猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

詩人屋さんの問わず語り

幾何学模様の感情にもぐりこんだまま もういいよって抱きしめられるまでは 泣くもんかと 今にも落ちそうな空を睨んでいる 叱られても褒められても 意に介さないような子どもだったから さぞや大人らは気を揉んだことだろうが 岬のこの場所でカタカタと文字を…

とびきり哀しく美しい音律

心臓の音が君に届かないよう 右向きになる 抱き合って眠っていたのが 遠い記憶のように思えて 君に気づかれないよう こっそり寝返りを試みる 心臓の音をざわつかせないよう 右を下にする 君を起こさないよう 石像のように横たわっている 抱き合って笑った日…

雪ひとひらの

ほろりふわり 涙のあたり 雪ひとひらの 風舞哀し ほろりふわり 胸のあたり 指ひらひらと 恋舞嬉し ほろりふわり 空のあたり 声はらはらと 夢舞愛(いと)し

まだ存在するものならば

時々ささやかに理由をつけてきみを遠ざけたとりあえず意味が欲しくてきみを遠ざけたさがしたのは丸まった背中と跳ねた髪 肩をトンとした時の 弾ける笑顔 この星の片隅にでも この光景がまだ存在するのなら いますぐ後悔をやめるのに

夢みる夢太と言われて

夢みる夢太と言われて ぼくは種を蒔いた 知られないよう ひっそりゆっくりあわてずに 夢みる夢太だと心を引っ掻かれて ぼくは種を育てた 気づかれないよう こっそりのんびりあせらずに 夢みる夢太と言われても ぼくはあきらめず 着々とコツコツと 傷つきなが…

眠る前あなたにぶつけた疑問

ピノキオが もう少しずるくて もう少し意地悪だったら 世界は変わっていたでしょうか ピノキオは 糸を捨て創造主から離れますが やがて“正しい”心を“取り戻し” “本当のにんげん”になりました 成長と呼びましょう 幸せとも言えましょう わたしたちは憧れ そし…

無秩序な空 無表情ないいわけ 無知なあたし 無になる恋心

ある感情

似ても妬いても

乾ききったささくれのように 身勝手な未来を描いては それが自分だけじゃないことに 安心してた ひび割れた明け空のように 身勝手な過去をかき混ぜては それが自分だけじゃないことに 甘えてた 似ても妬いても ふたりでいたのは やっぱり好きだったんだね ね…

今日の器

押し込まれたのは 我慢強くそれでいてしたたかな顔を持つ 女の中だった 心の汚れ具合を気にしつつ どこか諦めモードでいた女の中に 一瞬隙が生まれたので 無理やり押し込まれたのだ ああ ますます汚れてしまうわ 女はそんなことを呟いたが やっぱりどこか諦…

狂季

春の始まり 秋の終わり やさしい雨にうたれる風情も かき消えて ついには“狂季”とまで囁かれるようになり 誰のせいかと人らが訝り始めたころ 突然空が落ちた 誰のせいでもなかったが 誰のせいでもあったのだ 確かに鳥も牛もいなくはなったが 猫だけになると…

宇宙の片隅に螺旋の雨が降る

宇宙の片隅に螺旋の雨が降る 君の涙の理由を僕はまだ知らないままだ デジタルな音列と穭田(ひつじだ)を見比べては 乾いた内臓のどこに感情を隠したものかと 頭を悩ませている ここにいればいい ここにいれば辛い 平行線の幅は広がるばかりで なすすべもな…

ミュート

使い回された残酷な言葉が 指に触れて “お前こそ消えてしまえばいいのに” 少年は思った 父から浴びせられ 母からなすりつけられた カラフルな愛憎は やがて彼に 心を半分だけ機能し続ける技術を 習得させた 使い回された残酷な言葉が 指に触れて “お前こそ消…

きみの前から

あたしがいなくなったとき 心は生きているのでしょうか あたしがいなくなったとき 空はそこにあるのでしょうか 荒んでしまってさえも 存在丸ごと幸せだと 言い切れなくて あたしがいなくなったとき きみは笑って手を振った まるでなんでもないように 嬉しそ…

まばたきする空〜トーザ・カロットの人々

空がまばたきする 1000年に1回とも2000年に1回とも 言われているがね 空がまばたきする そう 雲読みの人らは “降る”とラジオで伝えているでしょう たまたま“おしまい”のほんの絶望の近くに 命をもらいうけた 雲を数える宿命を託されて 空がまばたきする い…

