猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

疲弊した空と時間を

疲弊した空と時間を それでも大事そうにかき集め 歩行者天国を行く 友に会えば こぼれる弱音を半分飲みこみ やあやあと さりげなく出方を探る 遅れた返事のそのまた返事は 待たないと 伝えるべきか散々迷って またいつか と柔らかく束縛した 疲弊した空と時…

詩人屋さんと栗と毛糸玉たち

小さな小さなワークショップから帰ってくると 猫の両手にちょうどいいぐらいの麻の袋が ドアノブにかけられていました 詩人屋さんへ 三つ目じいちゃんと栗拾いに行ってきました 宇宙猫さんにも手伝ってもらったよ 編み物は相変わらずだけど 雲を数えたり空の…

夜に嫌われて

嫌われてしまったのです 夜に とけあうこともまどろむことも 愛することも忘れたのは きっとそういうことなのです 嫌われてしまったのです 夜に さびしさも妬みも 抱いているのが苦しくて 忘れるかわりに星空にあずけた だから 嫌われてしまったのです 夜に

僕は愛した

きみの心は少し軽くなっただろうか 「鉄球20個分は抱えてるかもね」 冗談めかしてぷい、と横向く そんな強さと脆さを僕は愛した きみの心は少し明るくなっただろうか 「うーん…白夜ぐらい」 やさしく笑ってため息ひとつ そんな強さと儚さを僕は愛した きみの…

名残の夏にうたう蝉

名残の夏にうたう蝉 陽射しをゆっくり抜け出して 名残の夏を惜しむように 秋に袖を通すのです 名残の夏にうたう蝉 途切れた音符の続きを探す 名残の夏もあとわずか 秋はほのかに染まるのです 名残の夏にうたう蝉 空に手足を伸ばします 名残の夏は消えかけて …

毛糸屋さんと詩人屋さん#3〜トーザ・カロットの人々

“お昼寝しに来たわけではないのでしょう” 猫そっくりの店主はそう言って 軽くしっぽをふりました 小さな小さなワークショップは もともと 編むよりもつれさせるのが 得意な人のための会だったのですが いつの間にか おしゃべり好き 一人が好き お昼寝したい …

隠しておけるから

悲しい顔が 大の得意になりました だって そのほうがみんな構ってくれるから やさしく見えるし目立ちすぎもしないし だけど 誰かが気にかけてくれるから 悲しい顔が 大の得意になりました だって そのほうが安心できるから 隠しておけるから

誰も知らない

あたしは緑色で黄色い心を持っていた あたしは緋色で灰色の企みを抱えてた あたしは白色で茶色の息吹を抱えてた あたしは無色で緋色の涙でできていた

いつかの土曜日に

木っ端の四角いコースター 冷えひえのアイスティを のせました いつかのあの人想うのは 悲しいことだと 沁みていて 木っ端の四角いコースター 冷えひえのアイスティを のせました 残ったシミは ハートの形が崩れたみたいで お酒が呑めたらどんなに楽か そん…

毛糸屋さんと星の涙

ロボット掃除機が 見えるか見えないかぐらいの毛糸屑を 集めています トーザ・カロット岬には いつもいつもびゅうびゅうと風が吹いていて それでなくても レジの下とか棚の隅っことか お客さまが試し編みをした残りだとか 案外と毛糸屑が散らばっているもの…

毛糸屋さんと詩人屋さん#2〜トーザ・カロットの人々

小さな小さなワークショップ 今回もあっという間に おしまいの時刻になりました 猫の子どもらも 人の子どもらも またね! と帰って行ったので 詩人屋さんも店主も ゆっくりお茶を飲んでいます 始まったばかりの時は 終わりが見えなくて 終わりが見える頃には…

はちみつ色の毛玉がひとつ

まあるい陽だまりの中 はちみつ色の毛玉がひとつ 耳の後ろを撫でられながら だんだん傾いていきます ひんやり縁側の上 はちみつ色の毛玉がひとつ おててもあんよも投げ出して ゴロゴロ喉を鳴らします さらさら秋風の中 はちみつ色の毛玉がひとつ 器用に体を…

丁寧な手紙

ほしくもないのにやめられない ほしくもないのにとめられない きみがよこした とても丁寧な手紙に ぼくは心を吸いとられそうで 慌てて折りたたむ 気持ちが通い合っていると 思い込んでいた頃もあったけれど 決して短い時間ではなかったけれど ほしくもないの…

毛糸屋さんと詩人屋さん#1〜トーザ・カロットの人々

ふくよかな言葉を探すのに ちょっとくたびれてきて 詩人屋さんは四つ足になって みょーん!と伸びをしました そのまま頭からしっぽまで ぷるぷるぷる!とふると とても昔のそのまた昔の まだ人たちに忌み嫌われていた頃の光景が ふわわ 心に浮かんできました…

