2022-01-01から1年間の記事一覧
地下鉄は混んでいた。 数年ぶりに週末とホリデーシーズンが重なったためか、陽気な空気に満ちている。筆者もそこに加わった。 混雑を見越して極力荷物を減らしたので、立ちっぱなしでも苦にはならない。 久しぶりに、本当に久しぶりにリアルなライブに出かけ…
きみに会う夜、少しだけ無理をする 肉体から黒い感情を切り離し 心から暗い景色を追い払い ちいっと高価な靴を履く きみに会う夜、少しだけ無理をする 背筋を伸ばし柔和な笑みを瞳にたたえ あたたかな単語を口の端から さりげなくこぼす きみに会う夜、少し…
眩しいと寂しいは よく似ている 空も涙も海も 同じ成分なのに誰も 多分気がつかない そうだねそんな ことと同じだ あったかいと愛と幸せは 似ているより同じ だとあなたは信じているのかい 今も頑なに
悩みを少々希望をひとふり 悲しみ多めの夢をさんふり 闇が満ちても光はそばに なにもかにもが愛しい命(イキモノ)
前世よりもっとずっと前、冬眠する生き物だったことがある。 などと口走れば、たちまち生きづらくなる世の中だ。 見えないものは今日もそこかしこに満ちているというのに。 それはともかく、冬眠体質を過去から受け継いでいるという感覚は、確かにある。 晩…
祈りを灯す心のうちにも 詩(うた)流れ 降る雪降る闇今日も抱く
“会いたい人がいる” なんのヘンテツもないスケジュール帳に なんの気なしに書いておいた その人の名前とともに 去年果たせなかった約束を果たしに 行けますようにと 師走になって 時が駆け抜けて 我を忘れそうになる頃 届いた知らせに頬をつねってしまう 会…
人の心ほどではないに違いない。 絡まった鎖を不器用にほぐしながら、女は思う。 時を経ても、傷は広がり続けるか深くなる。 忘れられないのはこちらだけだとしてもだ。 納得と疑念がよりよりより、とねじられひねられ見えない枷となっているのは、誰より知…
からすや猫にそういった性質があるように、キラキラしたものが好きだ。 「しまい込んだまま忘れてたの。この先使うこともないだろうから差し上げるわ」と、知り合いからアクセサリーをいただいた。それで初めて、キラキラに魅せられている自分に気がついた。…
少し先の未来を疑って 目の前の夢を見失う うんと前の過去にしがみついて 目の前の彩りを見失う 全否定から入ってもいいじゃない それはあなたの軸になる 全悲観が前提でもいいじゃない それがあなたの背中を押す ボジティブもネガティブも共に手をとり 深く…
昔々のある雨の午後。 あるアーティストに相談にのってもらったことがある。 かれこれ10年は経つだろうか。 作品には物語のような不思議なタイトルがつけられ、各地で個展が開催され、筆者の住む街にもその人はやってきた。 会ってみたい。 不思議なタイトル…
もうそれほど残ってはいないでしょう シワシワの欠片(だったもの)を差し出される あの方の顔なんて忘れたわ、と微笑んだ あなたが持っていたいならそうすればいいのだし あなたが手放したいのならそうなさい もっともこれじゃあ 喰い尽くされ搾り尽くされ…
きみの鼻が冷たくなって 自分でもわかっているのか ぼくの手の中に顔をうずめる 冷たいな、冬だからなのかい きみは答えるかわりに喉を鳴らす ここが指定席なの、と言わんばかりだ 手袋をはずせばいつの間にか きみのおもちゃになって あたしにくれるんでし…
人生で何度めかの 執着が強すぎる日が訪れて 電車であたしはキュッと唇を噛む わかってるから わかってるのに そんなどうでもよさげな いつもは受け流してしまう空気感が いつまで経っても現れない あたしは電車の速さに追い立てられ 大人の心と子どもの心を…
