猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

古い手紙

あなたの書いたまあるい文字が
ぼくをやさしく壊していく

手紙たちの置き場所を
思いださないまま
あなたはいってしまった

“もう全部捨てたよ”

あなたは泣きも笑いもしなかった

なのに今
あなたの書いたまあるい文字が
ぼくをやさしく壊していく

手紙たちの置き場所を
思いださないまま
あなたはいってしまった

“もう全部忘れたよ”

寄り添った日々も小さな諍いも
最後の一粒まで記憶から追い出して
あなたは泣きも笑いもしなかった

“幸せだった”

あなたの書いたまあるい文字は
ぼくをやさしく壊していく

光に揺れながら
やさしく壊していく