星を喰いながら

あやふやな幸せの捏造より手近な不幸せを書き込む日常 自分の中にあるのか 他人の手元にあるのか 時々区別がつかなくなる 目は追いつかず 耳からは芥が溢れ 結局何も知らなかった頃へ退化する 振り絞って永遠を叫んだところで すり減るばかりの世の中で 何を…

いっしょにいようよ

秋曜日のモズ日和 空はひとりでそこにいた 何だかさびしそうでたまらなくなって ぼくは空といっしょにいることにしたんだ 猫のまねして寝転べば 空と向かい合うことができるから ちょっとは涙もやむのかなって ぼくは空といっしょにいることにしたんだ 秋曜…

溺愛

わたしの猫は 宇宙を飲み込んで 知らん顔して膝の上 わたしの猫は 宇宙を微塵に刻んで 知らん顔してミルクを舐めた わたしの猫は 宇宙を読み解き 知らん顔して顔を洗う わたしの猫は わたしの宇宙 全てを悦び全てを滅ぼす

みかん

蜜柑色のカーディガンは擦り切れてしまったけどいつも一緒ですよく晴れた冬の日持ち主だけがいなくなり落ち着いた頃持ち主の家族がまだ使えそうなところを切りとってさびしかろうと小屋に入れてくれたのです蜜柑色のカーディガンは擦り切れてしまったけどい…

いつか並行世界で

いつか並行世界を生き抜いたあげく 微塵にされるのなら 猫の姿のかみさまがいい もしも喰べられてしまうのなら 猫の姿のかみさまがいい そんなことを口には出さず 老親の顔を盗み見ては 足元にじゃれる黒猫とこっそり結託するのです “秘密だよ”と

先回り

不安を先回りするのは よくも悪くも馴染みの感覚で 用意周到だねって言われるか 神経質だねえと呆れられるか どちらかだったような気がします いくつになっても 器用に立ち回ることは苦手で そうじゃないふりをすることだけが 得意になっていきましたけれど…

みじん切りの宇宙

みじん切りになった宇宙に 興味なんてないよと 最後の猫が告げた だって 次の宇宙がもう生まれているのだから いまさらどうにかしろったってねえ 最後の猫は みじん切りの宇宙をつまんで ぽいっと口にほおりこむ うん よく焼けている 猫舌の我々にはまだ熱い…

極意

そっと そーっと登らせてもらうことです 機嫌の良いときにそっと だけど もしも時間が限られているとしたら そして そのことを知らなかったとしたら (大概はそうである) それが全てではないのだと 心と夢に言い聞かせているのです そっと そーっと登らせて…

真実の行方

親しみはあっても興味はない憧れはあるけど大好きでもない知ってはいるけど友だちじゃない好きは好きでもかなり薄い つらつらと 大真面目にそんなことで 脳内をいっぱいにしたので周りの空気がなくなりそうであわてて涙を吸い込んだ そんなものでいいのに そ…

休日

日がな一日 てのひらしか見なかった 約束も告白も買物も タップで済ませて あとはデジタルな川の流れをぼんやり見てた 日がな一日 てのひらしか見なかった 政治も旅も空模様も タップで済ませて あとはデジタルな川の流れに身を投じてた 選びに選んだお気に…

黄金色の雲間

見つけたのは 黄金色の雲間でした 身勝手に待つことと 振り返ることを もう休んでしまおう そう決めた朝だったのです 見つけたのは 黄金色の雲間でした 身勝手に否定することと 迷い続ける時間は もうしまっておこう そう決めた朝だったのです

マーマレードといつか降る空-3

君と出会った頃 とても大切でとても愛してた人と お別れしたばかりだった “すれ違い” 一言で片付けてしまえれば お互いもっと引きずらずに済んだでしょうに 傷口にグッサリくるような言霊も “ふふん”と受け流していたでしょうに 雲を読めないあの人と 雲を読…

猫は季節を読むのがうまくて 誰よりも孤独なくせに 誰よりも幸せを運ぶ 猫は心を読むのがうまくて 誰よりも自由なくせに 誰よりもそばにいる 猫は風を読むのがうまくて 誰よりも悲しいくせに 誰よりも孤独を選ぶ

アマイアマイハチミツのように

きみが 困難の中にいて 苦しいと送ってきたメールを あたしは開きもせずにゴミ箱に移動する 嫌いになった途端 アマイアマイハチミツのように きみの不幸は姿を変えた あたしにとっては きみの近況なんて どうでもいいことになってしまって きみが不幸を味わ…

折りたたんでしまえるものなら

季節を彩る光を 心を彩る出会いを 瞳を彩る涙を 舌を彩る言霊を 恋を彩る温もりを 小さく小さく 折りたたんでしまえるものならば