猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

ミケとあたしと青い月〜トーザ・カロットの人々

月がのぼっています

いつもよりずっと青く

いつもよりずっと明るく

一晩中でもみつめていたくなる

恋してしまいそうな美しさです

 

このままどこか岩にでもこしかけて

青い月と過ごすのもよいかなぁ

 

ふとそんな考えが浮かびました

すると

あたしの前を振り返り振り返り歩いていたミケが

 

“にゃぁご”

 

と鳴きました

そっか

今日の夜歩きは1人じゃなかったんだ

道草はまたいつかにしましょう

 

風が強くなってきました

岬からのやわらかな空気があたりをみたしていきます

 

ミケに

おいでと声をかけて

くにゃくにゃの体をよいしょと

抱っこしました

 

心得たもので

ミケはゴロゴロ言いながら

器用にあたしの肩にのっかりました

 

ふたりでもう一度だけ

青すぎる月を見つめて

おじいちゃんが持たせてくれた

“落ちてきた空”をポケットの中でぎゅっと握り

 

空はいつか落ちるもの

猫はいつか歌うもの

風は岬に

毛糸は音符に

あたしは雲を数えましょう

 

昔々

おじいちゃんが歌ってくれた

風変わりな子守唄を小さく歌ってるうちに

月明かりに青く浮かんだ自分ちが

見えてきたのでした