猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

その器に気づかない 外にも内にも 無数に抱え込んでいるのに 蓋を閉めても鍵をかけても ほら 内容物がはみ出さんばかりだ “満ち足りている” それこそ憧れのことば 手をフレレバ そうじゃないと声がするのが こわくて “満ち足りている” そんな顔を装った 誰も…

笑っていこう

笑っていこう そのときがきたら 笑っていよう 少しだけでも 泣きながら ここにきたのだから

破片

目の前に ザラザラと破片が漂う 不規則な色 バラバラな形 パズルのピースにもなりゃしない 目の中に こぽこぽと破片が浮かぶ ぬるっとした風に瞼を閉じれば 僕の眼球に しがみついていた 何ごとも なかったように しがみついていた

泣き顔のかみさま

この星のかみさまは 泣き顔だ わたしたちは 褒められていることにも 叱られていることにも 無頓着で ついには 自分こそが「かみさま」なのだと 高らかに言い放つほどだ 泣き顔のかみさまは それでも何も言わないまま はらはらと愛を流し続けている

幻影の現状

幻影の現状は いっそう明るさを増し 現実を押しのけようとしている 幻影の現状維持など 望んでいないのに ますます輪郭は確かなものへ 現状と幻影が ことごとく入れ替わってしまえば あなたも死ななくて済んだのだろうか わたしの中で

泥だんご

これでもか これでもかと こねて磨いて ひとつだけの泥だんご きみだけの泥だんご 心の中で こねこねまぜまぜ 割れたら また これでもか これでもかと こねて磨いて そしたらね じょうぶでやわらかい 心になるよ きっとなるよ

泣いたわけ

きもちのわけなど ほんとはどこにもなくて 寒いとか 暑いとか 右に曲がるか 左に曲がるか それだけで きもちは活発に動きまわれる 痛いとか 苦しいとか 上り詰めるか 落ちていくのか それだけで きもちは活発に暴れ回れる そして何かが壊れる音がして ようや…

消える

山が消えて 海が消えて 空が消えて 歌が消えて 恋が消えて 光が消える

薄皮

その光景は 冷静で秩序正しい その光景は 正確で隙がない 間違ってなどいないのに 傷ついてなどいないのに 空気がだんだん薄くなる 心がどんどん薄くなる

不幸せを数えるなら

不幸せを数えるなら 風の強い日に 不運を嘆くなら よく晴れた日に 自慢話をしたくなったら どしゃぶりの日に 自分を投げ出そう

男と女

あなたのメモリーも あたしのメモリーも 吐き出せないほどいっぱいで まるで隙間もなかった 悲しみを憎しみにすりかえても 何も変わりはしないこと あの頃は知る由もなかった あなたのメモリーも あたしのメモリーも めちゃめちゃに壊れて もう修復できなか…

どちらでもないのなら

闇でもなければ光でもなく 喜びもなければ憤りもなく 寒さもなければ温もりもなく 甘くもなければ苦くもない そんな恋なら しないほうがまし

凝縮

幻想をリアルを こじあけて混ぜ続けたなら いつか ひからびた本音になって 唇をゆるく裂くのだろう 幻想をリアルを こじあけて溶かし続けたなら いつか ひからびる事実にだって 舌はやさしく動くだろう

リアルすぎるわたしたちは

小説なら書き直せる 小説なら読み直せる 同じ箇所を好きな時に 同じシーンを好きなだけ 人は リアルすぎるわたしたちは まだ 修正可能だろうか

うさぎだった頃

犬だった頃 世界は今よりちょっと狭くて 今よりちょっと切なかった 猫だった頃 世界はもう少し広がって 今よりちょっと傷ついていた うさぎだった頃 世界はこんなに悲しくなくて 今よりちょっとやわらかかった

