猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

とびきり哀しく美しい音律

心臓の音が君に届かないよう
右向きになる
抱き合って眠っていたのが
遠い記憶のように思えて
君に気づかれないよう
こっそり寝返りを試みる
 
心臓の音をざわつかせないよう
右を下にする
君を起こさないよう
石像のように横たわっている
 
抱き合って笑った日々が
なかったことだとしたら
僕にとっての優しい嘘だったのだ
 
散りゆく風の
祈りの花の
名もない色を書き記して
 
心臓の音を響かせないように
右向きになる
君に届かないよう注意深く寝返りを試みる
 
笑いあって触れた頬に
もう届かないのだとしたら
ただの優しい歌だったのだ
とびきり哀しく美しい音律の