猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

もういい

もういいよ、の投げやりも もういいや、の優しさも もういいの、の憐れみも もういいね、の許しも 声色ひとつで変わるんだってさ 逆の意味にね

心配を食べて生きている

風が止まない。よく警報が出ないものだ。 早々に洗濯物を取り込み、桜が枝ごと飛んでいくのでは…と心配がつのる。 女は、特に母という生き物は、心配を食べて生きている気がする。 心配の種が一粒も見当たらなくなれば、自ら内側に潜っていき種をこしらえる…

生まれた日

あなたの上をわたしの上を 誰かの上を その日は音もたてず通り過ぎる 誰かと祝っても 孤独を楽しんでも その日が音もたてず通り過ぎる 誰かが知っていれば あなたが忘れてしまっても わたしのままに 淡々と その日は音もたてず通り過ぎる いい日だ ろくでも…

モバイルバッテリー

持ち歩き用の充電器が2〜3台ある。 そのうちの1台が、半分だけ壊れた。二口あるOUTの片方が反応しなくなったのだ。 半分使えるのだから、ちょっとぐらい そんな悪魔めいた囁きは、脳内から追いやってしまおう。 すぐにはどうということもなかろうが、やは…

真実

人生斜め読みぐらいが ちょうどいいのさ ランキング参加中詩

今週の出来事

月よう 春色何食べて 火よう 空色何編んで 水よう 桃色花摘んだ 木よう 底冷えぶるるるる 金よう あの件どうなった 土よう まさかの最終便 日よう 春の香いちご味 ランキング参加中詩

月夜

のたのたすぼすぼ 月夜を歩く 散歩なんてもんじゃなく 迷子なんてもんじゃなく 速くも遅くもないリズムで のたのたすぼすぼ 月夜を歩く 春と冬とが手に手をとれば 西から急に雨こぼれ 苦い思い出脳からあふれ 速くも遅くもないリズムで のたのたすぼすぼ 月…

余迷い

絶望と納得を繰り返しながら 終わりを見据えていく ため息の理由は自分の中にあるのだから 一度は取り出しておけばいい 死と忘却が訪れいずれ消えてしまうだろう あんなことも こんなことも 抱えすぎてもしょうがない 見すぎても仕方ない ああそれでも 生き…

散らばる言葉

散らばる言葉を 探りあてたと錯覚して 少しばかりいい気持ちになる そんな過去もあるにはあったかもしれない しかし それではナニモノも世に誕生しないので わたしはここにいるのだろう 錯覚が夢でなくなるときまで ランキング参加中詩

木枯らしが吹いた。 なんとなく、この間ドアから無理やり剥がしたものが影響してるのかとソワソワしたが、そうではなく本格的な冬の到来であるらしい。 たかだか扉一枚分の“冬の入り口”をどうこうしたからと言って、その地方一帯の天気予報になるほど大それ…

愛だけでいい 今、だけでいい

嘘をつくなら にっこり微笑んで フェイクな通知に リボンをかける(すっかり束ねて燃やすのよ) 受け取るのも手渡すのも 愛だけでいい 未来、だけでいい 今日なんていらない 昨日なんていらない 明日を呼び戻せるなら 未来を信じられるなら 愛だけでいい 今…

冬の入り口-3

へろへろと帰宅した。 冬の入り口は相変わらず見つからない。ほんの欠片を見つけては、誰にも知られぬよう空に返すくらいのもので、霜も手の冷たさもその時に一瞬味わうくらいである。 今夜はどうだろう、と若干身構えつつ、ドアの前に立つ。 街灯にキラキラ…

速度

詩人が嘘をつく速度と SNSで嘘が流れる速度と どちらが罪深いのだろうか 時折そんなことを 比べても比べ足りない 紡いでも紡ぎ足りない そんなことを時折 やや真面目に思うのである あ そうだ 冬の入り口は見つけ次第空に返しておりますので ご心配なく

冬の入り口-2

へろへろと帰宅して、いつものようにキーケースを取り出す。 深く考えもせず、定位置に鍵を突っ込みドアノブに手をかけようとして、「おお」と思わず声が出る。 「冬の始まり」がドアノブに貼りついていた。 去年より、だいぶ遅めのお出ましだ。ただ、明日は…

冬の入り口-1

へろへろと帰宅して、いつものようにキーケースを取り出す。 深く考えもせず、定位置に鍵を突っ込もうとして「え!」と思わず声が出た。 このところ、探しに探していた冬の入り口がへばりついているではないか。 灯台下暗し。 お前が隠したに違いない、とよ…

