猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2016-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ミライ

星がしがみついたビルの群れ 僕はようやく息をつく 捨てたはずの昨日が 今もまだ耳元で責め立てる ため息の合間に夢を語れば 胸の奥に澱が舞う 影がしがみついたビルの群れ 僕はようやく目を閉じた 失くしたはずの心臓が 今もまだカチカチと責め立てる

遠い昨日にとまどうほどの

日だまりを通り過ぎたのは 早すぎた春の風 咲く前の花が身じろぎするほどの 心を駆け抜けたのは 早すぎた恋心 流れる雲がとまどうほどの 文庫本を閉じたのは 降り始めの淡い雨 遠い昨日にとまどうほどの

コースター

書かれた文字が 滲んで流れた 珈琲と煙草が香る小さな店で ぎこちない時間を分け合い 頑なに明日を信じてた 壊れながら泣きながら それ以上 温もりはいらないと思った 書かれた文字は 滲んで揺れた あなたの瞳のように ~映画『無伴奏』に寄せて~

よく晴れた日の

よく晴れた日 一面のどしゃぶり 赤い赤い空 一面のどしゃぶり 染まったのは明日 傘のないあたし よく晴れた日 一面のどしゃぶり 赤い赤い空 一面のどしゃぶり

かけっこ

しろいうさぎと 紅いうさぎ どちらが先に追いつくか しろいうさぎは夢あと食べた 紅いうさぎは傷あと舐めた 星がよっつ海にこぼれて こわれる前に しろいうさぎと 紅いうさぎ どちらが先に見つけるか しろいうさぎはまあるく食べた 紅いうさぎはザラザラ舐め…

はらり、春

はらりはらりと衣がすべり 風は静かに舞いました ちらりちらりと映るのは 心が壊れた日の空で ほろりほろりと泣けたなら 散るのも惜しくはないでしょう

すりガラス

用心深く ごとりと置いた わたしたちの間に置いた はじめのうちは一枚だけ 薄いものを選んで たまに割ってみたりもする そのうち 分厚く背の高いものを選んで 割ることもしなくなった 用心深くふたりの間に ごとりと置いて 穏やかに日々は続いていく 長く長…

残像だけかもしれない 意味のあるものは 全て 残像なのかもしれない たどり着いた夢も やがて 残像だったかもしれない 手の中のものは だから すべり落ちてしまう 空さえも 忘れてしまう きみの涙も

やがて

青は心に降り注ぐ 浸食していくそれは魅惑的な色 青は心に押し寄せる 崩れる前のそれは狂おしい色 青は心を浸食する 壊れる前のそれは美しい光

また会える

悲しみを育てることに ほとほと飽きたら また会いましょう やさしいあなたへ

猫の日々

しっぽで返事したあと にゃあ ひと声ないた 「縄ばしごをだらりと垂らせば 都合よく感情が引っかかるとでも?」 しっぽで返事して にゃん ひと声ないた なげやりな希望と お決まりの夢あと 着飾った甘い感情 戻れない猫の日々

素顔

やさしさの膜を やぶる 真実が、あるのなら ゆっくりと縄梯子をたらしながら それでもいい、と 舌が動いた 偽りが、無になるのなら やさしさより 真実を、知りたいから ゆっくりと私の中の縄梯子をおりながら そうしてほしい、と 唇が動いた

ずれ

毎日いっしょ 曲がり角に気づかない 毎日聞こえる 愛の言葉に気づかない 毎日歩く 目隠しされても気づかない 毎日見つめる 温もりに気づかない

夢あと

誰かが残した夢あとは 頬にも触れず流れてく 誰かが忘れた夢あとは 見えない傷を呼び起こす 誰かが託した夢あとは ひんやり心に灯をともす

洞窟

誰かの後悔が ぽとりと首からもげている そうか 前を向けたのか 少し行くと 今度は 誰かの嫉妬が ゆらゆらたちのぼる 横目で見やって 寂しくなった 少し行くとやがて そっけないひとことの向こうに やわらかな想いが キラキラたまり続けていて 通り過ぎながら…

胸元の月

あわせた胸元に月がかかる なつかしい孤独をたしかめるように おぼろな果てを追いかけ続けた ふたりの水がめは空ろなままで ところどころが欠けていた しまい忘れたやさしさを 悲しみが貫いていく ありきたりな甘さを おぼろに漂わせながら あわせた胸元に月…

宿題

白い空に ポカンとお日さま どうしてそんなに 真っ黒なのだろう 白い空に ポカンとお月さま どうしてそんなに 真っ赤なのだろう くたびれはてたこの星は 今日もくるくる回って倒れた 白い空に ぽつんと咲いた ひまわりの上 僕はまだ きみの出した宿題を考え…

そばにいるのに

走りながら名前を呼んだ 必死だった 届きそうだったから 僕の腕は何度も 温もりを確かめたはず そばにいるのに 夢だけが不安を連れてくる 触れ合ってもたどり着けない きみの心

珈琲

よくばりなまま 旅から戻り 感情をほどいて ようやく気づく こんなにもからっぽ こんなにもぎゅうぎゅう あなたを好きな わたしが好きだ ふたりの時間を久々に持て余し 困り顔して珈琲を淹れる あなたが好きだ

あの手紙

文字に透ける あなたを信じたわけじゃない 文字に落とした ココロを信じただけだから

忘れたはず

さびしさは胸の奥から かなしみは指のさきから ひたひたとやってくる

hug

いのること ねがうこと それは 自分勝手だと 見ているだけだと 自分を責めた日が 多かった とどまること 去ること それは どちらも覚悟のいること いろんなことを 人は忘れてしまうけれど 思いだすことができる 抱きしめあえる

四季

せかされるように春はいき 溶け落ちるように夏がくる 追い立てられるように秋は去り 燃えさかるように冬がくる

卒業

砂のこころを たずさえて 広い広い空の下 ぽつんと 不安はころがりおちる 水のこころが よりそって 広い広い空の下 ふわりと 夢が舞い上がる

留め置き

グラスの汗が水溜りを作るのを ふたりは見ていた 雨上がりのにおいと衣擦れの音 ふたりはそれをきいていた 温もりも冷たさも 共有出来なくなって それなのに 同じ場所に縫いとめられていた

水色

持ち上げられ 高く高く 海も時も見えなくなった 持ち上げられ 遠く遠く 山も心も見えなくなった 無様に仰いだ空は 色が消えて 命が溢れ出していた

傷心

穴を掘って どんどん掘って 穴を広げて どんどん広げて 頭から飛び込んだので 見えるものも見えなくなった 傷つくというのは そういうことなのだ

ポータブル壺

わたしは引き抜かれ さらされる 甘くもなくて 苦くもなくて すっかり根っこが乾いてる わたしは引き抜かれ 捨てられる 夢もなくて 涙もなくて すっかり心が乾いてる それを拾って罪の壺に またほうりこんだ あふれたら 許されるだろうか ひとしずくの 許しを…

鏡すら 虚像を持て余す ありふれた一日の始まり もしかしたらと 道ばたに奇跡を探す 例えば ここにいることがそうであっても 気づかないまま 愚かしく 日常にのまれていく

真夜中の散歩-1

右眼が真夜中の散歩から ようやく帰ってきた 星が燃え落ちるのを どうしても見たいからと 出かけていたのだ 潮の香りと砂をまとって ひりひりしながら 帰ってきた 左眼はとうに眠ってる 燃えた星の話は またにしよう おやすみ いい夢を