猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧

雨と風

雨と風が 後悔という名の痛みを 削ぎ落としていくでしょう だから 前を向いていなさい なだらかになっていく波形を 見つめながら その人はささやきました それから6度も雨の季節が巡って 痛みは一枚ずつ 剥がれ落ちていきました それでもたまに小さく疼くの…

赤糸

きみの沈黙は騒しく 欺瞞に満ちている ぴん!と張り詰めた糸は ところどころ固結びになったままで それでも頑固に僕らをつないでる ぼくの沈黙はいじましく 不満にあふれている ぴん!と張り詰めた糸は ところどころ固結びになったままで それでも頑固に僕ら…

同僚

“ろくでもない空” 目に焼きつけてから 次に空が降ったら その頑丈そうな傘に 一緒に入っていいですか 意地悪な衝動にかられる あの人は少し困って “これは大事な傘だからね” やんわり交わすだろうか “今日だけとくべつだよ” それともやさしく 笑うだろうか “…

自己紹介#1(仮)

父の日 母の日 敬老の日 こどもの日 誕生日 クリスマス 口にするのも悲しくなるほど 大いに否定されながら 一応大人になりました おかげさまで 多少曲がっておりますことを 大目に見ていただければ 幸いでございます

新人雲予報士

初めて空が落ちた日 雲がいつもよりうんと少なくなって まるで岬にいるみたいに びゅうびゅうと風が吹いた “空はいつか落ちるもの” そんな不思議な歌を教えてくれた 休暇中の先輩に思わず電話した しっかりしなさい わたしたちは雲予報士 この日が来ると昔か…

君への手紙

自分をログアウトした君へ 笑われたんだね 無視されたんだね だけどもしかしたら 理由なんてなかった 君はそう言うだろうか 苦しみは長々と横たわり 楽しみは羽のごとく過ぎ去る 人はどちらかだけでは 生きられない 人はどちらかだけでも つまずいてしまう …

元カノと紅茶葉

あなた あたしのこと嫌いでしょ とてもとても嫌いなんでしょ だから 知りたがって会いにきたんでしょ あなた あたしのこと嫌いでしょ とてもとても嫌いなんでしょ だから 傷ついてるのかどうか確かめたくて 顔を見にきたんでしょ あたしがあれからどれだけ不…

Go for it

努力する余裕があるなら もうかなぐり捨てて 動きなさいな 過ぎてみればわかる やわらかさも頑なさも そのときは必要だったと 努力する余裕があるなら まずかなぐり捨てて 進みなさいな 歩くうちにわかる 弱さも歓びも そのときは必要だったと だから 努力と…

曜日

今日が何曜日かを 気にしなくてもよくなったのに 毎年 たくさんのカレンダーを用意します 廊下にも洗面所にもトイレにも 五つぐらい並べて 出かけるときにもバッグにしのばせて ようやく僕は安心するのです もしも誰かと久しぶりに “今日は何曜日だったっけ”…

嫌いでもいいやん

嫌いでもいいやん 大好きじゃないぐらいが ちょうどよかろうもん 嫌いでもいいやん 無理やりいい方にねじ曲げんぐらいが ちょうどよかろうもん 嫌いでもいいやん 距離を感じてもいいんやから 自分で 自分に 見える光景は 誰かと同じじゃなくても いいやん 嫌…

緋色のアイスコーヒー#1

文献によれば 雪だるまの満月とは 空の端っこがほんのちょっぴり剥がれ まるで雪のように降ることがある いわゆる“落ち空”や“降り空”といった 気象ごとの一種だと考えられている 現代のように どこぞに空が落ちて すっかり冷え切るまでは近づくこともできな…

滴り続ける場所

だらだら伸びてくタイムライン 熱かったり冷ややかだったり 深刻だったりおふざけだったり ほんのふだんのことなのに 意味づけしたくてたまらない だらだら広がるタイムライン 噂だったり真実だったり 夢だったり嫉妬だったり ほんのいつものことなのに 傷つ…

雨降りなのは月曜だけじゃないけど

月曜だから雨が嫌いになったわけじゃない 雨だから月曜が嫌いになったわけじゃない たまたまスープが熱すぎて たまたま仕事でつまづいて たまたま恋人とケンカして それが月曜で雨が降っていた 急に鍵穴が合わなくなるように 急に明日が怖くなるように 急に…

打ち負かす

いちばんのみかたで いちばんのライバル イチバンノリカイシャで いちばんの仇(あたし)

結局きょうも

結局きょうも 何かをなぞっている 好きな言葉も 好きな音も 誰かの真似のような気がして ふさぎこんだ青空の日 のぞきこんだきみの瞳 いいねも 悲しいねも 誰かの嘘のような気がして 結局きょうも 何かをなぞっている 好きな場所も 好きな感情も 誰かの後追…

