特に変わったことは
ありませんでした
いつものように
おはようといってきます
いつものように
金木犀の香りにちょっとむせて
いつものように
ぎゅうぎゅうの電車に揺られていたのです
何も変わったことは
ありませんでした
いつものように
天気予報と占いが流れて
いつものように
慌ててお弁当を受け取って
いつものように
一機しかないエレベーターを
ジリジリしながら待っていたのです
だから気がつかなかった
空がどこかへいってしまったことに
なんの前触れもなく
なんの挨拶もなく
空がどこかへ消えてしまったことに