猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

春寒

春寒や 猫と競いて 膝枕

手紙

沈丁花 香り閉じこむ 文の奥

春の風

春の朝

乳白の 空ひともぎり 春の朝

遠恋

月も寝入り 海向こうは朝 きみおもふ

面映く

面映く ただ面映くひとつ傘

仮想風景

恋深し

季節外れ

ある感情

空と吾子

哀しみの 分け隔てなく朝明ける

アスファルトに

アスファルトに鳴る雨音や 君想ふ

呼びかけても

呼びかけても 恋さし違う蝉しぐれ

内臓までも

内臓までも 熱くしていくきみの声

南風に

南風にストール揺らし きみを待つ

蝉時雨

蝉時雨 傘に隠れるふたりかな

すれ違い

すれ違い 怒り喜び見殺しにする

君の名は

君の名は 思ひ届けや秋茜

秋の夜

まどろみを 甘く破られ虫時雨

誕生日

誕辰の にぎわひ遥か夏深し

さよなら

夏いきれ 振り向きざまの嘘ひとつ