猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2016-08-01から1ヶ月間の記事一覧

誕生日

誕辰の にぎわひ遥か夏深し

待ち望んだ涙のほとり

ひし形の山の中 森はもう三角で つっかい棒の空はふらふら 待ち受ける楕円のほとり ひし形の山の上 海はもうまんまるで やっかい払いの空でふらふら 待ちくたびれる命のほとり ひし形の山の肌 月はもうやせこけて したり顔の空もふらふら 待ち望んだ涙のほと…

あざとさのすすめ

やさしさを粧い 素直さを装い 狡猾さを隠し うつむいていましょう いくつかは あなたを際立たせ いくつかは あなたを魅力的に いくつかは 瞬間的なベールとなるでしょう

過去

吹きこぼれながら あなたと交わしたものは 拾い集めることができなくて かき混ぜられるうちに わたしが失ったものを 慈しむことができなくて 焦げついていても その日は気づかないもので 悔やむしかできなくて

初秋

ビルも影も すっかり空に突き刺さり 誰かが拾った名残りの夏は すっぽり体を覆ってく 高速道路も風も ひっそり雲を吹き飛ばし あたしの落としたいつかの秋は うっかり心を優しく叱る

パラソル・サンド

いちまい にまい からしマヨぺたり さんまい よんまい ふんわりキャベツ ごまい ろくまい はなうたパストラミ くるくる巻きまき お皿に並べ あなたとにこにこ いただきます

帰省

幼子の 寝顔を抱きて里帰り

諍い

すれ違う 言の葉ひらりうろこ雲

憧れ

近づいても夢 遠くても夢 この星の雨は いつだって悲しく あの人の涙は いつだってずるい 近づいても夢 遠くても夢 溢るるほどに夢

サラダ

レタスのフリルも愛らしい サラダビーンズたっぷり盛って ブラックオリーブちょっと添え オニオン刻んで パセリをぱらり ドレッシングはノン・オイル あなたの嫌いなヘルシー・サラダ 嫉妬と一緒にいただきます

ごろごろ

氷がごろごろ出来上がる 頭の中 手のひら 秘密のSNS 氷がごろごろ積み上がる 足元の そのまだ奥深く 隠した日記帳 氷がごろごろ流れ出す 罪深く 慎みをもって 記憶の片隅

猫の目変わる目

猫の目変わる目 くりくりお目々 遊んで眠って食べたらこっくり 猫の目変わる目 キラキラお目々 またたびほろ酔い思わずがぶり 猫の目変わる目 くるくるお目々 雨の日うとうと膝の上

わたしが食べた街の名を

わたしが食べた街の名を 今では誰もが口にする 秘密だけれど隠しちゃいけない だいじなだいじな街の名だから わたしが食べた街の名を 今では誰もがためらって 忘れたいけど隠しきれない 悲しい悲しい街の名だから わたしが食べた街の名を 今なお誰もが噂する…

摩訶不思議

摩訶不思議なる 街の人は 曲がり角など気に留めず 下り坂など気にもせず 飛び越え乗り越えまた消える 摩訶不思議なる 街に住み 四つ角などもしたり顔 西も東もなくなって 飾って繕いまた消える

あなたに触れた

あなたに触れた 心のままに はじける砂音 涙が熱い 透けるような肌 強い眼差し あなたに触れた 記憶のうちに 焼ける西風 涙が青い 抱きしめた心 遠いからだ

ぴりびわり そわそろり

ぬめぬめ生きて ぬるぬる遊ぶ おめおめ帰れば 海も空も青い 用心深くぴりびわり 誰にも言わずにそわそろり ぬめぬめ歌って ぬるぬる笑う おめおめ歩けば 水も風も甘い あのこに会ったらぴりびわり なんにも言えずにそわそろり 月にも頼れずぴりびわり 陽にも…

真夜中のドライブ

走行音 遠雷にも似てきみ想ふ

線路が軋むたびに 忘れられるなら 何度でも旅に出る 置きっぱなしのうわさと お手軽な友情は 今も健在だろうか 心が軋むたびに 逃れられるなら 何度でも夢を見る かぶり続けた仮面と お手軽な友情は まだ健在だろうか

シェフ

あなたはわたしを あらわにすると 優しく手を添え 細かく細かく刻むのです それから躊躇もせず 業火になげこむのです ひとつになれる歓喜と熱で 打ち震えるのを あなたは冷たく眺めていました やがて消えてしまうのに あなたの中で

夏雲が浮き足立つ頃 少年は夢を覗き込む 煮えたぎる鍋の中 何もかも生煮えで 悲しくなって目がさめた 夏雲が浮き足立つ頃 少年は夢の淵に触れる かき混ぜられる鍋の中 何もかもとろけすぎ 可笑しくなって目がさめた 夏雲が浮き足立つ頃 少年は夢を喰む この…

ふわふわ

ふわふわ猫の子 足首そろり むにゃむにゃごろごろ 朝はまだこない すやすや猫の子 膝の裏ぴたり にゃあにゃあごろごろ 夢の中でさんぽ ふわふわ猫の子 お腹にころり ミィミィすやすや しっぽで返事 ふわふわ猫の子 いつかの夕べ 虹の橋 雲の上 きっとまた会…

台風

三角に 空を切りとる野分けの音(ね)

秋ひとつ

洗面台 くつくつ揺らぐ夕陽かな

鼻歌

乱れ調子の鼻歌も きみにかかれば たちまち極上の調べになる ちょっとふくれて きみは調子の外れた鼻歌を奏でる 僕たちはいつまでも笑ってられた 乱れ調子の鼻歌 もっとリクエストしておけばよかったね あの夏で聞き納めだなんて 思わなかったから きみも 僕…

最期の日まで

その日まで 一緒にいる ずっとずっと そばにいる じれったくて 大嫌いになって 時々やめたくなったり 離れたくなったりする だけど その日まで そばにいる ずっとずっと 一緒にいる 一番近くて 一番遠くて わかりあえない 私と私 だから その日まで ずっとそ…

交響曲

森の子 空の子 命が満ちて 世界の切れ端 気取って握れば 音符も休符もどんどん右へ 体を巡る恋より熱く 風と光が吹き抜ける

豪雨

雨と 雨の 雨は 雨ぐるみの 雨あとを 雨から 雨へ

雨が降っている 大粒の雨が降っている あの月からも この星からも 滝のように流れ出して 息苦しいほどの 雨が踊っている

雪が降った

雪が降った いてもたってもいられないほどに 真っ白な雪が降った 最高気温は今日も更新され 不機嫌の飼いならし方にも 慣れたのに 雪が降った いてもたってもいられないほどに 真っ白な雪が降った まるで 蝉時雨のように 雪が降った

凍結

置き去りにされても 忘れ去られても 消える定めでも 絵に宿り フィルムに宿り 映像に宿り ひとときの死を忘れ あなたはそこにいる