猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

でじたるの(句)

でじたるの 海にただよう嘘まこと

街路

水に浸りにける街路 なれ無事なるかおぼつかなし

あなたを知らなくても

言霊のひなたに似たり さろんかな

名前

名前を手放した ねちっこくその舌で あなたが呼ぶから 名前を手放した それはもともと あたしのものだと 思えないから 共有していたものは 一体なんだったんだろう いまはただ苦いだけだ 名前を拾った まどろみの中 誰かが放った言霊を なつかしい痛みを

映し絵の

映し絵のなんぢはゆめゆめうつろはずなどずるからむくちびる噛みき [訳] 写真のあなたは決して歳をとることはありません なんてずるいのだろうと唇を噛みました

風磨きのうさぎ-1

ピカピカ ピカピカ 雨雲をせっせとこしらえていた 風磨きのうさぎは 思わず地上を見下ろしました ピカピカ ピカピカ 光の持ち主は 黄色い帽子をかぶった男の子です ちいさな手にこれまた小さな鏡を握っています 人に向けてはダメよ そう 人だけではなく 歩い…

うろうろ(句)

箱かかえ 右も左も新年度

ミモザ〜トーザ・カロットの人々

ミモザを飾ると雨が降る むかしむかし ミケと一緒に暮らすおじいちゃんは そう教えてくれた 風磨きのうさぎたちが 黄色の花にそれはそれは嬉しくなって 風どころか 雨雲までピカピカに磨きたてるから 別の花を飾るのか どんなに朝のお天気が素晴らしくても …

泪に暮るとも

泪に暮るとも 友の呼ぶ声あたたかし

もう猫でいい

フローリングに寝転んだ もう猫でいいやと寝転んだ うねうねしても ぐむむと伸びても なれっこないのは知ってるけれど フローリングに寝転んだ もう猫でいいやと寝転んだ 耳は丸いし しっぽもないし なれっこないのは知ってるけれど フローリングに寝転んだ …

山がすみ(句)

山がすみ はなひる連れのけしきいとほし [訳] 山が霞み春らしい風景なのに くしゃみの止まらない連れの様子が とても気の毒でなりません

おろしたての自分を見つけた朝は

おろしたての自分を 見つけた朝は きっときみに優しくできるんだ おろしたての自分に 気づいた朝は きっと少し戸惑うんだ おろしてたの自分に 気づいた朝は ほんの少し照れながら おはようを届けに行くんだ 昨日の悲しみが今日の糧となりますように きみが幸…

朝の月

さらながら驚きき あしたの月のかく麗しき [訳] 今更ながら気がついたのです 朝の月がこんなにも美しいことに

検索してみた

知ってるよ いま あの国で誰かが巻き込まれたって 知ってるよ いま あの星で命のカケラが見つかったって 知ってるよ いま 猫が迷子になったって だけど いまあなたが 悲しいのも嬉しいのもいっしょくたでやってきたって 言った意味 どんなに検索してもわから…

鍵あらば(句)

鍵あらば なれの心も開かむや 桜を眺めば問ひかけてみる [訳] 鍵があるのなら きみの心も開くのだろうか 桜を眺めては問いかけてみるのです

泳ぐ

日曜の街を泳ぐ まあるい気持ちと尖った気持ちを 交互にかいて 日曜の街を泳ぐ やわらかな影と冷えた光を 交互にかいて 日曜の街を泳ぐ きみの声と濡れた頬を 忘れるために

風もどり(句)

風もどり 孤独呼びこむ人の群れ

場外ホームランみたいに

カラカラカラ 小さな小さな青い星は もうおしまいと言いたげに 音を立てて回っています 人らがずいぶんと 押し合いへし合い 急ぎ急ぎ 我先に我先に ぱくぱくぱく もぐもぐもぐ 腹がくちくなっても 食い散らかし続けたので カラカラカラ 小さな小さな青い星は…

風磨きのうさぎ(句)

風みがく うさぎにさそわれ春の雨

ひ・と

なんて綺麗な花だろう 見つめた瞳で誰かを睨む かわいいねえ 小さな命を愛でた指先が 鋭利な単語を紡ぎ出す 大好き 告白したその舌は 出会い頭に誰かを傷つけ にっこり笑顔に潜んでいるのは 一体全体 さあさあ それでも笑いましょう そしてたくさん泣きまし…

時忘れ

時忘れかの日なつかし ミモザ色づき会はまほしきなり [作者註] ミモザの花言葉「秘密の恋」

落ちるわけがないの ほら あんなに高くどこまでも広がっているでしょう せいぜい雨か雪か あるいは氷の粒が時々降りてくるだけで 空がごっそり剥がれ落ちるなんて あるわけないでしょう 落ちるわけがないの ほら 祈りや喜びや 冷え切った言霊が空からぶら下…

きみの名を

きみの名を 空色インクできざみこむ 春にも似たり涙にも似たり

風やすみの岬-3

“風やすみ”が起こっているので 何となくふわふわした心持ちのままです サコッシュの中には落ち空のカケラ 手には頑丈そうな傘をしっかり握って 鍵しっぽにいつもより気持ちを込めて 詩人屋さんは森はずれの友人の家までやってきました 毛糸屋さんはその昔 雪…

眺めたれば(句)

眺めたれば 転びにけるなり花の群れ [訳] 桜たちの美しさに見とれていたので 転んでしまいました

火曜日のあたし

火曜日のあたしときたら 寝ぐせにイライラ 子どもとギャースカ おまけに夫はパンくずだらけ 火曜日のあたしときたら 情けなくて最低で 昨日の失敗目にしみる 火曜日のあたしときたら 玄関出てから深呼吸 とっちらかった部屋も 今朝は許そう たまには最低 そ…

検索(句)

検索すとも 絶えて汝の心わからず [訳] ネット検索をかけても ちっとも君の心がわかりませんでした

迷子のあたし

となりにいるきみは あたしが迷子になるくらい 遠くにいた あたしは宇宙のまんなかから 逃れたくて きみの手をぎゅーっとした あたたかいくちびるに どうしても届かない きみの存在はいつだって 不確かなのだ となりにいるきみは あたしが迷子になるくらい …

街泳ぐ(句)

街泳ぐやうに進まば なくせる恋の見え隠れす [訳] 街を泳ぐように進んでいると 手放した恋が見え隠れするのです

きみの好きな季節とぼくの好きな季節

きみの好きな季節と ぼくの好きな季節は いつまでたっても重ならなくて ふたりはそれを かなり楽しんでいた きみの好きな天気と ぼくの好きな天気は いつまでたっても重ならなくて ふたりはそれを とても面白がっていた きみの好きな人と ぼくの好きな人は …