石が逃げた
なんてことのない
曇りの日に
龍をあしらった黒いストーンが
どこをどう探しても見当たらなくなった
枕元に置いたり
バッグに忍ばせたり
大切にしていたのだが
不思議と見当たらない
不安はなかった
以前似たようなことがあり
間違って捨ててしまったと
落ち込んだのだが
埃まみれでもなく
ずぶ濡れでもなく
いつものところに戻っていた
そんな出来事があったからである
石が逃げた
なんてことのない
曇りの日に
きっと
何かから守ってくれているのか
気づかないだけで
そばにあるのだ
石は逃げる
そして
しかるべき時に戻るのである
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<新刊のお知らせ>
いつもありがとうございます。
このたび、2年ぶりの新作を発表する運びとなりました。
現在予約受付中です。
よろしければ。
〜書籍情報〜(敬称略)
第五詩集『心をみる猫の医者』
10/02(金)発売(予約受付中)
詩:いつきさらさ
絵:いとうのりこ