猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧

思いだせなくなったとき

幸せな陽だまりを 思いだせなくなったとき あたしは 誰よりも日向にいる 見えないだけで 気づかないだけで まぶしすぎて 泣くこともできなかった さびしげな日陰を思いだせなくなったとき あたしは誰よりも暗闇にいる 見えすぎて 美しすぎて ため息さえもつ…

艶やかな皮

びろびろとだらしなく 艶やかな皮が 床中に広がっています 中身を ガブリとやったあとなのです あたしはね 器用にくるくる 皮を剥いたんだよ なのにお前ときたら びろびろとだらしなく 転がり続けるだけじゃないか 女はわたしを睨みつけ 文句たらたら溢れさ…

泣けば泣くほど

煮こめば煮こむほど 美味しくなるなんて ただの幻想で あたしは きみの手紙を読まずに 食べようと決めた 迷えば迷うほど 強くなるなんて ただのなぐさめで あたしは きみのキスをくぐり抜け 抱きしめようと決めた 泣けば泣くほど やさしくなるなんて ただの…

カタカナにしただけなのに

カタカナで書いただけなのに ちょっと嘘つきになった カタカナを探しただけなのに ちょっと無口になった カタカナにしただけなのに ちょっとよそよそしくなった あたしの名字と あたしの名前

きみを想わない日がきたとしたら

明け方 飲み干したように 雨は上がり 次の季節が 容赦なく実を結ぶ わたしはまた 孤独を気どって 物分かりのいいふりをする きみを想わない日がきたとしたら わたしはもう 孤独を気どる必要すら なくなったということなのだろう 明け方 飲み干したように 雨…

いつか消えるとしても

多くは望みません これまでも これからも 約束は いつか消えてしまうもの やさしさは いつか忘れてしまうもの ただ あたしの心が粉々にならないように 時々つなぎとめてください

合わせ鏡

切っ先は確かに 相手のほうを向いて しっかり狙いを定めていました 大切で脆くて繊細で秘匿している あの部分に しっかり狙いを定めていました 切っ先は確かに 相手のほうを向いて しっかり狙いを定めていました 大切で儚くて美しくよそよそしい あの部分に …

会いに行こうと決めたのは

会いに行こうと決めたのは まだまだ雪深いころでした このままでもいいのだけど このままの自分でいるより 少しはマシかな そう信じてみることにしたのです 会いに行く準備を始めたのは 桜が微笑む頃でした このままでもいいのだけど このままより少し先に進…

きょうは誰かの誕生日で

きょうは誰かの誕生日で おめでとう また大人に近づいたね 歳はとりなくないねえ そんな声が星のどこかで 聴こえる日 あしたも誰かの誕生日で ダイエットは休んじゃう? ランニングさぼっちゃう? あのひとに会いに行っちゃう? そんな声が心のどこかに 居座…

たかがうさぎ

満月なんぞ たかが光の加減じゃないか そんなものを まだ信じているなんて あきれたやつだ 星も月も風さえも その言葉を聞かなかった きみもそうだと思っていたのに たかがうさぎのくせに 時代遅れなやつだ ずいぶんと 悲しいやつだ 風を磨くしかできないく…

ある夜

きみの歌う言葉が ぼくの悲しみ呼び覚ます 酔うほど寂しくなるだけなのに 触れずにはいられない きみの奏でる音色が ぼくの弱さを呼び起こす 酔うほど懐かしくなるだけなのに 抱きしめずにはいられない

今日のできごと

特に変わったことは ありませんでした いつものように おはようといってきます いつものように 金木犀の香りにちょっとむせて いつものように ぎゅうぎゅうの電車に揺られていたのです 何も変わったことは ありませんでした いつものように 天気予報と占いが…

月あと

月あとに心細くも しっかと立っておりますと 世の中それは絡まりあって かみさまは いつそれを解放なさるのか 恐ろしくなるのです 月あとに心細くも しっかと耳をそばだてますと 命が儚くぶつかり合って かみさまは いつそれを消してしまわれるのか 恐ろしく…

恐ろしく困難なこと

繋がっていることは 夢と真実の境界線だとすれば ほんとのほんとに孤独になることの なんと恐ろしく困難なことか 繋がっていなくても 夢と真実の境界線に紛れ込めば ほんとのほんとに仲間でいることの なんと恐ろしく困難なことか 無口な愚者は隠れ蓑 夢と真…

