猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

にんげんになりたくて

にんげんになりたくて とうとう家出を決意した 桜が緑に染まっても ちっとも戻りはしなかった にんげんになりたくて とうとう家出を決意した だけどやっぱり どうしよう 葉っぱが黄色く染まったら 1度は戻ってみましょうか 大嫌いだった頃の 自分に会いに

あしたあの街で

あした あの街で青い花が咲いたら あした この街で赤い花が咲いたら あした 雨が降って あした 空がぬかるみ色で 心がそれでも いくらか晴れ晴れしたら 逢いに行こう 好きだと伝えよう あしたあの街で

せいたかのっぽ

背高のっぽの ビルディング おとーさんも おかーさんも 背高のっぽの ビルディング おにーさんも おねーさんも まぶしいまぶしい カラフルな夜を 忘れたい そんなこと言ってたっけ おチビなあたしは まぶしい夜なんて知らなかったけど 都会は宇宙なんだ そう…

あなたなんて

呼び出し音はキライ インターホンも ノックも いるかい?の声も それで 対のスマホ 声に向かって投げつけた そしたら すっかり黙りこくって まるであたしみたい まるであなたみたい

大丈夫

だいすきだから大丈夫 だいすきだから余計にね だいすきだからむぎゅってする だいすきだから余計にね だいすきだからそばにいる だいすきだから余計にね だいすきだからチュッてする だいすきだから余計にね だいすきだからけんかする だいすきだから余計に…

ずるい心

とびきりの笑顔が作れるんだもの あなたを思い切り お腹の中でやっつけながら 許せないのに 平気だよって優しく抱きしめられるんだもの あなたを思い切り お腹の中で罵倒しながら

月ときみ

月が広がる頭の中に それ以上の光を手放せばいい 月が重なる記憶の中に それ以上のため息を集めればいい 月が失う光の中に これ以上愛を望まないきみがいても

意味などなくて

自分と交わした約束に 意味などなくて ゆらゆらするほど 褒められる世の中 馬鹿馬鹿しいのも 全て道理 禍々しいのも 全て真実 あなたと交わした口づけに 意味などなくて ゆらゆらするほど 褒められる世の中 仰々しいのも 全て道理 空々しいのも 全て真実

嘘つきになりたい

嘘つきになりたい もっともっと 嘘つきでいたい ひたすらに潔く 嘘つきになりたい 嘘つきになりたい もっともっと 嘘つきでいたい あっけらかんとまっとうに 嘘つきになりたい

ぽかんと空を

地球の胃袋に ゆっくりゆっくり溶かされながら ぽかんと空を見上げてる いつの間にか落っこちて いつの間にかここにいて ぽかんと空を見上げてる 大きな大きな胃袋に 小さな小さなわたしたち ゆっくりゆっくり溶かされながら ぽかんと空を見上げてる

それは昨日の曖昧な言の葉で

風を追いかけ 記したはずだった 風をつなぎとめ 記したはずだった それは昨日の 曖昧な言の葉で それは明日の 消えそうな夢で 今日の光を信じてもいい 今日の影に怯えてもいい 指先で描けば 何もかもが儚く溶けて やがて誰かの心に また 風が吹き抜けていく

家まで歩こう

アジサイのような まあるい瞳で 君がにこにこ見上げてくる 雲とかくれんぼ出来るから 雨のさんぼが好きなんだね アジサイのような まあるい声で 君は何か歌ってる 大きな傘にいっしょに いられるから 雨の夕方が好きなんだね 小さな傘を大事そうに抱えて こ…

大好きが終わる時

”大好き”が 膨れ上がって盛り上がって 私たちお祭り騒ぎ そうこうするうちに ”重い”だの ”うざい”だの いつの間にか ”大好き”は ただの独りよがりになってた

