猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

楽欲

食欲、独占欲 睡眠欲、序列欲、、、 何を語り 何を唄おう 何を欲し 何を捨てよう 業を背負い 業に抱かれ 楽欲の何を知ろう?

いつもの引き出し

涙の隠し場所は いつもと同じ引き出しに 嬉しくて 悲しくて 飲み込んだり 伝えられなかったり 流されなかった涙は いつもと同じ引き出しに 心の やわらかい場所に

透明な空

透明な空が 伸ばした腕に絡みつく 透明な空の まだ向こう側にいながら 昨日の夢が甘く叫ぶ 透明な空と ひたむきに見つめ合う 波に浮かぶ抜け殻になって

濾過されてなお

光も翳も 大気のフィルターでやわらぐのに きみの言葉は濾過されてなお 心に突き刺さる 二度と抜けない矢のように ずっしりと突き刺さる

ぬくもり

胸の痛みに気づくのは 手を離したあとで 傷の痛みを知るのは もっと遠い日で 涙が苦いから 初めて温もりを知って 空が遠いから 失くしたものを探さずに いられない

海風

大きくふくらむ 服のすそ さらりと黒髪流れ 海がざわついた 小さく固まる 砂の山 ころりとスコップ転がって 足もとがふらついた 大きくふくらむ 服のすそ さらりと黒髪流れ あの人が消えた

またあしたね

ねむれねむれ いい子ちゃんのあたし だだっこのあたし ねむれねむれ いばりんぼのあたし すまし顔のあたし ねむれねむれ 冷めてるあたし やさしいあたし あしたまたここで 遊ぼうね

装う

転んだり落っこちたり そんな様を手ぐすね引いて 待ってるんだ 転んだり落っこちたり そんな様を今か今かと 待ってるんだ 正直者を装った もろい正義が広がって きっと誰かが泣くんだ どこかで泣くんだ

Sky

心が映っている 心に映っている わたしが映っている

かなしいうた

悲しい歌が肩に寄り添い 夢の残り香立ちのぼる 白の季節は風を染め 現(うつつ)の記憶を呼び覚ます 悲しい歌を舌にのせ 今日も塊飲み下す

ふれあい

オレンジ色の雨の中 意味のない音節は甘い香りを放ち いつか消える だけど 忘れないと言い続ける だから 忘れないと言い続ける 忘れないと伝え続ける オレンジ色の雨の中

移ろい

遠のく鴉の声 オレンジ色の空 夏が微睡んでいる 流れる星の粒 藍色に染まる雲 秋がほどかれていく

夢のあした

作りものの空のした 夕陽を背負って歩く街 作りものの空の青 きみへの手紙を置いてきた 作りものの空みあげ なくした歌を探す頃 作りものの空剥がれ 記憶の雨が降り注ぐ

0になりたい

0になりたい 0になれない 0にならない 0で語れない 0に縋っても 0が消えない 0を消しても 無は生まれない 無が生まれても 0にならない

晩夏のふたり

砂だらけの手足のまま 君の肩越しに見た 空と海 砂だらけの体のまま 震えながら君にしがみついた 君の腕に爪をたてて しっぽが大きくふくらんだ かすかに眉を寄せ 君は静かに “だいじょうぶ” そう繰り返しては 僕の耳の後ろをやさしくなでた

うそ詠い

うそごと吐いて 飾ってみせた うそごと詠って 笑ってみせた 小狡いの いなくなれ 小狡いあたしはどっかいけ 小狡いの とんでいけ 小狡いあたしを忘れてしまえ 涙といっしょに溶けてしまえ

祈り

泣きも笑いもせず 青く広がっていた カラカラになった心に 青く広がっていた あの日終わったことが 始まらないように 二度と始まらないように 青い空に祈る 命に祈る

すれ違いざま

すれ違いざまの昨日は いつだって泣き顔で 通り過がりを装えば 決まって僕を睨めつけた 螺旋の系図は いつだって澄まし顔で 知らぬふりを装えば 決まって僕を傷つけた すれ違いざまの今日は いつだって戸惑い顔で わかったふりを装えば 決まって “人生は短い…

視線の雨

街に視線の雨が降り注ぐ 傘はもう無用とばかりに 四方八方(よもやも)から 水しぶきが降りかかる 無遠慮な好奇心 無意味な虚栄心 無自覚な雨ふらしの群れ 街に視線の雨が降り注ぐ がらがらと音をたて 傘もやぶれよとばかりに そこかしこへ 水しぶきが踊り狂…

夢浮かぶ

羽衣寄せて 花ごとたもと 灯した果ては毛氈に やがて一夜の夢浮かぶ

月の街

月は探す 海の見えぬ街 風と消え 雨に染まる人を 月は呼ぶ 森の見えぬ街 空へ溶け 光に染まる人を

青い雪

青い青い雪が ようやくやんで 生温い心をそっとなでた 赤い赤い空に ようやく飽きて 冷えた心がそっと触れた 広い広い海は ようやく目覚め 熱い頬にそっとキスした

憧れ

雨の中で 陽の注ぐ場所に 焦がれ 陽のしたで 雨晒しになりたいと 願う

立秋

蝉時雨にあらがえば 風がさわわと鳴いた 昼は次第に淡さを増して 次の季節を迎え入れる 熱帯夜にあらがえば コオロギがコロロと鳴いた 夜は日ごとに濃くなって 月をその手に抱きよせる

FU・O・N

物情騒然ありあまる 腐敗堕落を流し見て 複雑怪奇の夢あれば 舞文曲筆なお止まず

あたしを満たす全てのものが

あたしを満たす全てのものが 愛の側に属するのなら どんなによいだろう あたしを潤す全てのものが 暗闇に流れおちれば 泣かなくてすむだろうか あたしを連れ去る全てのものが 光で見えなくなったなら 許されるのだろうか

熱帯夜

夜を喰い 光を盗んだ 夢を貪り 影を宿した

空想版「花の名」より〜百日紅

花も葉も 楽しそうに笑っている 夏を愛し 百の昼を染める 想い人の化身

はじめましてを知るとき

はじめましてが始まった はじめましてはキュンとして はじめましては切なくて はじめましてにはしゃぎ過ぎ はじめましてに追いつかない はじめましてが終わるとき はじめましての意味を知る

夜が食べ尽くす

夜は狡猾だから 曖昧な気持ちに 気づかないふりをする 夜は聡明だから ためらいがちな視線を 隠してしまう 夜は哀しいから 生まれたての感情を 食べ尽くす かけらも残さず食べ尽くす