猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

魔-2

これなにかねえ

 

きみはぼくからとりあげた

紅色の実を齧り続けている

 

美味いのか

よかったなと言いたいが

あいにくきみに言葉を

とりあげられた

 

胸の奥までがらんどうで

恋とはどんなものかも思い出せやしない

 

これなにかねえ

 

きみはぼくからとりあげた

黒い実を弄ぶ

 

あたしのことなんて

見てなかったんだから

ひとつちょうだい

 

じっと見つめて

きみはその通りにしたんだったな

 

楽しいのか

よかったなと笑いたいが

あいにくきみに顔を

とりあげられた

 

つまんない

もうとりあげるものがなくなっちゃったわ

 

きみは満足そうに笑って

黒い実にキスをした

 

 

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 ののここさんによるイラストACからのイラスト