猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

いつものように靄がかかった 凄惨な出来事にも 悲しい知らせにも 心ない噂にも 感情が引きずられず すむように いつものように靄がかかった はしゃいだ出来事にも 胸おどる知らせにも 嘘のような真実にも 感情が乱高下せず すむように

魔-2

これなにかねえ きみはぼくからとりあげた 紅色の実を齧り続けている 美味いのか よかったなと言いたいが あいにくきみに言葉を とりあげられた 胸の奥までがらんどうで 恋とはどんなものかも思い出せやしない これなにかねえ きみはぼくからとりあげた 黒い…

誰かを想ふ

後悔しないこと 見返りを求めないこと 一方通行でも 空を切っても その風があなたを傷つけても 怖がらないこと

終わる夏

終わる夏 ひとの行きかふ通学路

きみの好きなフレーバー

きみがあんなに喜ぶから 意識の隅にでも 刻まれたのだろうか 小さなカップアイスを買うのに 躊躇はなかった かぼちゃの絵柄と コーヒーの絵柄をひとつずつ 手を合わせたあとは 「悪いな、溶けちまうから」 答えはないとわかっているが そう声をかけて冷凍庫…

親子

蹴落としたいほどの愛情と 抱きしめたいほどの嫉妬と バランスよく編むのが当然だと 彼はしたり顔だった それだから 通り一遍でしかない親の顔ではないかと 不器用さを前面に出しているだけではないかと やすやす見透かす子の自分とは さぞや折り合い悪かっ…

ぼくと猫

ぺっこんとふたをあけ ごっくんと飲み干した きょっとんと丸目玉 猫は空模様より生真面目だ こっとんと置いて がったんと立ち上がる びっくんと耳動き 猫は心模様より生真面目だ

知りたい 見たい 遠くからでいい 近ければなおいい 触れたい 声が聴きたい 同じ空間にいたい そばにいたい 誰にも渡さない

ある日誰かが

交わした約束を 覚えていたわけではありません ここに来たのは ほんとのただの思いつき 今日は夕陽が綺麗らしいと 猫が教えてくれたから 交わした約束を 覚えていたわけではありません ここに来たのは ほんとのただの気まぐれで 素敵な風が吹く日だと 思い出…

ななしゆび

ななしゆび さけて涙も枯れてゆく

風磨きのうさぎ−7

水でおおわれた星が 外側からさらに水におおわれて ぷかりぷかりと 揺れているのが見えました 小さな小さな青い星の 氷という氷がとけて そんなことになったらしいのです 風の譜面をとりだして 書き換えるように 星の行く末を 宇宙の摂理を 力ずくで人らに知…

詩人屋さんのひとりごと-j

四つもなくたっていいんじゃないの あのひとは そんなことを言ってた 少ないほうが考えすぎなくていいからって 二つぐらいでちょうどいいんじゃないの あのひとは そんな風に笑ってた 二択でいいから楽だよって 四季がなくなりそう 空の心配しかできなかった…

ほんの少し

ほんの少し 空が高く 蝉時雨が遠く 朝は彩られ ほんの少し 風がやさしく 光がやわらぎ 人が微笑む ほんの少し 月が丸く 夜が深く 秋は近くに Photo by Kengo Shirahama(白濱賢吾 / ストレンジドラマ) ずいぶん前に、白濱さんご本人から頂いた写真です あり…

くぐり戸の

くぐり戸の 猫と目が合う月夜かな

空を拾う毛糸屋さん

いつか 空が見たことのない赤に染まって 雨でも雪でもなく 空そのものが私たちの上に降りそそぐ いつか それはやみ いつかまた それは始まり 続いてはおさまり おさまっては始まる 空自身が呼吸することを思いだすまで 猫たちの間でささやかれていたことが …

なにげない夏

溶けかけた アイスにべそかく わが子かな

詩人屋さんのひとりごと-i

マンションの階段を どんどんくだって行くと 首が痛くならないほどの高さの 扉があり 住民たちは 何気なくそれを開けて 車や自転車で出かけたり 暑いですねえと笑顔を交換したり しています 内側からしか開かない 外側からは鍵がないと開かない 人の心も ど…

