猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

niroさんによるイラストACからのイラスト

リボンをかけても魔法をかけても

てふてふさんによる写真ACからの写真

ショコラオレンジの夕闇-3

変わり続ける風景の中 茫然としていると いつの間にかすぐ近くに 猫そっくりの生き物が立っていた 魔法が見える人よ ここにいてはいけない 猫はそう言うと ふかふかのまあるい手でうながした この道をまっすぐ行くと ショコラオレンジ色の駅があります すぐ…

やがて返ってくるものについて-A

fujiwaraさんによる写真ACからの写真

如月

ショコラオレンジの夕闇-2

ショコラオレンジの夕闇に 目が慣れると 月と海の間には なつかしい生き物しかいなかった むかし 猫そっくりだとか 森の奥の三つ目 と呼ばれていた いわゆる もどき族である 人らのようにすっくと立ち上がり 人らのように言葉を話す たまに魔法を使い 空が落…

冷たい耳

すっぽりかぶったはずの 毛布がずれて すっかり耳が冷えている まだ 冬だったんだと 残念さの混じった安堵が 心地よかった 耳の冷たい男は 嘘つきなんだよ 冗談めかして笑うあなたを ふと想ったのは 何年ぶりだろうか 雪の日曜 好きなだけ怠惰になろうと 僕…

空洞

燃え尽きただって 芯なんて そもそも持ち合わせなかった 誰かへの憧れも いつか真似でしかなくなって 己の空洞に身を横たえる 失っただなんて それこそ そもそも手に入れようともしなかった 自分磨きも いつか日常でしかなくなって 己の残像から目をそらす

保有ポイント

期限が近づいてきています ⚫️⚫️ポイントお持ちです 名義だけを置いている某サイトから 数ヶ月に一度 そんなお知らせがやってくる 系列店が界隈になく 使える場所とて思いあたらずで ⚫️⚫️ポイントとやらは 大抵そのまま無効化されていく 消費もされず 繰り越…

心を診る猫の医者-5

仕事はこなしているし 同僚とも上司とも 関係は良好 恋人はいつもハグしてくれる なのに世間の視線ってやつが 時々痛くてたまらない日 叫び散らかしたくなるんだ 頭を抱えてしまったその人に 心を診る猫の医者は こんなことを尋ねます 数を逆に数えたことは…

もしかしたらと

来ないはずの人を それでも もしかしたらと待っている ここにはいないよ 仕事やめたみたいよ あの国にもいないって SNSのアカウントも閉鎖されてるよ 星のどこにいても 見つけられる自信があったのに 星のどこにいるのか 見つからない事実を突きつけられる …

心を診る猫の医者-4

お腹がちっとも空かない日と お腹が空いて仕方ない日が あるんです いつも同じリズムでいたいのに なんでかな 心を診る猫の医者のもとに 不安げな様子の 少女がやってきました その子の体内に 痛いところや苦しいところ 腫れや傷がないのを よくよく確かめて…

細氷(ダイヤモンドダスト)

図案屋さんさんによるイラストACからのイラスト

I・TSU・KA・幻・想

隙間の存在が大事だと わかってはいるんです でも 詰め込むだけ詰め込んでおけば いつか役にたってくれるんじゃないかって ほら ちびた鉛筆も 切れたネックレスも あいつの指輪だって こうやって並べておけば なかなかさまになってるじゃないですか 破れたレ…

ほんの3秒

実はね 小さな不安や心配事には もう慣れて そばを通り過ぎるまま 放っておくことにしたんだ なんかこう劇的に ものすごぉく 心が軽くなるとか とぉっても 体が動きやすくなるとか そんな風ではないにしろ あぶくのようなものなんだもの ほおっておいても あ…

ショコラオレンジの夕闇-1

本当は 何の前触れもなく 混ぜられて溶けても よかった ほかの命たちと同様に 空は落ちるのを諦めた そのかわり ショコラオレンジ色の夕闇で 星を丹念に覆い始めたのだ 北の半球も 南の半球も 分け隔てなく塗り残しなく ショコラオレンジ色に染まるように 空…

心を診る猫の医者-3

会ったことはないんだけどさ 羨ましくって 妬ましくって こっそりわかんないように 黒い噂をあっちでもこっちでも流して 傷つけてやったら どんなにかスーッとするだろうか 不幸のどん底に落ちちゃえばいいんだ あんなやつ そんなことばかり思って 夜中にニ…

殺「心」者たちへの手紙

amiyaoさんによるイラストACからのイラスト

選別

愛しやすいように 選別しやすいように 似た姿に創られたのだと きみは呟く では こうも言えるのか 憎みやすいように 切り捨てやすいように 似せ そこまで 残酷な言霊が きみのキスで溶けていく 創造主は創造主 ただそれだけよ 必要以上に良いわけでも 想像以…

猫とキャンディーと少女

あたしはこの日も ママお手製の 甘酒キャンディーを ほおばってた ちょっとだけ中のほうが 固いけど どこか懐かしくて大好きな味 電車はすぐには来ず 友達は別の路線で帰っていったので しばらくは こうして雲を数えてるの ふと ホームの端っこで エプロン姿…

langue de chat

いつまでもふさがらない傷を 一心に猫が舐めている ざらざらのラングドシャ 恋の苦味を消しておくれ いつまでも消えない傷を 一心に猫が舐めている ざらざらのラングドシャ 恋の痛みを癒しておくれ いつまでも覚めない夢で 猫と一緒に丸くなる ざらざらのラ…

ダンシャリ'ing

タイムラインをとことん追うことに 必死になっていた日々を 微笑ましく思い出しながら 久しぶりに 休眠状態のアカウントにインする もともと 誰かとの絡みも少なく ただ置いているだけであるから 劇的な増加も減少も見られなかった 少し変わったのは 断捨離…

始めてはみたものの

心を診る猫の医者-2

誰にも会いたくないんです みんな滅びてしまえばいいんだ そうすれば 愛が何か 正義が何かだなんて 悩まなくてすみます 心を診る猫の医者は その人の話を聞き終えると ううううん!と 気持ちよく伸びをしました ほら あなたもどうぞ 困り顔しながらも その人…

行間

心を診る猫の医者-1

留守電の設定だけは 機種変しても得意で 有料のものから無料のものまで ささっと設定する 気持ちの安定には それが一番いいでしょうね ある日 心を診る猫の医者に そうアドバイスされてから 僕はずっとそうしている 用のある人間とは メールかLINEで繋がって…

誰のせいとは言わないけれど

プルルと震えるスマートフォンが 憂鬱な時間を連れてくる 大抵は連れ合いから 「迎えにきてよ」の ド迷惑LINE 冬の午前2時 人目を気にしながら タクシーに飛び乗った 行き先は ほんの近所だったり 見たことも聞いたこともない街だったり 救急病院だったり(…

衝動と執着

死への衝動は甘く 生への執着は苦く 交互に心を支配する 明日どちらに傾くかは 風模様かもしれないし 空模様かもしれない 塔の上のラプンツエルは 髪を編み続けて すっかり待ちくたびれたから 明日は きっとどっちかに決めちゃおう いつまでも そんなことを…

孤独は透明である

哀しいのか さびしいのか 情けないのかは わからなかったが 孤独に近づいているのは 慥かであった 孤独はそのどれでもあるようで 孤独はそのどれでもないようで 舌の上にのぼるうちは おおよそ真の孤独ではないのである 殻を捨て膜を破り 分子の奥深く眠るよ…