夢あとに

1日たてば 夢あとに 2日たてば あふれるものは 3日たてば 正直者の 4日たてば 愚かさを 5日たっても 笑い続けている

借り物競争のように

ガラスのコップを 細い細い枝先にのせて まるで借り物競走するように 走ったんだ 体が透けないように 悪意が透けないように まるで借り物競走みたいに おびえていたんだ あなたが大好きなあたしも あの娘が妬ましいあたしも 透けてしまわないように 震えてい…

雑踏

雑踏が雨を呼ぶ 感情たちの飛沫が 風にのって雨を呼ぶ もういらない もう忘れたい そうして手放したはずなのに 雑踏は雨を運ぶ 感情たちの飛沫が 光になって雨を運ぶ

水色の猫

かたむいて かたむいて かたむいて かたむいて 水色の猫になる オレンジ色の糸たどり オレンジ色の夢を食み さからって さからって さからって さからって 水色の猫になる

紫陽花

季節を映しながら くるくる変わる表情を見せた 君にとっては それが普段のことだったのだろう 青空よりも雨が好きで 水たまりにぶら下がる街を 何より愛してた 季節を描きながら くるくる変わる表情を見せた 君にとっては それが正解だったのだろう ふたりの…

魔夏日

熱を食み 氷を食み 血を食み 地を這う 哀しみも 慶びも ほつれにほつれ 未だ乾かぬ体から だらしなくぶら下がる

雲に宛てたラブレター

雨になる瞬間を 憶えていますか 光を受け止めた日を 憶えていますか 風になった夜を 歌いましたか わたしを 探していますか

つまみ食い

爪先立ちして 明日をそっと盗み見た あなたもそこにいるかもって 爪先立ちして 明日をそっと覗き込んだ わたしもそこにいるかなって 爪先立ちして 明日をちょっとつまみ食い 誰かそこにいたのかな 夢はそこにあるのかな

ひとりぼっち

あなたがいなくなったとき 空はやっぱり薄情で わたしは石のように 立ち尽くしていたというのに あなたがいなくなったので 風が吹いても気づかずに わたしは砂のように 流れ出していたというのに あなたがいなくなったとき まわりの誰もが薄情で やさしいあ…

雨が上がるように

雨が上がるように ふたりは終わりを迎えた さよならも ありがとうも伝えられないまま まだどんよりと 心に抱えているというのに 雨が上がるように ひとりとひとりになった あてのない ”またね”も ごめんなさいも伝えられないまま おひさまは まだ雲に隠れて…

もしも

もしも魚になったなら もっと楽に傷つくことができるのに 明るすぎる夜も 見えない朝も 笑って泳いで行けるだろうに もしも魚になったなら もっと素直になれるのに 冷えた体も 熱い鼓動も すぐに脱ぎ捨てられるだろうに

いずれあなたに

きれいなあの娘 優しいあの娘 あなたの隣の かわいいあの娘 どうしよう なにしよう 料理が上手になるように 指先すこおし 借りたとて 器量よしだと呼ばれるように 口元目元借りたとて やはり好かれず やはり疎まれ いずれあなたに忘らるる

しょぼん

つまらなそうに ついてくる 今日はあなたも そんな気分なんだね ほそいほそいお月さま

ぽろりぽろり

いつの間にか 鱗が落ちて だんだん軀も乾いてく いつの間にか 涙が落ちて だんだん心も枯れていく そっと触れたのは こじあけるためですか 呼吸も許さないほど強く 抱きしめるためですか いつの間にか 星が落ちて だんだん夜が壊れてく

開けたまま

閉じるのを 忘れていたのが始まり それ以来 開けたままなのだ あなたの心が いつ飛び込んできても いいように 開けたままにしているのだ

バイバイ

背中を見ていたくなくて ひとつ前のバス停で降りた 憧れて憧れて 叫びたくなるほど大好きだった 横顔を見られたくなくて うつむいたままバスを降りた あとからあとから ポロポロあたしが流れ落ちた

手渡せるものを 何も持ち合わせないのです 元気になれる明るい言霊も 涙流れる清らかな言霊も 何も持ち合わせてはいないのです だから 笑えること 泣けること どちらも大切にしています