銀のつぶつぶが こぼれていったら やっと 心の熱がひいた そもそも 自分自身が銀色のかたまりみたいなもので それが急にグリーンを育ててみたりもして どこかでバランスが崩れたのでしょう、と 主治医は血液検査を細かくチェックしながら 穏やかに告げた 処…
親しみを込めて、呼ぶ おかゆさん 弱っている時に とてもとても助けられる 梅干し、佃煮、やわらかい魚の煮物、湯豆腐 少しずつ少しずつ おかゆさんと口の中へ 一度にたくさん食べられない時も 一度にたくさん動き回れない時も 寄り添ってくれる食べ物は必ず…
久しぶりって すごいなと思う 体調の変化、食の好みや量の変化 ここ数年で多分 一番の「久しぶり」だ 気がつかなかったこと 案外たくさんあって 久しぶりは悪いことばかりじゃないと 実感している
電話案件が久しぶりに発生し 時系列でメモを作る 闇雲に伝えても互いにいいことないから 挨拶から始まって、世間話は今回に限りなしで 丁寧にやわらかにしっかり 主張はして引くところは引いて 大丈夫 いつも顔を合わせているのだから 大丈夫だ
薄切りパンをカリカリに焼いて そこにプロセスチーズとハチミツを バランスよくサンドする 子どものとき熱を出すと 大抵母親が甘い紅茶と一緒に 作ってくれていた 少し溶けかけたチーズと少しのハチミツ そして甘い紅茶 病気の時にでも食べられるものは 限ら…
お盆らしきことは 何もなく ただただ残暑が通り過ぎる 倦怠感は居座ったまま 冷凍庫のバニラアイスについて 思いを巡らせれば 無性に睡眠欲が湧き上がって そうだ 今日はゆっくり休むとしよう
空の広い街だから よく覚えておきなさい とても 何よりも たいせつなこと いつかあなたを 助けてくれる 落ちる空のことは しばし忘れて 広い空のことだけを 思っていなさい 今日も明日も
たまに恋する 時折愛する しばしば妬んで 時々憎らしい
ハニカミ屋で 恥ずかしがりやで 人目がすごく怖い そんな私を誰も知らない
コミュニティは あまり得意なほうでなく それでも何かしらに属したり属していたり そんなものなので 全くのひとりになれるのは この世では寝ている間だけである ま この世、というコミュニティだと考えれば 逃げ場など星の上にはどこにもないのだが 信じるか…
たっぷりのコーヒーを マグカップでゆっくり飲みたい そんなことをようやっと思うように なった 秋の扉はまだ開かず 夏の扉は必要以上に大きく開いたままで 内も外も燃えたぎるような 熱を 甘んじて受け入れる たっぷりのコーヒーを マグカップでゆっくり飲…
服用中の薬に 少し眠くなる成分が入っているらしく 意図せず早寝するようになった もう深夜だろうと なんとなくトイレに起き なんとはなしに時計を見て 日付も変わってないことに クスクス笑いがもれる 絶対安静ではないが ゆっくりしたほうが治りは早いに決…
孤独だと 言葉にできない想いこそが 真の孤独 孤独だと感じる気持ちは さびしいが誰にも理解されないという 絶望から栄養を得て 育つのだ よくよくの哀しみから 花を咲かせるのだ
家族の用でしか足を踏み入れたことのない場所に、自分の用で通っている。 親子でお世話になっている(二人ともいい大人だ)というわけだが、不思議な縁が縁を呼んだとも言える。 何もなくても、通う。 何かあっても、通う。 拠り所という言葉がしっくりくる。…
ひとすじの秋色を 灼熱に見いだしては 汗だくなのに安堵する 多分きっとあと少しで あの花が見頃を迎えるのだ ひとすじの秋色を 灼熱に見いだしては 寂しいけど安堵する 多分きっとあと少しで あったかいスープが嬉しくなるのだ
ホットサンド作りが好きな男と 暮らしていたことがある 何かというと キッチンに立ち野菜を刻み じゅう、と卵やハムを適当に炒め 6枚切りのパンに 色とりどりのおかずを挟み ぎゅう、とホットサンドメーカーの蓋を閉める すぐにいい匂いがしてくるが 「まだ…
花火は先っぽだけかろうじて 祭囃子はすっかり静かになって 大人の怒号も 子どもらの笑い声も どこかへ消えてしまった 花火は先っぽだけかろうじて 祭囃子はすっかり遠くなって 大人の怒号も 子どもらの笑い声も どこにも見当たらない
おむすびおむすび よっといで おむすびおむすび もっといで なにいれよ なにのせよ お吸い物かな麦茶かな おむすびおむすび よっといで
あの人と過ごす土曜日は あの人を忘れていられた土曜日を どこかへ追いやって 後悔の色に染めていく 永遠ではないし それでも自分を責めたりもする あの人と過ごす土曜日は あの人を忘れていられた土曜日を 遠くへ追いやって 後悔の色に染めていく
朝もはよから受けとる通知は 「熱中症アラーム」 または 「雨雲が近づいています」 たまに 「お荷物お届け」 だったり 今日は誰にも会わない日だったなぁ …と嬉しいような淋しいような 気持ちの時ほど なぜだか予定を吸い寄せる それもまた よき日に違いない
ものすごく久しぶりに 自分の用事で調剤薬局に立ち寄る このところ、家族の用ばかりで 自分ときたら、風邪薬か湿布薬ぐらいしか縁がない (ある意味それは幸せなことなのだが) ものすごく久しぶりに 自分の用事で調剤薬局に立ち寄る マイナ保険証の機械にび…
明日のことは 見えていないけれど 1000年後より近しい そうであってほしい
脈絡もなく 天気雨のついでに浮かび上がるような そんなのが いい思い出なんだよ
自分の世界をしっかり持っている 自分の世界でしか生きていない 自分の世界があれば 自分をしっかり持っている 自分を誰にも譲らない わたしは どれだろう あなたは どうだったのだろう
何やらベトベトして コバエが飛んで 蚊取り線香の匂いに辟易する 扇風機の風を気にしながら 何かを組み立てて泣きたい気持ちになっていた 学校はよ始まらんかねえ、ひとりにもなれん 男親にも女親にもため息つかれ 受け流すことを自力で覚えた 少女のあたし
オテル、オピタル、アルモニ… セミの声に紛れていくだろう 丁寧に繰り返す 声に出してみる 種を蒔くなら自分の中にも 実を結ぶことを期待しすぎず オルボワール、ボンジュール、メルシ… 例え下手っぴだと指差されても 例えひとりよがりと嘲笑されても セミの…
ゆっくりと1週間が始まったけれど あくせくと1週間が終わっていく 始まりは火曜日だった 終わりは金曜日だった いつもよりずっとゆっくりで いつもよりずっとあくせくしてた 「いつも」は「いつも」じゃない顔をして 「いつも」だと言い張って通過する 「…
栞を挟めど挟めども あれもよきこと これもよきこと 忘れられない道の程
猫でいてもいいのに 人でいてもいいのに どちらかを選べなかった命で 生きながらえている 猫を選んでいたら 人を選んでいたら どちらかを選べなかった命は こうして孤独と寄り添うしかない 100年ののち 1000年ののち 終わりを見るだろうか それともまだ 見届…