猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧

かみさまの絵筆

絶妙な絶望感は 青空のように広がっていた かみさまの絵筆が 僕からきみを遠ざけていく 巧妙な焦燥感は 砂のように淡く広がっていた かみさまの絵筆が 僕をきみから遠ざけていく

気まぐれな呪縛

あなたに手渡したのは 気まぐれな呪縛でしかなかったのに どうして そんなにやさしく笑ってくれたのだろう あなたに投げ返したのは そっけない態度でしかなかったのに どうして そんなにやさしく抱きしめてくれたのだろう あなたに突きつけたのは ただのわが…

危惧

いつかきっと 脱いだばかりのTシャツみたいに 簡単に裏返しになるんだ きみの気持ちも ぼくの気持ちも

世界の果て

わたしはここにいるのに わたしの何気ないおしゃべりが 世界の果てで遊んでいる わたしはここにいるのに わたしのさりげない言の葉が 世界の果てで泳いでいる わたしはここにいるのに わたしはどこにいるのだろう きみはそこにいるのに きみはどこにいるのだ…

はじまりの あ ありがとうの あ びっくりしたときの あ あなたの名前にもあ

優柔不断なあたしの中

優柔不断なあたしの中の すべすべしてた青い種 優柔不断なあたしの中で それはそれはゆっくり育ち 優柔不断なあたしの中で 夕陽みたいな花が咲き 優柔不断なあたしの中に あなたはすでにいなかった

解読不能

あなたの言うとおり 彼女が言ったとおり 彼が話したとおり 神様の言うとおり 残ったのは ときほぐせない恋の謎だけ

梅雨空の下を歩く

早すぎる季節の訪れを もう僕たちは不思議とも思わず 過ごしている 強すぎる風雨を もう私たちはおかしいとも思わず 過ごしている 指先から不安に満たされる日常にも すっかり慣れ 梅雨空の下を歩いている

お約束のような日々でも

マイナスも 涙の日も まるでお約束のような毎日 誰かのために そう信じても 誰かのせいに してしまうことが多すぎて 誰かと同じに なりたくて仕方ない 正解を求めるあまり 心が彷徨い続けている ことばは いつか無力化する ことばは いつか風化する それでも…

結末を知っていても

何度目だろう これからきみにぶつけられる言葉も そのあときみに投げつけた感情も つぶさに覚えているはずなのに 何度目だろう ぶつかりあった果てに 何が起こるのか ふたりはよくわかっているはずなのに 人はどうしようもなく 繰り返すことが 好きなのかも…

きれいな色に変わるまで

雨は想い出を 閉じこめる 海が気化する速度で 雨はふたりを 閉じこめる 想い出がきれいな色に変わるまで

天気予報ときみの言葉

天気予報ときみの言葉は どちらも人から生まれたもので 最後の見極めは 人に頼る 天気予報ときみの言葉は どちらも僕の日常で 裏切られるまでは 全面的に信じている きみから生まれたきみの言葉は 天気予報より難しくて 僕はいつもはずしてばかりいる

慢心

いつのまにか かみさまに背を向けて かみさまから遠くなって かみさまを忘れて かみさまの真似をして かみさまに近づこうとして かみさまを名乗る

ただ莫迦みたいに

空が哀しいわけじやない 雨が冷たいわけじゃない 君に好かれたいわけじゃない キミに手ひどく 傷つけられて きみにがんじがらめに 縛られて ただ 莫迦みたいに笑っていたいんだ

旅支度

くすんだ命を削りながら 彼は 旅支度をする 行き先は果てより遠い 片道の旅 彼は 旅支度をする 行き先は彼方より遥か 別れの旅 彼は 旅支度をする その日のために 静かに支度する 〜今はもういない人へ捧ぐ〜