うねり

哀しみを体から追い出してしまいたいのに 歓びはこんなにもかすかな香りで それでも 言葉だけでよかったのに 言葉以上のものを欲しがってしまう 歓びを体にしみこませていたいのに 哀しみは全てを洗い流すふてぶてしさで それでも ふれるだけでよかったのに …

空っぽになって

足りなくても 届かなくても 自分をやめたいほど絶望しても 恥ずかしいことじゃない 隠さなくていい 自分を嫌いでも 自分をやめたいほど傷ついても とりあえず受け入れて とりあえず抱え込んで 泣くだけ泣いて 空っぽになって また歩いていけばいい

惜しげもなく

惜しげもなく恋したい 惜しげもなく涙したい 惜しげもなく笑いたい 惜しげもなくやさしくなりたい

ぬいぐるみ

ぬいぐるみの猫が 詩人屋さんを見つめています 岬の毛糸屋さんを訪ねたとき 猫そっくりの店主がプレゼントしてくれたのです ピンク色で 目も鼻も口もないけれど いつも窓辺でやさしく 詩人屋さんを見まもっています ふくよかな言葉が見当たらない日 空が乱暴…

満タン

知識をどんどん詰め込んで 感情なんかで揺れ動くことのないように みっちりみっちり ぎっしりぎっしり 栄養バランス良いレシピ 癒しの音楽アートに絵画 秘境の宿で温泉三昧 あとからあとから よいしょよいしょ とうとう身動きとれなくなりました

詩人屋さんといっしょ#3〜トーザ・カロットの人々

子どもらが紡ぐ言葉は 舌の上でまあるくまどろっこしく 時に 消えそうになりながら それでも必死に懸命に ちゃんと風にのって ほら こんなに近くで踊っているだろう? 詩人屋さんは 瞳を糸のようにして 落ち空のかけらを愛おしそうに なでるのでした

詩人屋さんといっしょ#2〜トーザ・カロットの人々

あの星には空がなくて それどころか すでに猫もいなくて 道案内をしてもらえなかったのは 残念だった ただただ真っ赤で ただただ吹き荒れていた 空がすっかり降り終わったから 猫だって人だって どうしていいか わからなかっただろうねえ その日はたまたま …

猫のふりしてここにいる

口の中で消えたキャンディ 地面に消えた雨の粒 心に消えた君の声 そんなものを拾い集めて 僕はまだここにいる ものわかりのいい猫のふりして ========== [みなさまへ] いつき さらさです。いつもありがとうございます。 このたび、トーザ・カロット岬の毛糸…

時の伸縮

ざわざわと魂を喰み ごろごろと風唸る おろおろと空のもと じわじわと涙する 呼べども応えなく 心揺れ 北の地を思う 時の伸縮に翻弄され ただ無事を祈る

冷ややかな目線

靴底に吹き溜まる言葉は まるで青い日々のようだった ひりひりした言葉を語るのは 指先でなくともよかった さよならを告げるのは 心ではなく 冷ややかな目線の秋だと決めつけて まだ 立ち止っている

Le Matin

一度きりの朝 とくべつな日 一度きりの空 なんでもない日 一度きりの風が吹く ありきたりの朝 一度きりの命 大切な朝

思い出

幼い日にもらったぬくもりを 思い出せますか 時計がちっとも進まなかった 心細さを 思い出せますか 初めて叱られた日を 思い出せますか 愛されていたことを 覚えていましたか

後輩

あなたを黙らせたい 生意気なまなじりも 強気な唇も あなたを黙らせたい ひたすらの歩みも 迷いをふりきる強さも あなたを心から消したい あなたを黙らせたい 忘れてしまいたい

命を

どんなに背伸びしたところで あたしたちは隣の星にすら 手が届かない そのことを 悲しいとか苦しいと考えるより そんなことを 羨ましいとか妬ましいとか 感じるより ほかのことで命を満たしたほうが きっと 笑い顔も泣き顔も輝く 詩人屋さんはそう言うと 自…

あの子にあげた

灰色クレヨン あの子にあげた 猫の目くるくる描くための 青色クレヨン あの子にあげた 空がくるくる降る日の夢を 桃色クレヨン あの子にあげた ふわふわお花の香りがしてる 黒色クレヨン あの子にあげた 僕のほんとの姿を描いて

空白

あと10パーセント満たされない どうしてもうまらない 動くには十分すぎるほどで 使うのになんの支障もなくて 悲しむことも悔しがることもないというのに 古くなったスマートフォンみたいに 心がマイナスに傾き始めてる あと10パーセント満たされない どうし…