へろへろと帰宅して、いつものようにキーケースを取り出す。
深く考えもせず、定位置に鍵を突っ込もうとして「え!」と思わず声が出た。
このところ、探しに探していた冬の入り口がへばりついているではないか。
灯台下暗し。
お前が隠したに違いない、とよく言われるのだが、本当に詩人の住む家で見つかるとは。
刺激せぬよう、用心深く鍵を突っ込む。
指先がひんやりした。風もないのに。
いずれはその辺の雲に溶けてしまうのだろうが、何はともあれ、ようやくこの暑さも人々に忘れ去られていくことだろう。
今夜はさつま汁にするかな。
詩人は、もう少しだけ冬ごしらえを進めておこうと決めた。