嘘を紡ぐためじゃ
なかった
初めのうちは
名前のない場所で
自分さえ知らない名前をなのり
見たこともない言の葉を
見つけようとしただけだった
真実を紡ぐためじゃ
なかった
今だって
きみに届けたいのは
そんなことじゃないのだし
ほんとうっていうのは
ドロドロした心のうちにしか
ないのだし
形になった時点で
まるで違ったものになるんだもの
それでも書きたかったんだ
人のように話す猫はちょっと笑うと
また
小さなスケッチブックを広げました
初めての言葉に出会うために
空がまだ
誰の上にも存在していた頃のお話です