闇を祓う 煤を払う 露(つゆ)はらい、厄払い 暑気払い、やっかいばらい 売り払う、出払う はらいのける なんとも偉大な言葉であることよ
気がつくかつかないか 全ては多分きっと そんなふうに巡っている どちらに流れても転んでもおかしくないことは この世にあふれているのだし 恋も悲しみも その中にいるときは案外何も 気がつかないものだ 間違っているとも正しいとも 幸せか不幸せだとか 通…
仕事おわりに、ちょっといい? うん、待ってる 短い通話のあと 男友達が訪ねてきた サコッシュ?いいね ふふん、君も買いなよ そうだねえ お土産と称して 封を切ったミニクッキーを押しつけられた もう!新幹線の中で食べちゃいなさいな 君のことを思い出し…
もう使わないだろうか もう捨てるだけだろうか 彼方へ連れられていくことも 彼方から呼び戻すことも できないのに 時々尋ねてみたくなる ほんとは好きでそうしていたのだろうか ほんとはそれほどでもなかったのだろうか 彼方で語り合うことも 彼方から連絡を…
冬のケガは治癒に時間がかかる。 心も同じく。 乾いては裂け広がりやすく、 いつの間にかタラタラと流れ出る。 傷つけたりしない、誰かが言う。 だが、 感情爆発のタイミングは不意に訪れ、 庇うつもりの暴言もまた世界にあふれている。 冬のケガは治癒に時…
電波の届きにくいその部屋で あとどのくらいですかと尋ねた 命が ではなくて 死が でもなくて ましてや生でもない ただ尋ねたかったのだ 応える声を確かめたかったのだ 電波の届きにくいその部屋で あとどのくらいですかと尋ねた 時間のことでなく 空間のこ…
わたしを撃ち落としてくれないか お前の鋭い眼差しで わたしを撃ち落としてくれないか お前の甘い言霊で 人知れず 闇歩き 我知らず 光り疲れ ならばこのまま消えてしまえば わたしを撃ち落としてくれないか お前の気高い優しさで わたしを撃ち落としてくれな…
悲しみを生きるか 哀しみに沈むか 喜びを生きるか 喜びに溺れるか どうあったとしても短い 時を泳ぎながら 深く想いなさい 強く祈りなさい 命を人を愛しなさい
捨てる捨てない さてるさての 人らは知恵に邪魔され 人以外の命を羨む 忘れる忘れない はてりはてむ 人らは記憶に邪魔され 人以外の命に憧れる 冬がひらけば秋は散り 風を束ねて待つだけだ 巡る季節を待つだけだ
自分のものでないものを許可なく使う。 引用以外で。 それらは控えたほうがいいのではなかろうか。 正解や正義はそれぞれだとしても。 あとは、少しだけ俯瞰を意識する。 あまりに過剰だと心が苦しくなるから、そこは加減して。 お作法と言っても、堅苦しい…
宇宙を編み続けるのなら 時間軸があればいい 宇宙が膨張し続けるのなら 夢だけがあればいい 苛立ちを隠すなら 微笑みの奥に 愛を忍ばせるなら 瞳の端に 好きと嫌いが混在するたび 無防備な自分を突きつけられるのだが それすら糧に 今日も生きるのだ
秋の始まりの頃のようだ。 いつもの時間、いつもの場所。待ち人(待ち猫?)は姿を見せてはくれない。 彼の特等席に陽があたる。そして、その時間はどんどん短くなっていく。 冬の入り口。 彼も私も会いたいのに会えないから会わない。 とびきりのいい声が、…
人を嫌うのは簡単 人を好きになるのは偶然 人を愛するのは時々億劫で 人を憎むのには体力がいる
不安を感じない日が 珍しく数日訪れた 気づいた途端 不安になる 正しいのだろうか 間違っているのだろうか それは 正解がどこにも見当たらなくて そして 不正解だと決めつけることもできなくて 不安に気づいたとき 少しだけ自分に刃が向かうから 人は怒った…