猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

はなび・ら

鬱々の

睦月

ひりひりと(句)

ひりひりと焼ける爪先初デート

見上げれば

見上げれば 花舞う風のあどけなさ

でじたるの(句)

でじたるの 海にただよう嘘まこと

うろうろ(句)

箱かかえ 右も左も新年度

山がすみ(句)

山がすみ はなひる連れのけしきいとほし [訳] 山が霞み春らしい風景なのに くしゃみの止まらない連れの様子が とても気の毒でなりません

鍵あらば(句)

鍵あらば なれの心も開かむや 桜を眺めば問ひかけてみる [訳] 鍵があるのなら きみの心も開くのだろうか 桜を眺めては問いかけてみるのです

風もどり(句)

風もどり 孤独呼びこむ人の群れ

風磨きのうさぎ(句)

風みがく うさぎにさそわれ春の雨

街泳ぐ(句)

街泳ぐやうに進まば なくせる恋の見え隠れす [訳] 街を泳ぐように進んでいると 手放した恋が見え隠れするのです

終わり雪(句)

終わり雪 猫と眺める窓辺かな

母に似た人(句)

母に覚ゆひとの手とりてやをら歩む 見たりし映画の話しつつ [訳] 母に似た人の手をとってゆっくり歩きました 観ていた映画の話をしながら

雨宿り(句)

雨避きて 二番館のキネマかな

咲くほどに(句)

咲くほどに いと口惜しき麗しさ [訳] 桜の花が開くたび その美しさに嫉妬してしまうのです

時が過ぎても(句)

時過ぐとも 悲しみ深し春の午後

巣作り猫(句)

春走る 巣作りねこまをまもる朝 [訳] 風の強い春の朝、まるで巣を作るように猫が毛布にもぐりこんでいるのを、見つめています

片想い(句)

今日もまた 恋しと言われで 平気なる顔をす [訳] 今日もまた「あなたが好きです」と言えなくて 平静を装っているのです

天気雨(句)

天気雨 きみの泣き顔隠す街

恋(句)

たわむれも 恋の始まり四月莫迦

猫(句)

やわらかく しなだれかかりて ねうの声 [作者註] ねう〜現代語で“にゃあ”。猫の鳴き声のこと。

身をゆだね(句)

身をゆだね 心遊ばす音だまり

こわれ星

こわれ星 青く光りて回れりかし

美しく(句)

美しく やがて悲しきひな流し

春霞(句)

春霞 わびしくなりき 空の色

汗ばみて(句)

汗ばみて 春よせくなと 母言ひき

猫は焦げ色(句)

月隠れ 焦げ猫ひとり 花衣

ふるふると(句)

ふるふると 心凍ゆる午前四時 まどろみてなほ 眠るまじきに

空あおぎ

空あおぎ 学び舎遠く朝戸風