猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

毛糸屋さんと星の涙

ロボット掃除機が

見えるか見えないかぐらいの毛糸屑を

集めています

 

トーザ・カロット岬には

いつもいつもびゅうびゅうと風が吹いていて

それでなくても

レジの下とか棚の隅っことか

お客さまが試し編みをした残りだとか

案外と毛糸屑が散らばっているものなのです

 

用心深くまた選り分けて

 

“たからばこ”

 

と書いた綺麗な箱に入れておくのが

このところ毛糸屋さんのマイブーム

時々お店を手伝ってくれる

雲予報士のあの子をびっくりさせようと

いたずらを仕込んでいるのでした

 

葉っぱの形になったなら

紅い実添えてみましょうか

星の形になったなら

猫の涙を添えようか

 

猫そっくりの店主が

しっぽをゆらゆらさせて

そんなことを考えているうちに

やさしく雨が降り始めたのです

 

まるで

遠い昔に壊れてしまった小さな星が

泣いているかのようでした

 

トーザ・カロット岬には

今日も星の命を憂うような強い風が

びゅうびゅうと吹いているのです