やり直せるとしても

明日を巻き戻したとして それが今日だとしたら 意味はあるのだろうか 今日を早送りしたとして それが明日だとしたら 意味はあるのだろうか 今 時を逆行して あなたに会うことが出来るなら 意味はあるのだろうか いっときの幸せで 満たされたとしても

夢も見ず明日を恋う

はじめましては 風が起こるように たぐりよせるでもなく 手さぐりですらなく 夢も見ず はじめましては にわか雨のように 明日を恋う はじめからの 定めだったとしても

肉厚

肉厚の悲しみが 徐々に薄れていく それは 肉厚の幸せより長く 舌の上に残るけど 噛み締めて 味わって ゆっくりゆっくり 心の中で消化する ゆっくりゆっくり あなたの中で命になる

priceless

“はじめまして“が どれほど過去になったとしても あなたの左側で こんな風に過ごせること

わたしの中で

わたしの中であなたは 少しずつ死んでいく 声も匂いも手触りも 少しずつ褪せていく わたしの中であなたは 少しずつ死んでいく 揺れる髪もきれいな目も ドアを閉めた白い手も あなたの中でわたしもきっと 少しずつ死んでいく ふたりで観たコメディ映画 ありふ…

かみさまのうさぎ

雲をびりりと食いちぎり そっと そおっとおててでパンチ ぶるぶるっとしたら 雪になったよ お鼻もしっぽもひんやりしてる お耳もおててもふかふかしてる ねえ きみの心はまだ 雪の日に悲しくなるのかな きみの瞳はまだ 雪を映してひとりで泣くのかな もう寒…

かみさまの場所

かみさまの場所はいつも美しいわたしたちが愛されているからかみさまの場所はいつもあたたかいわたしたちが 愛されているから空も海もほんとはとても美しいわたしたちが忘れなければ

再生

つるはしとシャベルを握り岩盤の前に立つ おもむろに振り上げ思いきり振り下ろす パラパラ小石がこぼれ砂混じりの風は頬をかすめた 傷つくのも厭わず何回も何回も岩を削って中身が見えないかと穴を覗き込む おそろしく暗くて見たことがない色 おそろしく深く…

日めくり

あなたとわたしと笑って過ごした 日々はどんどん遠ざかる あなたとわたしの絆が壊れて 日々は無情に流れていく あなたとわたしの道は離れて 日々が連なることを怖れた あなたとわたしがそれぞれの 日々を紡ぎ始めても あなたとわたしの傷跡は たまにどくどく…

雪ぼうし 冬ぼうし

雪ぼうし 冬ぼうし きみの心を連れていく 綿ぼうし 白ぼうし ぼくの心を揺らしていく さらさら光って さらさら流れて 冬は熱を連れてきた 冬が恋を連れてきた

あなたの魔法になる日まで

あなたの中のきれいな色や あなたの中のやさしい気持ち その場限りの幻影かもしれない だから こぼれた粒を集めて しまっておきましょう いつかあなたの魔法になる日まで

古い手紙

あなたの書いたまあるい文字が ぼくをやさしく壊していく 手紙たちの置き場所を 思いださないまま あなたはいってしまった “もう全部捨てたよ” あなたは泣きも笑いもしなかった なのに今 あなたの書いたまあるい文字が ぼくをやさしく壊していく 手紙たちの…

雨のふりはじめ

雨のふりはじめ 懐かしくて甘い香り 冬なのにあたたかくて 冬なのにまぶしくて 冬なのにやわらかくて 嬉しくて泣いた

ありがとう

ありがとうは無敵 ありがとうは優しい ありがとうが言えない ありがとうはさびしい ありがとうは突き刺さり ありがとうは結びつく ありがとうはささやかで ありがとうは遙か ありがとうは嬉しい ありがとうはあたたかい

そらが青い日は

そらが乳白色の日は 誰かが道を迷っている日 そらが泣いた日は だれかとお別れした日 そらが広い日は だれかの夢が映っている日 そらが青い日は かみさまのうさぎが笑った日