スカートの裾

ふくらんだスカートの裾 月光が跳ねた 風も時も急ぐばかりで 知らない顔だけが増えていく ふくらんだスカートの裾 黒い猫が跳ねた 歌も雲もちぎれるばかりで 悲しい言霊だけが増えていく ふくらんだスカートの裾 きみが跳ねた 雨も光もやさしいばかりで 涙だ…

しまいがけのふたり

つい妬ましいって思っちゃうんだ ダメだよねえ なんて 笑顔で言える器用さ その人のことを ずるいとも小憎らしいとも思ったのものでしたが 実を言うとぼくだって 浅ましさをいつのまにやら味方につけていたので そんなことないよ 普通だよ そう慰めつつ お互…

おやすみのうた

おやすみちいさなうさぎたち 風はきょうもキラキラ光るよ まるで空がつながってた頃みたいに おやすみちいさな毛糸たち 風はきょうも涙をぬぐうよ まるで猫が旅してた頃みたいに おやすみちいさな青い星 風は気まぐれに空を落とすよ まるで子どもの遊びみた…

ミケとあたし〜トーザ・カロットの人々

いつもは おじいちゃんと暮らしているミケ 自分のそばにいるのが 二本足の旅猫でも 三つ目の一族でも 心の隅っこに暗ぁい部屋を始終抱えた 少女でも 一向に気にする様子がありません 猫は 心地よい場所を見つけるのが大の得意で その能力はご先祖さまから代…

雲予報士の休日

初めて空が落ちたとき わたしは雲を数えてた あなたの隣でいつものように わたしは雲を数えてた 雲予報の仕事はその日 たまたまなぜだかおやすみで それでも雲を数えてた あなたの隣で寝ころんで 初めて空が落ちたとき 忙しくなるのかなって さびしそうにあ…

嫌いでいることを怠けない

許したくなるまでは 自分を許さない あきらめがつくまで 自分の心を刃で抉る 許したくなるまで 自分を問い詰める あきらめがつくまで これでもかと だけど親切な人たちは こう言うでしょう 許してもいいんだよ 自分を好きでなくてどうするの そのままでいい…

ミケとあたしと青い月〜トーザ・カロットの人々

月がのぼっています いつもよりずっと青く いつもよりずっと明るく 一晩中でもみつめていたくなる 恋してしまいそうな美しさです このままどこか岩にでもこしかけて 青い月と過ごすのもよいかなぁ ふとそんな考えが浮かびました すると あたしの前を振り返り…

あたしの好きだったひと

今朝の苛立ち引きずって 明日の夜には頃合いの 昨日のページを繰り忘れ おととい来ればと 笑うひと

LINE

誕生日がやってきた 父からのLINEはケーキのスタンプ 母からのLINEはカフェオレのスタンプ 妹からのLINEはスプーンのスタンプ 友からのLINEはランチョンマットのスタンプ 誕生日がやってきた 父へのLINEはかじりかけのケーキのスタンプ 母へのLINEは“ごちそ…

説明

まがりかどに誘われいけば 闇も空も払いのける 静謐の路地裏に佇むのは 人とも妖しともはかりかね 影を持たない種族の 店とも倉庫ともつかない部屋で 売っているのが “おしまいのミルク”

ひとくち

ひとくち残しのこんがりトースト ひとくち残しのポテトサラダ ひとくち残しのアイスティー 最初からよけておけばいいのに 季節が巡っても きみのくせは相変わらずだ ひとくち残しのパンケーキ ひとくち残しのコールスロー ひとくち残しのホットココア 最初か…

青葉若葉の候

長い袖では肌にはりつき 短い袖では鳥肌がたつばかり 降るかと思えば痛いほど 雲間の光差す 心揺れ 体もゆらぎ 早すぎる季節を追って足がもつれる 長い髪ではおさまりつかず 短い髪では隠れられず 晴れたと思えばいつの間に しなやかな雨に烟る

魔-1

誰かが咲かせた幸せの花束 ひと舐めして面白くもなさそうに “これなにかねえ?” きみはおとといも手に余ると嘆いてた 誰かが見つけたキラキラな気持ち ひとなでして嬉しくもなさそうに “これなにかねえ?” きみは昨日も手に余ると嘆いてた もらっただけだも…

別れ際

あたしの中からどす黒い 涙がズルズル湧き出した こわれものはないか わすれものはないか ほかに憎む標的はないか あたしの中からどす黒い 涙がズルズル湧き出した

ほんの数ミリ

今朝の世の中 ちょこっとずれてる ほんの数ミリ ボクを避けてる 知らぬ存ぜぬ視線が泳げば 訳知り顔の焦げパンづくし 今朝の世の中 すこおしずれてる ほんの数ミリ ボクを避けてる 右に曲がればやさしいひとに 左に曲がればその他大勢 今朝の世の中 なんだか…