すでに器はカケラほど存在しないだろう 誰かを愛すること 誰かを退けること どちらも現在では魔法の一種だとされていて そうではなかった時代を知るものは 古び…

わたしが滅びるその時は

わたしが滅びるその時は 誰もきっと泣かないでしょう 星も宇宙も何もかも 綺麗さっぱり消え去って 永遠という概念さえも無くなって 瞬間を重ねる意味も無くなって 絶望さえ甘美だったのに と 小さく悔やむことからも 解放される 生まれる前に問われる 「猫の…

出かける

考え事をしていた。 不在にするので、バッグの中身や冷蔵庫の中身について、思いを巡らせていたのだ。 持ち歩くものは軽く。 冷蔵庫はほぼ空に。 となると、今週はもう買い物しなくてもよさそうである。 数日後には帰れそうだ。が、保証はない。 しばし考え…

最後の手紙

「半年前に書いて忘れてたんだ」 文末には またね、の代わりに一言だけ 「らしい」とつい声に出てしまう 瞬時に声も思いも届いてしまう時代に 逆らうように生きてた 理由はわからない 器は2度と戻らない もう会えない はっきりしてるのは そんなところだ 「…

こっそり優しくしようと決めて

こっそり優しくしようと決めて 一日を過ごすことにする 「大丈夫」は ほんのひととき効能を発揮するが 長続きしないことは 今や子どもでも知っていること だったら尚更 …それでも 何かを強く信じたいと願うのは 思い上がりの我儘なのだろうか

同居

ありがとう ふん何さ どちらの思いも同居していた 感謝と憤りは相容れないはずなのに なぜだか重なり合っていた もやもやするって そゆこと? 心は複雑って こゆこと? 人は迷いながらいくんだねえ

今日は今日とて

今日は今日とて あめざーざー 昨日の晴れ間は何処へやら 90パーセントの湿度だってさ そだね いつもの天気で いつものことだし いつもの会話を繰り返すだけ 今日は今日とて あめざーざー 昨日の晴れ間は何処へやら 雷雲が抜けそうだよ そだね いつもの天気で…

手足は星につながれて

心を自由に羽ばたかせるのは 難しいことじゃない 手足は地面につながれて 命は器に属するものだが 心はすでにここにあらず はるか銀河を越えていく 心を自由に羽ばたかせるのは 難しいことじゃない 手足は星につながれて 命は時に属するものだが 心はすでに…

グッズという誘惑

何かのコミュニティに属しても、ドラマや映画に感銘を受けても、関連グッズにはそこまで興味をそそられない。 あ、いいな〜と惹かれる機会が減ってきた。我ながら安上がりにできている(そうではなくて)。 そんなある日、1本の映画が公開された。 折からの…

手招き

待ってるわけじゃない 行きたくてたまらないわけじゃない 大好きかと問われれば はてなと首を傾げ 嫌いなのかと問われれば それもまたそぐわず 今日に閉じ込められたままでいいと 何度か祈り 少しでも早く明日に辿り着きたいと 何度かごねた 朝を 待ってるわ…

ことば

あなたの国の言葉で まっさきに「好き」を覚えました それから 「愛してる」と「おはよう」を知りました わたしの国の言葉で お別れを言われた日 「ありがとう」と「またね」を あなたの国の言葉で伝えられなかったことが 今でも心残りです 元気でいますか …

夢物語

冷凍しておいて 好きな分量削りとる 体温でゆるむ頃合いに言葉をのせる 感情クラウドを すでに体から追いやって それはそれは楽になった やさしく聡くなれぬなら せめて傷をつけぬよう 未来的技術に頼ったのである 冷凍しておいて 好きな分量削りとる 体温で…