猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

君はいつもよりやさしかった

日差し弱く 風だけが重い 道は空いていて 目的地はいつもより近かった こんなに晴れているのに こんなに哀しい こんなに体が軽いのに こんなに心が引きずられる 日差し弱く 風だけが重い 空が広くて 君はいつもよりやさしかった *筆者撮影

架空言の葉処-3「芯」

集団の中にあっても冷静さを失わず、空気感に染まりすぎず、距離感を保つすべを失わずにいること また、それを他者に押しつけないさま ぶれないこと、あるいは軸と呼ばれることもある

元彼

秋暑し

石(ストーン)が逃げる|新刊のお知らせ

石が逃げた なんてことのない 曇りの日に 龍をあしらった黒いストーンが どこをどう探しても見当たらなくなった 枕元に置いたり バッグに忍ばせたり 大切にしていたのだが 不思議と見当たらない 不安はなかった 以前似たようなことがあり 間違って捨ててしま…

小瓶

染み込ませたのは 体の隅に眠っていた したたかさ 小瓶にしっかり封をして とりあえず 片付けておいたのだ いつか何かの役に立つだろう そんな予感があったので とりあえず 慎重に封を外し 心の襞という襞に 小瓶の中身をふりかける あとは 勝手に染み込み育…

架空言の葉処-2「不安」

両肩に満月の気配を感じること あるいは盗み見られているように 思う様子 特に深夜の時間帯に多い *フリー素材

暴風域

汲み置きの水を もういちど確かめて 今日はもう眠ってしまおうと 思った いつ消えるかと 電灯を気にしつつ 薄明るいまま 目を閉じる 台風情報とやわらかなお喋りに うとうとする頃 ごおと窓がしなった どうあっても砕けはしない 言い聞かせても音に翻弄され …

ある光景

夢の中に

かたく目を閉じ 無理やり体を 夢の中に押し込んだ 心はあとで 追いかけてくるだろうから 敢えて黙っていた 後悔に意味はないのに 後悔に慣れすぎて 動けなくなる 全てを振り払い 無理やり体を 夢の中に押し込んだ 心はやがて 追いかけてくるだろうから 敢え…

ソリティア

イラスト:はんペンさん

入浴

鎧を脱ぎ マスクを捨て 薄いメイクをとりさった ついでに 纏ったあれだのこれだのを 洗い落とす 剥き身になれば 暴かれたことも 痛みも なお一層直接的で あたしは浴槽の中で 呻くのだ 鎧を脱ぎ マスクを捨て 薄いメイクをとりさった ついでに 被ったあれだ…

心を診る猫の医者-16

絶望が始まりでも いいんですよ 希望に満ちて ワクワクして 光に導かれる始まりなんて そんなにはありません 大丈夫だろうか うまくいくのかな そんな風に 慎重になりながら 始める それでも良いのです そのまま ブレーキという呪いを 自分自身にかけてしま…

深夜ラジオ

風の音(ね)をわけて 眠りを邪魔せぬ速度の 曲が流れ たまに台風情報を 誰かが静かに読み上げる ひとり寝に寄り添い 考え事を邪魔せぬ速度の 曲に抱かれ たまに禍の知らせを 誰かがそっと読み上げる 浅い夢と寝返りを繰り返す 暴風雨の夜に

2日続けて

2日続けて睡魔に憑かれ 3時間も早くベッドにもぐる 4番目の夢はなかなか頓狂で 知人が画集を出すことになり その手伝いをしていた 半分は正夢だと信じているのだが さてさて 1日の始まり モズが遠くさえずる時刻 今日は何が待つだろう

水曜日の顔をした火曜日に

9月半ば 水曜日の顔をした火曜日に 何やってんのさと 軽く諭され職場へ向かう 奇数月の焦りなど 知ったことでない 言い聞かせても胸の縁(ふち)に 引っかかったままだ スマホ画面の通知に それほど深い意味がないと 納得したのは いつだったろう 9月半ば 水…

彼方此方の街に住む

3人の彼方此方の街に住む 絵を描く才を存分に持ち合わせた 凄腕な方々と出会った 現在ありがたく お力添えいただいている 謙遜でも自虐でもなく 絵を描くことと 程遠いリアルを生きる者には もったいないほどの 幸せな時間と空間が 日々そこにあり 夢のよう…

ふたりの日曜

ロボット掃除機の唸りに 少しかき消された 気のない返事 ぞんざいなのは いつものことで もう悲しくはなかった 出かけるなら 牛乳を買おう 出かけないなら 食料庫を片付けようよ 返ってくるのは 「ああ」 と 「ん」 と ほどよく混ざり合った 低い声 もぞもぞ…

花首拾い

物差し

愛に偏れば 理知は消え去り 聡さに偏れば 愛は消え去る 愛を注ぐと 抱きしめられれば 冷たい記憶が 遠くに満ちた 冷静と情熱の物差しは いつだって目分量だ いつだって自分量だ 愛に偏れば 理知は消え去り 聡さに偏れば 愛は消え去る 愛を注ぐと 抱きしめら…

架空言の葉処-1「孤独」

絶えず昨日の自分が敵になることを指し、生きながら折り合いをつけること *フリー素材

幼なじみの誕生日

9が重なるから 幼なじみは少し寂しそうに 呟いた 苦に通じるからだと 血縁から言われ続ければ それはそうなるだろう 9月9日9時9分 君は誕生日を嫌いだと言う 数字に意味を見ようとすれば 深く広くどこまでも 数字なんて記号だと信じれば 脆く消え去り意…

針とび

レコード針が少し軋んで 同じフレーズが風に舞う カード会社の通知さえ すでに紙ではない時代 流されるのも 立ち止まるのも 自由でいいはずなのに ブレーキをかけすぎては 後悔する 同じフレーズを 聴きながら 半年前に逝った人を想う あの人の時間も止まっ…

夜景

たまに脳裏をよぎる 大都会の暗闇に貼りついた夜景 きみと行ったことにする 足を踏み入れる日は ないだろうが そう決めたのは ふたりが一人と一人になってから 人を騙せば罪になる 自分を騙すだけならば… たとえ 上書きされた妄想だったとしても 心が壊れな…

詩人は嘘つきか、嘘つきだから詩人なのか

決まってるわ 嘘つきな時もあれば 正直な時もある 詩人の顔をしている日もあれば 猫の顔で街を歩く日もある それが仕事なのでしょ 楽しそうで何よりじゃない ふたつほど向こうの星から 先輩が呼びかけてきた どこにいようが 誰といようが いつもと変わらない…

僕の心

君の心

プチ旅

*フリー素材

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん「息子ども」

いつもであれば メールかLINEで済むところ 声が聴きたいと 嬉しいことを言う息子ども 何をねだるでもなければ とりたてて近況報告でもなかろうに リモートワークを早々に切り上げ スカイプを開始する もう〜親父さあ LINEしてからにしてよ 頼むよ、とぼやき…

モーニングコール

おはよう あたしは挨拶する 声にだし 心で呟き 文字に記し エア・ハグを交わす おはよう きみが挨拶する 舌にのせ 笑顔で表し 文字に記し エア・キッスを交わす 禍など なんでもないフリをして 画面に向かう “いつまで続くの?” それだけを禁句にして *イラ…