猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2017-06-01から1ヶ月間の記事一覧

命と青

幸せと不幸せを さきまわりしてしまう 喜びにはさびしさを嗅ぎとって 遠回りしてしまう 規律も陰口も 鵜呑みにしてしまう 愛も運命も 涙に隠れてしまう 命は悲しいけれど 命は酷いけれど 深く青くどこまでも愛おしい

着信拒否

きみのために椅子をさがしまわって きみのための場所をととのえて 頼まれてもいないのに きみが好きそうなことをほんの少し さきまわり きみのためにお店をさがしまわって きみのためにクタクタになって 頼まれてもいないのに きみが喜びそうなことをほんの…

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん-5

マフラーも手袋も ちぢこまって歩いた日も すっかり遠ざかった頃 雨の季節がやってきます 朝が急になくなったみたいで お昼も灯がほしくなる なのに夜だけはきちんきちんとやってくるし どこもかしこも水っぽくて ため息がふえちゃう そんな季節です "遠回り…

少女のひとりごと

鍵をかけるのが好き 秘密と甘美な後悔と崩れそうな日々を ひとところにおしこめて 鍵をかけるのが好き 大好き 鍵をかけるのが好き 過去と懺悔と壊れそうな感情を ひとところにしまいこんで 鍵をかけるのが好き 大好き そういえばある日 鍵がこじあけられて …

半分以下の物語

ドラマティックな生き方ですね まるで映画のよう なんて華やかなんでしょう 悩みなどないですよね あなたにはかなわない そんな人々の罪のない思い込みが 彼女を縛りつけてやみません ドラマティックなことも 映画のようなことも 華やかなことも穏やかなこと…

たまご

しっぽを揺らして あなたの隣で盗み見た月は 思いのほか小さくて まるで生まれたてのたまごみたい まあだだよ そんな声が聞こえると 背中を撫でてくれながら あなたは真面目な顔で言う 雲に隠れた青 消える瞬間の恋に もういいよ 叫びたかった ほんとは 生ま…

押す

スイッチをオフにする 忘れるのはそういうことでしょ 切りかえるってそういう意味でしょ 誰だって感情のボタンを隠し持ってるから 押せばいいだけでしょ 簡単よ心配しないで ほんとのほんとに 泣きたくなるまでは 押さないから 僕の胸できみはつぶやいた

幸せな重み

さっき小さく文句を言って すわりなおしたばかりなのに 溶け始めたアイスクリームみたいに きみは膝の上でとろけてる ふにゃふにゃの姿が心配で 名前を呼んでも 喉を鳴らして目をとじたままだ 夏に向かう陽射しは強く きみは膝の上でだんだん重くなる ぼくの…

上手に嘘をつきたいのなら

上手に嘘をつくのなら 使ったことのない単語と 舌の上で慣れ親しんだ文章を 程よく混ぜて 涙の一つもこぼせばいい 同情されるだけで満足なら そうしておけばいい 孤独が好きなら そうしておけばいい

光景

嘘を紡ぐためじゃ なかった 初めのうちは 名前のない場所で 自分さえ知らない名前をなのり 見たこともない言の葉を 見つけようとしただけだった 真実を紡ぐためじゃ なかった 今だって きみに届けたいのは そんなことじゃないのだし ほんとうっていうのは ド…

彫像

汚そうとすることは そこに美を見ているから 力強くて近寄りがたい 美を どうにか手に入れたくて 混乱の末 汚そうとする 美を欲しているくせに こわそうと躍起になる 彼女はそう言って ゆっくり彫刻刀をふりかざした

生ぬるい風に気持ち乱れて

地下鉄のホーム 生ぬるい風に気持ち乱れて 今年も夏が近いと 思い知らされる 教科書より重いのは 手の中を流れるコトバたちで 暴力的に脳内を染めあげて 突き放してすらくれない 傷つくことは正しいのか 泣くことはずるいのか 本音を漏らす標的を 鵜の目鷹の…

プロフ

あの子の独り言を 偶然見つけた クラスで人気の笑顔のあの子 デジタルな川なんて 似合わない スマホをさわってるところも 見たことない そんなあの子の独り言を 偶然見つけた 誰にでも優しくて 陰口を舌にのせてるとこを 見たことなくて 好きな映画と好きな…

わたしの好きだったこと

10年前から すきだったこと 映画と本とお月さま 3年前もすきだったこと ドライブと音楽とあなたとの会話 去年まですきだったこと かき氷とせまい場所と 四角い画面の川のなか

