猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

待ち受け

いいかげん変えよう もうすっぱり忘れよう 決心するたび 悲しみがつのり データを消せずにいるわたしがいる 通知が届けば隠れてしまうし それなら 猫だって犬だって鳥だって 旅先の写真だって なんでもいいはずなのに 手にのせたのは 遠い昨日愛した人 いい…

きっと気にも留めない

見たいものだけが瞳に映る 聴きたい音だけが鼓膜を揺らす 淡い照明に満たされた足元は不確かで 季節が狂っても 時が暴走しても きっと気にも留めないだろう 触れたいものだけに囲まれる 錠剤ひとつで胃袋が小躍りする 毒々しいほどの記憶は不鮮明で 間違いを…

金木犀

甘い香りが心を毟る あの日の記憶が暴れて あたしを傷つけた 花が咲けばきみを想い 花が散ればあたしを哀れみ 優しい言葉さえ 涙で崩れていく 甘い香りが心を毟る あの日の記憶が暴れて あたしを傷つけた 灰兎さんによるイラストACからのイラスト

優しいの意味

優しいの意味を 検索するしかなくなって 愛すら手ばなす時代になって 甘いは優しい 優しいは愚か そんな説がまことしやかに認知され 優しいは あまり歓迎されなくなった たまに手渡される “優しいね”は どこかに嘲笑を含んでいて こちらも曖昧に頷くことが増…

再会

大好きだった瞬間と もう離れたいと泣いた時間を くらべるでもなく 並べるでもなく 切り離した たやすいこと 少し心をかたづけておけば 体のほんの片隅に そう思ってた 大好きだった瞬間と もう離れたいと泣いた時間を とりもどすでもなく 望むでもなく 消去…

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん〜店主、旅に出る-1

ようやっと 半袖の上に羽織りもの ぐらいの格好で 陽だまりを歩けるお天気になりました とは言え 晴れた翌朝の冷え込みは ぶるる、としっぽまでかじかんでしまうほど 猫そっくりの毛糸屋の店主は 何色のベレーを編もうかと思案中 空のかけらの青を混ぜましょ…

あなたといた頃よりも

ねぇ 泣いたよたくさん こんなに流れたの 久しぶりだよ 昔は 不幸せだといいのに なんて 呆れるぐらい 願いは尽きなかったよ ねぇ あたしより幸せでいて あたしは幸せでいるから ねぇ あたしより長く生きて あたしは見届けられたいから ほらね もう雨はやん…

木曜日のあたし

木曜日のあたし ちょっと迷ってスニーカーにした 木曜日のあたし ちょっとさびしくてスマホをオフにした 木曜日のあたし ちょっと幸せな空のした 木曜日のあたし ちょっと前向く昨日より

ステーション(放送局)

ステーションを探す 暴風の深夜 せめて感情が すっかり姿を変えてしまわないうちに ステーションを探す 暴風の深夜 せめて美しい音節が 耳朶に触れていられるように 通信も電気も明滅する 暴風の深夜 携帯ラジオでステーションを探す きみの無事を祈りながら…

指先は涙を紡ぎ

指先は涙を紡ぎ 彩りは愛を生み出す 悲しみが深まりゆけば 静寂と熱を宿す 指先は愛を彩り 誰もが胸を打たれる 喜びがあふれゆけば 喝采と慈愛を宿す 指先は熱を帯び 彩りは宇宙(そら)を染める 絶望から立ち上がり 再び愛が紡がれる Mari Nishimura(作品…

La tempête

ぅをんぅをんと大気が唸る 軋む窓にまんじりともせず 明滅の夜を過ごす 携帯ラジオに耳を澄ませば 聴き慣れた声 誰かがそこで今を生きていると 少し安堵し寝返りをうった ぅをんぅをんと大気が唸る 軋む窓にまんじりともせず 明滅の闇を過ごす

ふたり

きみのために 沈黙を守ろう もういっそのこと 心を閉じて ぼくのために 沈黙を守ろう もういっそのこと 唇ふさいで 月が落ちて 闇を裂いても かなしくないのに 涙が静かに流れて この感情の名を二人は知らない 彩りをまだ知らない

スパイスで済むのなら

たまにはいいでしょ? 傷つけるわけじゃなし 悪態つくわけじゃなし なくなるわけじゃなし 普段は忘れていられるんだし たまにはいいでしょ? 傷つくわけじゃないし どこかに書き込んだりもしないし 減るわけじゃなし ついでに思いだすぐらいなんだし 人生の…

