猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧

てのひらの青、てのひらの赤

緊張しきったげんこつを ため息のリズムでほどいていく てのひらの青、てのひらの赤 混ざり合わないふたり模様 きみは抱え込んで わたしはあけっぴろげで てのひらの青、てのひらの赤 譲り合えないふたり模様 緊張しきった胸もとを 不規則なリズムでほどいて…

何もなかった頃

何もなかった頃 光も影も手をつないで 楽しげに笑ったり ときどきプリプリ怒ったり そんなこんなで結構幸せだった 何もなかった頃 光も影も抱き合って グズグズ泣いたり ときどきよろよろ迷ったり そんなこんなでまあまあうまくいっていた 何もなかった頃 光…

やさしさと 思い上がりと ジコマンを 行ったり来たりする とろとろの感情に囚われそうで 苦い笑いがこみ上げた 飾りっ気も 混じりっ気も どこかに消えて 茶目っ気に見えるなら それでもいい 好きというだけで こんなに愚かでこんなにずる賢くなれるなら これ…

これ以上寒くならなくていいように

ようやくふたりでいられた年は 溝がこれ以上ないほど深く広く 肩が触れるたび心が冷えていった 風は忙しないリズムと チキンやバニラの香りを放つから 抱えた秘密なんてどうでもよくなった 猫ですら隠れられない街に 居場所があるのなら 誰かの記憶が混ざり…

塩の味した唇も 蜜の味した唇も 結局何も残してくれず 自暴自棄になるばかり あらわになった体より 乱れた心を恥じました 結果何も起こりはせずに 四苦八苦で終わるのです 塩の味した唇も 蜜の味した唇も 結局何も明かしてくれず 匿名希望の夜は果て

笑う生き物

いつまでもどこまでも 忘れないで 笑う生き物だということを 悲しみは重い毛布に似ていて 冷たいくせに懐かしいけれど いつまでもどこまでも 忘れないで 笑う生き物だということを 涙に明け暮れても 忘れないで

DNA

切り離し削り落としてしまいたい あたしの中の螺旋に手が届くのなら バラバラにほどいて編み直してしまいたい あたしの中の記憶に手が届くのなら 粉々に砕いて飲み込んでしまいたい 宇宙の摂理に手が届くのなら 幼い日々 どうにかして断ち切りたく そんなつ…

秒針

追い越せるものならば せめて 昨日の方角に グギグギ回し続けるより 余程気がきいている 追い越せるものならば せめて あさっての方角に カラカラ回し続けるより 余程気まぐれでいられる 追い越せるものならば 追い越せるものならば

瞬きの時

会えない間 きみは思い出してくれるだろうか 気持ちと距離について 誰かの定義を信じたわけじゃない だから 旅立ちの日も穏やかだった きみもそんな顔してたよな 会えない間 きみは思い出してくれただろうか ひと冬の日々を 瞬きの時を

寂しい二人

悲しくならなかった日を探すのは 簡単ではありません 心が悲しみに傾けば傾くほど 匂いも景色も鮮明になりすぎて ほんの些細なぬくもりや ほんの小さな幸せを 塗りつぶしてしまうからです 命の意味を 愛の意味を 見失うこともあって そんなことばかりではな…

詩人屋さんとピアニャラン

空落ちが落ち着きそうだという 長期予報がラジオから聞こえてきます 雲予報士のあの子の声でした 丁寧な雲予報が終わると あの子の夫さんが選んだ陽気な音楽が流れてきて 詩人屋さんはごきげんになりました 毛糸屋さんの長いしっぽ 巻かれた人には幸がくる …

運び屋

ぶつくさものぐさ 文句で満たす わいのやいの 唇満たす 歯ぎしりぎしり 言葉を探し ガタゴトタワゴト 愛を運ぶ

季節外れ

旅計画

たてている間それはそれは幸せで 行っている間はただもう夢中で 時には巻き込んだり巻き込まれたり 二度と行くもんか ふて寝することもあるけれど それでもしばらくすると 知らない街の地図を広げては にっこにこの顔になってる 生粋の 旅人になれなくても …

泣く生き物

ぽちゃんと音がして 慌てて冷たい池に手をつっこみました あまりにも見たくないもの あまりにもわかりすぎて あまりにも傷ついて おいおい泣いているうちに とうとう涙が目玉ごと落っこちてしまったのです おかげで綺麗に洗うことができて それはそれでよか…

オレンジ

雨のスクリーンが冬を連れ戻して 僕はまたオレンジの香りを探してる 寒いのは嫌いなくせに マフラーも手袋もすぐ失くして 「きみのポケットがいちばん好き」と 小さな声で言った その冬もデコレートされたトンネルを 歩くはずだったのに あなたは 「これ以上…

後悔

たまの残忍さなら おふざけで済む 一度形にしたものなら 一度ぐらいは壊れたって 愚かにも 容易いことのように錯覚して 僕らは決行した たまの残忍さなら おふざけで済む 一度形にしたものなら 一度ぐらいは壊れたって なんとかなるだろうと 思い込んで

夜間飛行

月が貼りついている 満ちもせず欠けもせず へらへらとうせんぼしてやがる 月が貼りついている 海は大潮 心は半欠け ドボドボと盃あふる わたしはわたし きみはきみ わかっちゃいるけど 根掘り葉掘り 先乗りは楽しいか 蹴落としは美酒なるか 堂々めぐりの旅の…

溺れてしまいそうだから

積み立て貯金をとり崩すように 使い果たすぐらいなら 持ち合わせのぬるい野望も 待ち合わせのゆるい胸騒ぎも 手放せればいいのに 僕はもう幸せすぎて溺れてしまいそうだ いますぐ粉々になればいいのに 感情なんて

殺し屋

気配を殺し 笑顔を殺し 言霊殺し 息を殺す 涙が死んで 心が死んで 空を見上げりゃ 星も死ぬ 何を殺して 何が死んで 遺りものだが幸はあるか 気配を殺し 笑顔を殺し 言霊殺し 息を殺す 涙が死んで 心が死んで 空を見上げりゃ 愛も死ぬ

狐雨降り

狐雨降り 水面がゆらり 木の葉色づき 衣摺れさらり

あたしは呼んだ

唐揚げとポテトサラダ おにぎりは一口サイズを何個でも 味噌汁は豆腐とネギで 大人たちは七味をぱらり ラジオかテレビを流しっぱ その匂いを その光景を あたしは“幸せ”と呼んでいた 思いきり嘘っこの 誰も口を開かない 嬉しいとも美味しいとも しょっぱいね…

詩人屋さんと空落ちの星

言葉を編む合間に 少しずつ編んではほどき ほどいては編み ふわふわのティペットが出来上がりました むむむ〜ん! 詩人屋さんは本物の猫みたいに ぐぐぐ、と体をのびのびさせて ニャァ と久しぶりに鳴きました ふと 食卓に置きっぱなしのメモに目がとまりま…

思い置き

ねとねと小言 ぐじぐじ言い訳 ずりずり延ばして しとしと涙