雨が止んだら

雫が落ちるまでに 虹を見つけに行こう 雫が落ちるまでに 言葉を見つけよう 次の雫が落ちるまでに 口づけしよう 雨は止むから もうすぐ止むから

月がまあるくなるたびに

月がまあるくなるたびに 何かがぱりんと音たてる 月がまあるくなるたびに 何かがぽわんと弾け飛ぶ 月がまあるくなるたびに 拾い集めて抱きしめた 月をまあるくすることが ふたりの儚い祈りです

いのち いのり

脆弱な足もとを 思わず踏みしめた 明日をつなぎとめたくて ひしと 踏みしめた その場所は温かく 空洞で 暗闇に包まれていた いのちも いのりも まだこの手にあるのなら 誰かのために 使えばいい 誰かのために 歩けばいい いのちも いのりも 尽き果てるまで …

身勝手

足をとられた 迷う気持ちと戸惑いのせいで 足をすくわれた 自分以外の誰かのせいで そんなふうに 勝手に何かのせいにして 勝手に人のせいにして 派手に転んで泣きじゃくりながら ようやく思い出す 鏡に映ってるのは いつも自分だったことを 他に誰もいなかっ…

トースト

とろりとバターが崩れてく 舌を焼くのは甘い蜜 落とさぬように 壊さぬように そっと歯をたてかじりつく

それでも回る

子どもでいられなくなって 空がどんどん小さくなって ほんの瞬く命を燃やす 星はそれでも回っている

だけど・だから

ずるいね 君が思ってるよりもっと 僕の中にいたくせに ずるいよ 君が思ってるよりもっと 僕は好きでいたのに 悲しいことと 嬉しいことは 隣り合わせでいるのに ほんの扉1枚があるだけなのに ずるいよ それに気づかないふりして だけど 忘れられない だから …

ナナシのナナシ

ナナシのナナシの その先に 行くべき道がありました 尾っぽを忘れたビー玉は コロコロ回って うたいます ナナシのナナシは そのうちに 帰りの道を思い出す 尾っぽを忘れたビワの木も さらさら踊ってくれるでしょう

眠らない夢

眠れなくて 苦しくなる 夜にこびりついた吐息は 朝が迎えに来るのを知らない 眠れなくて 切なくなる 夜に添い遂げた夢魔は 朝が迎えに行くのも知らない

あなたを見っけ

見覚えのある雨の中 シャボン玉見っけ 見覚えのある空の入口 昨日を見っけ あなたを見っけ

視線をそらした夜

いけないことですか 見上げるふりをした 空 本当は涙を隠したから 責めますか 視線をそらした 夜 本当は優しく触れていたかった 背中を見ていたくなかった

元栓

元栓は閉めたままでいた もたらすものも もたらされるものも 同じ量では決してなく なのに 知らぬ存ぜぬ あらぬ望みも真実 ただの迷い路だと言い聞かせ 元栓は閉めたままでいた はち切れんばかりだったのに 閉めたままでいた

誰より上手に話せたよ

こんなに上手に話せたよ 思ったこと全部 伝えたかったこと何もかも プラスもマイナスも ていねいに噓偽りなく 話したいだけ話せたよ こんなに上手に話せたよ 思ったこと全部 伝えたかったこと何もかも 嬉しいことも悲しいことも 胸の奥で誰より上手に話せたよ…

目の前を流れゆくのは 決めつけただけの 刺激的なだけの 上澄みだけのもの わがままに選別され 濾過され 掬いとられて 瞬く間に通り過ぎていく わたしたちもまた 決めつけられ 飾られ 濾過され 掬いとられて 瞬く間に過ぎ去っていく ●

忘却は空の底に

あざやかな 空の底 濁った海面 いっそ 星に網でもかけて 素知らぬふりでいましょうか 心配いらない そんなことばに 絡めとられてみせましょうか あざやかな 雲の下 濁った記憶の渦 いっそ 風に運ばれたことさえも 忘れてしまいましょうか 町の名前も 人の顔も…