思春期

*空写真は作者撮影 ほわほわと 怒りのあぶくたちのぼり あなたの愛をかき消していく

無機質で丁寧だ

削除しますか? メッセージは硬質で丁寧だ 知りたくないことほど リアルさを持って迫ってくる 尾ひれをたくさんくっつけて ⭕️⭕️さんを削除しますか? メッセージは無機質で丁寧だ 触れたくないことほど リアルさを持って伝わっていく 尾ひれをたくさんくっつ…

ぽたぽたと瞬きもせず

あふれだして ぽたぽたと瞬きもせず 心からも脳からも ぽたぽたと ついには伽藍堂になるまで あふれ続けて ぽたぽたと身じろぎもせず 星からも魂からも ぽたぽたと ついには伽藍堂になるまで

さよなら九月

さよならあたし さよなら九月 追いかけてくるの もうやめてね 夏は終わり 恋は終わり 涙もたくさんふいたでしょう さよならあたし さよなら九月 思いださせるの もうやめてね とまこさんによるイラストACからのイラスト

うなだれた季節

うなだれた季節は 喜びをもたらすことなく 過ぎようとしている 小さくても実り 細くても成熟し 時は走り続け また種が割れる 耳に届くのは モズの歌声と鈴虫の奏で こんなに 日差しが容赦なく ひまわりが咲き乱れていても 蝉は確かに眠ったままだから 人々は…

愛には明るくなかった

ルールには明るくなかった その時だけは あかあかとほおを燃やし 何かを叫んだ ルールには明るくなかった その時だけは 抱き合ったりハイタッチしたり 愛には明るくなかった 傷つけるのはイケナイコト やさしい態度はイイコト 肩を並べれば焦燥が走って 唇を…

まだ孤独ですらない

ろうそくの炎が揺らぐように 頭の芯からのみこまれる いや そんなものじゃない 説明できる時点で既に 孤独とは呼べないから 心がすり減って 自分だけしか見えなくなる いや そんなものじゃない 言葉で描けるうちは まだ 孤独ですらない 絶望は微かな希望を内…

願い

月蝕みたいに心を許して 太陽みたいにあたしを隠して 月蝕みたいに心を撫でて 太陽みたいにあたしを壊して

きみへの感情

頬が急に熱くなり ぽわっとはじけた きみへの感情 手を替え品を替え 追うかとどまるか もうひとりの自分が やめなよと苦笑する どうにかねじ伏せ 顔を上げれば みるみるきみの背中が遠くなる 頬が急に熱くなり ぽわっとはじけた きみへの感情 手を替え品を替…

愚か者

足先が急に冷たくなって 空が遠くなった朝 迷う風もなく歩く人らと すれ違う 耳を満たし目を満たし 指先だけで世界を捉えたつもりになって 銀杏がカサカサ降って モズが悲しげに鳴いても 誰も気づかず行ってしまう 耳たぶが急に冷たくなって 空が遠くなった…

神無月

はからずも ため息ひとつかんなづき

だんまり

10月の声をきいて1週間 君は頑なに だんまりを決め込んだままだ かりそめの名も 真の名も 器用に使い分けて それはもう 呆れるより感心するばかりで こんなに寄り添っているのに こんなに抱きしめあっているのに なんて遠いのだろう 10月の声をきいて1週間 …

あなたに見つかることを夢見てます

あなたに見つかることを 夢見てます あなたが探してることを 夢見てます あなたのゆがんだ口元 覚えてます 醜くつり上がった目尻も 覚えてます あなたにあたしは探せない あたしもあなたを探さない 不幸を望んだりはしないけど 心の中での「あっかんべ」は …

野分去り

野分(のわき)去り まだ便りなき きみ思ふ

痕跡と証明

カタカナとアルファベットと 数字を組み合わせたら 鍵は開くはず メモはしない主義 語呂合わせもしない主義 ああだけど どこかでもつれてしまったのか 鍵はなかなか開かない 代わりにあなたが いつだって記憶を引き受けてくれてたから 困ったものね 結局 半…

風磨きのうさぎ−8

星が溺れるほどの 日々が続いて うさぎたちにできることは とうとうなくなってしまいました 風を磨いても輝きは戻らず 風を奏でても誰にも届かず それでいて ひたひたひたひたと 空いっぱいにあふれだすから このままでは 宇宙の理(ことわり)までなくなり…

気まぐれ

戯れど知らぬ存ぜぬ 猫じゃらし ねうねう鳴きて 走り去るかな