記憶

落とさないように していたら 忘れられる がまんしなさい パパもママも そう言ってたっけ お前のためだ 強い大人になるように 流さないでいれば 必ずできるようになる 慣れるものだ 練習しなさい パパもママも そう言ってたっけ がまんと練習を くりかえして…

さがしているのです

さがしているのです 意味がないと頭で理解してるけど さがしていたいのです 意味を求めて心が迷うから さがしつづけるのです あなたを好きだったあたしの感情を

他己紹介

首ったけなんです とにかくオンリーワン 他は目に入りません 誰にも負けない自信あり 一途です だけどそれは あなたのことでは ないよね 半分も 気づかなかったんだ きみに遠慮がちに言われるまで

ぼくたちのささやかな希望

どんなときも 自分でいること 自分で自分を見捨てないこと ぼくたちの悩みは 大抵そんなことから生まれるのだけど どんなときも 自分に戻ること 自分で自分を見失わないこと ぼくたちの希望は案外 ささやかだ どんなときも どんな天気でも どんな気持ちでい…

やめられないって君は言う

知ってるよ いつか悲しくなること だけどやめられないんだよね 女友達はスカイプの向こうで ため息まじりにそう言う 恋をやめられないんだよね

ぼくたちの輪郭

洗濯物にしみた日なたのにおいが ぼくの憂うつをつのらせる きみの香りがどんどん かすれていくから 洗濯物にしみた日なたのにおいは 僕の憂うつを加速する きみの声がだんだん 消えていくから 洗濯物にしみた日なたのにおいで 僕は悲しみつのらせる 刻まれ…

ふれあいながら消えていく

とわ せつな まじりあって とけ残って 永遠 一瞬 わかりあって 忘れあって とおくへ そばに ふれあいながら 消えていく

形のないもの

癒やしにはお手軽なのと 深いのがあるそうな 深いのしか認めないと お手軽が見えなくなる お手軽だけを重ねても 深いのにはならない やわらかくて気持ちいいのも癒やし いっときでも苦悩を忘れるのも癒やし 見つけられたり掬われたり 救われたり こんなにも…

酔雨

雨降りのおひさま 泣き虫のおひさま また会えてよかった 土砂降りのお月さま 笑い上戸のお月さま また会えてよかった 街はいつだって逆さまで 遠回りしたってあのこは見つからない 傘をさすのはもう飽きて 今日も空を見つめてる 雨降りのおひさま 泣き虫のお…

あなたもどこかで

あなたも見たのだろうか どこかで あなたも知っていたのだろうか いつからか あなたは聴いていたのだろうか あの日も たったひとりで 今にも燃え落ちそうな 朝焼けの奏でを

愛しい後悔

詰め込みすぎて あふれてしまう 愛しいと思う感情が 口いっぱいに広がって 嬉しくて詰め込みすぎたのを ちょっぴり悔やんだ 好きだ 不器用につぶやく癖も 笑うなっ 首まで真っ赤になるとこも 嬉しくて 愛しくて 胸に詰め込みすぎた 詰め込みすぎて あふれて…

空と鍵

鍵をかけました 二重にも三重にもしっかりと 誰にも開けられないように 誰にも見つからないように いいえ そうではなくて多分 誰にもとられないように そんな気分だったので 空に鍵をかけました

きみの嫌いな青い色

空の色したスカートが好きで あの娘がうらやむほどに 上手に翻して見せた 空の色したスカーフが好きで あの娘がため息つくほどに 上手に風に流して見せた 空の色した便箋が好きで あの娘より先に手紙を届けた くちづけをくれたのに きみは青が嫌いだって 受…

得意なこと

不安の種を見つけるのは 大の得意 バスに遅れたら コーヒーをこぼしたら 約束を忘れたら どうしよう 空がなくなったら きみに嫌われたら 犬が吠えたら どうしよう 雨が心を満たしたら 闇しか信じられなくなったら きみをおこらせたら どうしよう やさしいと …

宇宙だった

恋することだけが あたしの宇宙だった 誰かを羨むことを 覚えるまで 憧れることだけが あたしの支えだった 誰かを羨むことを 覚えるまで 新しい宇宙を探すこと 古い宇宙を忘れること どっちもお手のものよ 強がってみせた きみには きみだけには さとられた…

過去を

過去を映しているのだと ほんとのほんとは気がついてた いまのことではないのだと ほんとにほんとに気がついた さらっと悟って さらっと笑って それでも空の下に ほんとのほんとはいたかった ふたり一緒にいたかった