世間話〜トーザ・カロットの人々

空がすっかり高くなりましたねえ ほんとにねえ あんなに紅く低かったのがうそのようだわ あの カケラってやつはまだ落ちてくるんですか ふふっ まさか 人らに使いやすいようになるまで そりゃあ時間がかかるんだもの いま出回っているのは もうずっとずっと…

残暑

さまよひて 星うらうらと夜蝉鳴き こころんさんによるイラストACからのイラスト

なつやすみおとなそうだんしつ

「ハイ、次の方」 ええと こどもの頃からの悩みなんですが どんなに逃げても追ってくるんです 夢の中でも夢から覚めても 恋人といてもひとりでいても さびしさからのがれるすべはありますか 「逃げるから追ってくるのでは」 「そもそもあなたの中にあるのに…

床に散らばるあなたの器

床に散らばるあなたの器を ほうきとちりとりで集めながら やっぱり中身は空っぽなのねと イタズラゴコロが目を覚ます 二度と元には戻らぬように カケラをひとつ隠しておこうか それとも 少しはマシになるように 感情の壺とやらを美しく磨いておこうか あなた…

月が歪むと君が言う

月が歪むと君が言う 雲が落ちると僕が言う 花も去ったと君が言う 鳥も消えると僕が言う さびしい星だと猫が言う 空がないのと犬が言う うさぎの磨いた風だけが どこかに雨を運んでる 月が歪むと君が言う 雲が落ちると僕が言う 花も去ったと君が言う 鳥も消え…

結論

結局のところ 共喰いでもなければ 対等なわけでもないので 喰い尽くす前にどちらかが滅びるように できているのだろう 自分で自分を喰いつくしたほうが ずっと幸せだろうに 恋人はふふふと笑って 僕の頬に唇を近づけた

愚痴

喰うか喰われるか そのどちらでもあることに わたしらは案外と無頓着だ 空が不機嫌であれば 喰われていると嘆くが 果実で喉を潤せば 喰う喜びに己を見失う 喰うか喰われるか そのどちらでもあることに わたしらは案外と無頓着だ 星に寄りかかることでしか 生…

ここではないどこかで

あしたが来ることを疑わずに 眠ったままになりました あなたは目を覚ますことを もう忘れてしまったから ここではないどこかで また会えるまで 指折りかぞえて待っています あしたが来ることを疑わずに 眠ったままになりました あなたは目を覚ますことを も…

白い猫と黒い猫

白い猫と黒い猫が しっぽをからませたぬいぐるみが とてもとても好きだった そのまま抱えていては 注目の的 バッグに入れれば ハンカチもポケットティッシュも行き場をなくす 車なら同乗者の不興を買う それでついには ぬいぐるみにも猫にも 気のないそぶり …

思い癖

頼まれごとには弱い 人あたりよく いくつもいくつも 引き受けるものだから やっぱり回らなくて やっぱり重たくなって 自分がダメなんだと思い込む 頼まれごとには弱い 人あたりよく いくつもいくつも 頷くものだから やっぱり辛くなって やっぱり重たくなっ…

seed

飛ばす種がない 蒔く種がない そんなことでも話の種にはなろうかと 気まぐれを起こしたのさ ひっかかる種もない 眠る種もない そんなことでも話の種にはなろうかと 会いにきてみたのさ どこかの誰かが面白がったり どこかの誰かが寂しがったり そんなことで…

午前3時に呼ぶ声がして

午前3時に呼ぶ声がして ねぼけまなこで鍵をあける まだここが巣なのかと 舌打ちと苦笑いを行き来しながら 酔いつぶれた背中に タオルケットをかけた 家族になるのも他人になるのも 些細なきっかけなのだと ねぼけまなこで布団にもぐる やがて 努力をあきら…

心のふた

あけたとたんにあふれたものと あけたとたんに注がれるものが 全くのところ同じ熱量であれば 全くのところ同じ色合いであれば だったらどんなに嬉しかろうか 一生分の涙と 一生分の笑いは きっと同じ分量なのに 忘却と記憶が同じ量でないのは 今もって謎だ …