そりゃ間違いなく私なんだけど

月曜が、またきた。 二度と会いたくない。だから、こないで。 わかった、と約束した夜を忘れたのは、そりゃ間違いなく私なんだけど。 月曜が、もうきた。 くるなら1週間前に知らせて、さもなければこないで。 そうする、と誓った声を忘れたのは、そりゃ間違…

探す探している

探す 探している 今こうして半袖…は流石に控えるとして 七分袖のTシャツを選び 薄手のカーディガンを羽織る いつもなら手招きするほど明らかな 冬の入り口が見つからない 造作もない 道を曲がったその向こうだと 詩人が言うので ついうっかり信じてしまった …

狡く迷う

遥かの島で人が燃えて わたしは泣くしかできなかった 遥かの国で大地が崩れ わたしは祈るしかできなかった 誰かの隣であなたが睨む わたしは黙るしかなかった あなたの隣で誰かが消える わたしは見ているしかできなかった ランキング参加中詩

偽物になって

誰も知らない名前になって あたしは歩く 誰も知らない気分を抱いて あたしは笑う 誰も知らない色になって あたしは叫ぶ ほら 偽物はここだよって 探しびとはあたしよって 誰も振り向かない 誰にも見つからない 誰かの真似もしない 元から偽物なんだもの 誰も…

イメージと実感

星に食べられながら、あるいは星を食い散らかしながら命を繋いでいるというイメージを持っており、また実感もある。 それしか出来ない。 なぜなら、この宇宙を出ていくことは叶わないから。余程の“何か“を持ち合わせない限りは。 命をいただく。 いただく、…

秋だけに

眠ることも死ぬことも たいして変わりはないのと 呟く 試してみればとカフェオレ越しに 唆す ふふん、昼寝は好きだわよと ニヤリと返して あなたって極悪人ねと 空を仰いだ 生きることも死ぬことも すっかり飽きたなぁ なんてね 秋だけに? そう、秋だけに …

いつかの「ひとつ」いつかの「わたし」

ひとつ持っていれば済むのだが あえて三つ四つ持つことにして 並べたり 使い分けたり いくつかは失くしたのに ずいぶん前の「ひとつ」が残っていて それはたぶんわたしが死んでも (のっとられない限り) ふらふら漂い続けるものなのだろう いつかの「ひとつ…

どようびどこまで

どようびどこまで打ち明けようか こっそりタバコをふかしたこと? それともワインを舐めたこと? どようびどこまで打ち明けようか こっそりアイスを食べたこと? それともお鍋が焦げたこと? どようびどこまで打ち明けようか こっそり××××なくしたって それ…

そいつ

そいつは生真面目な星喰い屋 惜しげもなく暮らしぶりを晒す 見る者が興味より心配を大きくするほどの 勘の良さを呪う 彼が嫌いな自分を呪う 単語ひとつで 「こいつは俺とは合わねえや」 瞬時にわかってしまうんだ いやいや待てよ 会えば印象も変わると言うで…

とびきりの

つくのなら とびきりの冷たい嘘を 騙すなら とびきりのやさしい笑みを 差し出すのなら とびきりの甘い言葉を 伝えるのなら とびきりの正直さを ランキング参加中詩

たいへんよくできました

悲しみを読み解く方法 悩みを生む術(すべ) 憎しみの隠し方 愛に鈍感になる技術 嫉妬の削ぎ落とし方と 跳ね返し方 ランキング参加中詩

確信

布を裂き紙を裂き ガラスを引っ掻いた そうまでしてようやく 「今日も生きてる」 そう確信する というよりどこかで絶望することに 安心を覚えるのだ 手放すことは日常になり 入れる知識は邪魔になり 乾いたり潤ったりしながら いずれ腐っていくものらしいが …

詩人は正直すぎる嘘をついた

今日だけ正直にいられたら あとはもう どうだっていい なんてね ランキング参加中詩

空を拾う

慎み深く空を拾う 用心深く開く傘は 僕と外界を程よく隔ててくれた 思慮深く色を集める 辛抱強く重ねる言葉は 僕と心を程よく乖離させた 用心深く体を重ねる 嘘をつく理由なら 僕ときみが出会った言い訳ぐらいには できるだろう ランキング参加中詩

雨の午後は恋の前ぶれ

小狡さと愛らしさは 紙一重なるかな 汚(けが)れと草臥(くたびれ)も また 意味も意地も同時進行できるくらいに 曖昧な顔を装い 嘘つきなのは救われたいからなどと もっともらしくつぶやいた 晴れた朝は雨の前ぶれ 雨の午後は恋の前ぶれ 恋は別れの前ぶれ 生…