猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2019-01-01から1ヶ月間の記事一覧

消滅願望

手紙のように届けばいいのに 手紙のように忘れられたらいいのに 手紙のようにしまっておけたらいいのに 手紙のように消えればいいのに

月を落としても

この想いは月を落としてもおさまらないのです 傷をなぞるように文字をしたためた 愛してるのに大嫌い憧れてるのになんて憎らしいそしてまた自分のことをいっそう嫌いになる この想いは月を落としてもおさまらないのです 傷をえぐるように文字をしたためた 愛…

空向こう 海向こう

空向こうに広がる声の 海向こうへ届く音 空向こうから聴こえる歌の 海向こうから注ぐ光 空向こうの日々は穏やか 海向こうの悲しみ忘れ 空向こうへ広がる歌の 海向こうから降る涙 空向こうに広がる声の 海向こうへ届く音 空向こうから聴こえる歌の 海向こうか…

人が滅びるとしたら

会うたびに ご機嫌度は乱高下 キミに言わせればお互いさま そんなところだろう それでも 鼻の頭をひんやりさせて走ってくると “待ってたよ”と言いたげにおすわりして 尻尾を動かしている わん!の代わりに ニャア!が遠くから聞こえて ぼくは幸せな気持ちに…

ためてはおけない

今に失くすのではあるまいか やさしい言霊交わすたび 温もりを交わすたび 不安ばかりが先回る 今に消えるのではあるまいか 見送ったまま キスもできないまま 来てもいない未来に怯える 今にこぼれるのではあるまいか 覚えておけばいいと 記しておけばいいと …

月火水木金土日

月曜の孤軍奮闘 火曜のあきらめ 水曜は上乗せ 木曜寝転び 金曜つまづいた 土曜へ開き直り 日曜は笑い飛ばせ そしてまた始まる なんてことないふつうの日

意味

命が燃えさかる瞬間を 知っていたのに こんな虚ろな星に生まれ 後悔と希望を記すしかなかった 憎しみも愛も 皮膚を破って生まれるものだから 涙はもう意味を持たなかった 感情が抜け落ちる瞬間を 味わったのに こんな密な器に生まれ 絶望と夢を記すしかなか…

その日

その日 映画みたいだときみはうつむき 戦争みたいだとぼくは泣いた 1週間たち 家からありったけの小銭を持ち出して ふたりでスーパーの募金箱に入れた 1ヶ月後 無力さに押しつぶされつつ 友の無事に涙した 1年たって その時刻ちょうどに 黙祷を捧げた 天災に…

つけ替える

吸い込みが悪くなり 埃を吐き散らすようになったので 中味を空け ダストケースを拭きあげ フィルターをつけ替えた 人も似たようなもので あれも大事 これも大事 嬉しいこと悲しいこと 好きなこと嫌いなこと 時に 心が破裂するまで飲み込んでしまう 吸い込み…

幸せだと胸をはれずとも

大人になるにつれ 反抗期とは無縁になるのだと ふつうはそういうものだと 何もかもからはぐれた心に そんなことばが根付くはずもなく ついには曲がり角の曲がり角の そのまた奥まで歩いてきてしまった 幸せだと胸をはれずとも 幸せだと一瞬でも笑えればいい …

雲予報士の娘に生まれて〜トーザ・カロットの人々

父と母は職場結婚だそうで 母の先輩っぷりにほれぼれした父が 一方的に求婚したという話を だいぶ大人になるまで信じてきた あとから知ったほんとの話はもっと複雑で なるほど 我が子に話しにくいことではあったろう あたし 空の色や天体が終わりに近いこと…

Mochi

あの子は何を込めただろう 手粉をはたき丸めた先に もしも望みがあるのなら あの子は何を込めただろう 手粉をはたき並べる先に 僕にはとうに目もくれず あの子は何を込めただろう 手粉を落としそれは行儀よく 例えば妬み 例えば悲しみ 堂々巡りの鞘当てか

コーヒー

腹たちまぎれに とびきり苦く淹れたはず 喉に甘く落ちるコーヒー 理不尽と諦めの狭間で揺れたのは 昨日や今日の話ではなく それでも顔を突き合わせる苦痛に 耐性は磨かれる 腹たちまぎれに とびきり苦く淹れたはず 胸に甘く落ちるコーヒー きみと私の舌の上…

ちぢみ菜

ちぢみ菜炊いて おかずにしましょう せめて緑に染まるように ちぢみ菜炊いて ふたりで食べよう せめて緑で居られるように ちぢみ菜炊いて 忘れてしまおうか いつか愛してくれた日を

二度とは会わず安堵するも 映る面影残酷な春 捨てたふるさと憎んでも 懐かしやと涙落つ 二度とは戻れず安堵するも 映る水面残酷な春 捨てたふるさと憎むほど 恋しやと涙落つ

くず

星屑 とかいう美しく楽しげな単語のことではないのです 人の 人としての 人の屑だと 幼すぎてできなかったことも たまたまおろそかになったことも 一言で片づけられていました 星屑 とかいう輝く夢見がちな単語のことではないのです いい子にしていた雪の夜 …

ちいとも知らずに

考えたこともありませんでした ため息の行方など そりゃあ 風にかき消えてしまえと 何度も何度も願いはしましたが 次の日も体のどこかから はあぁ 我知らず染み出してくるのですから 考えたこともありませんでした ため息の成分など 心の闇が薄められたもの…

女と赤い月

モノクロームの空に 赤い月が浮かんでいたのです はにかむ女の横顔に貼りつく 粧っても消えないシミのように ずいぶんと寒く ずいぶんと暗く 日々は流れていくというのに 赤い月では温もることもできやしない まるでお前そっくりだ そう言われている気がして…

選択

びっくりするほどいいことと 泣きわめきたいほど悪いこと あなたはどちらを選びますか 片っぽ靴下脱ぐように 気軽に試してごらんなさい きみのいいこと ぼくの悪いこと 同じできごと同時に起こり 人ではない何かに訊かれたんだ びっくりするほどいいことと …