ノイズキャンセリング

もっとクリアに聞こえるように ノイズは全て取り除き 心地いい言葉のみを拾えるように だから しばらく黙っててくれないかな 耳を幸せで満たしたいんだ もっと素敵に聞こえるように ノイズは全て取り除き 心地いい感情のみを拾えるように だから しばらく黙…

おばあちゃんのチーズラスク

パンを薄切りに マヨネーズはムラなく塗ること 粉チーズは思い切ってふりかける オーブンの温度に気をつけて 乾いた感じになったらできあがり 苦くなるから焦がさないようにね どんどん焼けてくチーズのラスク ケーキクーラーは いつもあっというまに定員オ…

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん-12

10月の半ばを過ぎる頃 トーザ・カロット岬の毛糸屋さんでは 小さな小さなワークショップが催されます と言っても 編み方のお話だけでなく 闇色の毛糸で編んだ帽子を かぶる時の心構えとか みかんの蕾色の毛糸の 誰も知らない秘密だとか 時には 噂にもならな…

いろは歌

耳鳴り続きの いろはにほへと 街のまんなか うつろな心 耳鳴り続きの ちりぬるをわか 心の中だけ 生き地獄 耳鳴り忘れの よたれそつねな 海の底では 踊れましょうか 耳鳴り忘れの らむうゐのおく それとも流れに まかせましょうか 耳鳴りたどれば やまけふこ…

魔法のように

店頭から消えたんだって もう作らないんだって そう これが最後の最後 10軒回って 20軒回って 心もとなくてポチッと大人買い 半年経たずに騒ぎはおさまり 全てがすっかりもとどおり 私たちはしたたかだ 悪い魔法のように 甘く儚いくせに

見失った自分に会いに きたよ

悲しみは

悲しみは 終わりのないだるま落としのようだ 甘く苦く人を狂わせ 我知らず酔いに沈む 悲しみは 向こう岸の見えない大河のようだ 冷たく深く人を誘い 我知らず夢にたゆたう 悲しみは 番狂わせの行列だ 待つことも準備することも 許されないのだ

秋空

金属音の耳鳴りと 雑踏のやわらかなさざめきに 今日も僕は救われる あの子の泣き声も 誰かを罵倒したあとのため息も 徐々に体内から消えていく気がして 悲しい瞬間の訪れない日を 欲するより 無理にでも上書きすればいいのだと 気づいたのは何才の時だったろ…

ベジタブル・ジュースの魔法

気軽な日常の立て直し術 (気休めとも呼ばれる)

椎の実

秋がコロコロ転がるみたいと 君はふざけて 椎の実でお手玉をする ふたりがまだ それぞれの カケラでも季節でもなかった頃 ぼくたちはようやく 誰かのカケラか季節になれたのだと 無理やり何かを押し込めていた そんなところは似すぎていたけど 出会ったのは…

Comparer

比較×安堵は 比較と幸福度の 比較と攻撃性の 比較的同調思考と 絶対的ほどほど感に 比較的寄り添う のかもしれない

わたしのわたし、わたしとわたし

わたしの鍵であり わたしの扉であり わたしの夢であり わたしの道であり わたしの光であり わたしの闇であり わたしの主人公である

泣いてる君は嫌いです

泣いてる君は嫌いです 綺麗な横顔 悲しげな瞳 濡れた頬 誰もが君に魅了される 泣いてる君は嫌いです 震える肩 揺れる髪 かすれた声 誰もが君を愛おしく思う 泣いてる君は嫌いです 遠くに行ってしまいそうで 僕は嫉妬に溺れます ひどい言葉 冷たい仕打ち すり…

夢とうさぎ

空が覚えてくれていているなら それでいい 空が覚えてくれているなら 何もいらない 空がそこにあるから もう今日はいらない 恋やぶれてしょんぼりな日 風を磨き終えた うさぎ一羽 うふふと笑って あたしの手をしっかり握ったまま 夢からぴょん!って飛び出し…

恋人へ

灰色の空模様になっても 水色の空模様になっても 虹色の空模様になっても 「あなたのせいだ」 そう言えるしたたかさが欲しい 急に会えなくなっても 喧嘩しても 人生に迷っても 「あなたなんて」 そう言える弱さが欲しい

おばあちゃんのフレンチトースト

ミルクの代わりに豆乳と卵 ちょっぴりお塩と ちょっぴりお砂糖 よくよく混ぜたら深皿に フランスパンでも ロールパンでも 一口大にしてそこにひたす 冷蔵庫で一晩寝かせるのだけど 途中でひっくり返すと もっと美味しい 朝になったら オーブントースターで …