猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧

そら

落ちてくる 青 消えていく 黄色 すべてを飲みこむ 白 流れ落ちた なみだ

夢に食べられたわたし

返り血のような夕焼けに 彼は染まっていく 夢に食べられたわたし それを見てた 返り血のような夕焼けを 彼は手なずけていく 夢に食べられたわたし そこで見てた 返り血のような夕焼けが 彼を連れて行った 夢に食べられたわたし ソラが見てた

あなたはだあれ?

燃え盛る文字の向こうに 何食わぬ顔をした 激しい気持ちたちが落とされ あるいは 行き過ぎた親切心で それぞれの正義が語られる そこにいなかったのに そこに集っている不思議 居合わせた現実は 誰かの夢じゃない だけど あなたはわたしではないのだし わた…

あなたの中に降る雨を 消すことはできないので いっしょに眺めています あなたとふたり 傘をさして

きみのすき

ぼくは胸はって それをすきだと言えるだろうか ぼくは目をそらして その空間を作れるだろうか ぼくはまだ探してる “きみのすき”を 少し焦って探してる

きみが好き

せかすほどにのろのろと せかすほどにゆるゆると どうして?と見上げて きみはくにゃりとお腹を空に向ける 月と星に見守られ ふわふわ遊び回ったあと 耳元で鳴いて やっとたぐりよせた夢から 冷たい肉球で僕を連れ出すきみ おやすみも言わずに パジャマの胸…

あなたの永遠はわたしの一瞬で

あなたの永遠は わたしの一瞬で わたしの永遠は あなたの一瞬で あの日きっと 長い手紙をもらったはずなのに いつのまにか消えてた 一瞬の笑顔と 永遠の嘘 一瞬のほんとうと 永遠のヒミツ 宙に浮かべた気持ちたち 空からぶらさがったわたしたち

おわりの日には

愛した記憶と 愛された記憶だけでいい 愛の記憶だけがいい

ひとりぼっち ふたりきり

大笑いしてひとりぼっち 泣き崩れてふたりっきり ありがとうって手を握ったら ふたりさよなら 失っても明日を みつけたよ ひとりで

隠れ鬼

ひとり ふたり あいこでぽん 風が吹いたら 鬼さんこちら さんにん よにん かけてって ぽん 雲に隠れた 迷子はだあれ 花束 野の花 抱えて ぽん 春をみつけた あなたはだあれ

紫色の丘

丘は紫色 香りたつリンゴの実 触れた唇から 甘く歌がこぼれた 丘は紫色 つぶれそうなリンゴの実 触れた唇から やわらかく笑みがこぼれた 丘は紫色 消えそうなリンゴの実 触れた唇から また夢がこぼれた

シン

放さないでいよう それを ふりほどいて 転んで 傷ついて泣いても 届かなくても

ショコラがとけるまで

ショコラがとけるまでなら あの人はそう言ったんだ 鍋に黒い塊を落としながら だから 想いを伝えようとしたのに 隙も見せないんだ 「好き」も言わせないんだね 鍋をゆっくりかき混ぜながら あの人はこう言ったんだ ショコラがとけるまでなら

ばかみたいにすてき

雪の音(ね)よりも きみの吐息が遠いから 心配で僕は 何度も鼓動を確かめる ばかみたいにすてきで ばかみたいに真剣だったね

いのちを祈る

だれかが祈る だれかを祈る だれかに祈る いのちを祈る だれかのため じぶんのため きっかけは あいまいでも 手の中にあっても いのちを祈る いのちへ祈る

さよなら

夏いきれ 振り向きざまの嘘ひとつ

青い夢

朝を遠ざけて 沈み続けた青い夢 冬のにおいがかすかに残った 土ぼこりと南風 あなたに会いに あなたへ会いに

誕生

はじめましてを 棄てました あんなに懐いて 可愛らしかったものを 憎くて 憎くて バラバラにしました はじめましては 命乞いもしないで 笑って消えていきました しばらく泣き明かして 空が白くなってきて はじめましてが また 髪をなでてくれるのです 痛みに…

いつかあなたへ

差し伸べられた手を 背中を押してくれた言葉を 抱きしめられた温もりを ささやかな団らんのように 空をあおぐ瞳を 風に触れた指先を 寄り添う強さを 地中に伸ばした根のように いつかあなたへ その時がきたなら いつかあなたから 手渡されたように いつかあ…

もろくて壊れやすいから

もろくて壊れやすいから 大切に抱きしめる あなたに手渡すまでに 消えてしまわないように 大事な大事な言の葉 嬉しくて愛おしくて 悲しい ささやかだけど とてもきれいな言の葉を “はじめまして”

いつか、のときに。

旅立ちが淋しくないように 一輪の花を そして 空がよく見えるように 窓を開けて 頭を撫でてください 昔のように

空が消えても

空が消える いつか必ず 魂が慟哭する 涙も枯れるほどに 終わりはくるけれど それでも “はじめまして”がやってくる いつもあなたに 訪れる いつもの顔して やってくる

報酬

淋しさの報酬から もう受け取りました ほんのすこしだけ ただ 泣くだけで良かったのなら 孤独の代償なら もう支払い済みです ほんのすこしだけ 誰かをうらやんでも 全てを忘れて ただ 微笑むだけで良かったのなら

それでもきみに言う

がんばれ いつしか煙たがられ いつしか重たがられ いつしかうるさがられ 言われなくてもわかってる これ以上何をどうするの それでも きみのために心の底から がんばれ そう言おう きみがまた笑えるまで いつかきみがくれた “がんばれ” にはかなわないけれど…

壊れた日々

正直すぎて傷ついても ほんの少し嘘を混ぜるより 幸せなのかも知れない 素直すぎて疲れ果てても ほんの少し傷つけるより 幸せなのかも知れない 愛しすぎて壊れても 幸せなのかも知れない

雨の奥

雨の奥 森のむこう あたしがいた場所 雲の奥 海のむこう あたしが愛された場所 光の奥 夢のむこう あなたが愛した場所 雨の音 夢が消える ふたりでいた場所

女神

冷静な残酷さをもって 彼女は佇んでいた 甘く微笑んで 「何もいらないよ」 と繰り返す 冷静な狡猾さをもって 彼女は存在していた 熱く触れて 「ずるいよ」 と囁く 心が傷つく理由を 僕はまだ探している 恋する理由を 僕はまだ求めている

partner

かみあわないのに 見守ってくれたり 許せないのに 寄り添ったり やさしいけど遠くて 冷たいけどわかってくれる 理解しがたくて どうにもならないのに この人以外考えられない 執着だったのか 愛を育んでいたのか 見えないまま ふたりはひとりぼっちになった

人から生まれる感情のうち 嫉妬と並ぶ強い毒 甘く痺れて目眩すら起こさせる 心も体も ことごとく消え果てて ただ 恋だけがそこにある ただ 涙だけがそこにある