猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

その日

あなたは大きな声で「はんたーい!反対っ!」と大勢で叫んだ あなたは小さな声で「いやだ…反対」とひとり呟いた その日が二度と来ないよう強く祈った

残りのどこか

半分は嘘半分は薄暗い半分は冷たく半分は忘却 残りのどこかにぬくもり

言葉と声

声はとても勇ましくその場所に流れていた 声はとても弱々しくその場所に潜んでいた 言葉は強くどこまでも拡散していく 言葉は微力でやがて心に浸透していく

日常

カレールーを買い忘れコーヒー豆を買い忘れビールを1缶買い忘れ女房グチまで言い忘れ 果てにふたりで大笑いさてさて今夜は何作ろ

stopper

空は 私の心につっかい棒をした 光は 私の体にとおせんぼをした 不条理なわめき声と 理不尽な怒りで 粉々にならないように

おわりのあとに

月の丸みが 風を乱せば 足あとひとつは 残るだろう 時の終わりが 星を乱せば 夢ひとつほどは 残るだろう

今日よりは

借り物のあたしになってあなたに会った 借り物のあたしになってあなたに恋した かりそめのあたしなら傷つくことも上手になれるかな 今日よりは

産声

心も体も 毎日産声をあげてるんだ どうして気づかなかったんだろう 空を見上げて少し笑った 君の背中で少し泣いた

出ておいで

夜が染み込んだ ソラに染み込んだ いびつな今日はもう終わった だから 出ておいで 泣き虫さんたち

朝は今でも

朝は今でも残酷なのだろうか 時の逆流はついぞなく 音をたてて終着に向かう 朝は今でも狡猾なのだろうか 時が止まることはついぞなく 夜が消えていく

やさしさを揺れる

泣かないでいること 泣けないでいること 笑わないでいること 笑えないでいること 人は揺れる やさしさを迷って 揺れる

ずぶぬれの月

さまよう心に ずぶぬれの月 歌が生まれる ほんの一瞬 甘いヒカリ さまよう体に 粉々の月 命があらがう ほんの一瞬 眩むヒカリ

四角の箱

天使の横顔みつめていたら 四角の奥で何かが生まれた 天使の横顔みつめていたら 四角の中で誰かが呼んだ 天使の横顔みつけた日から 四角の中からもう出られない 夢から出られない

こんなにあなたを愛してる

さよなら昨日 こんにちは明日 こんなにあなたを愛してる

知らない歌が

知らない歌が なつかしく耳をくすぐって 知らない声が やわらかく僕をかき乱す 知らないメロディが 身体中を満たして 知らないきみの 手を握りしめた

何も言わない

かみさまは わかっている だから だまっている かみさまは なにも言わない 知っているから はじめも おわりも

同化

その日 溶け残ったカプセルは やがてゆっくり染み込んで あなたと同化する 善意の欠片も 悪意の欠片も

おはよう

おはよう世界 まだ死なないでね

57の言霊で

57の言霊で あなたを抱きしめる ありふれた 短く甘い単語たち ひとつひとつに 心をこめて あなたにあげる 57の言霊で あなたを傷つける ありふれた 短く苦い単語たち ひとつひとつに 涙をこめて あなたにあげる

気まぐれなバケモノ

世界は気まぐれな バケモノだから 愛も哀も こんなに満ちている 世界は気まぐれな バケモノだから 茫も暴も こんなにあふれている 世界は気まぐれな バケモノだから 逢も崩も こんなにうごめいている

指先から投下される 雨霰の音節たち 誘蛾灯に引き寄せられる 無数の“音” はじめは おそるおそる つぎからやがて 大胆に 徒党を組んで あるいは 群れる自覚すらなく あちらからこちらから ふだんはひとりの 善良な命 ふだんは愛に生きる やさしい誰か そんな…

やさしい人たち

かなしいニュースと やさしい人たち 群れになれば やさしさ忘れ かなしみをつつきあう さびしいニュースと やさしい人たち 群れをなすほど やさしさ失い 歪んだ笑顔の草ならぶ

7月47日の約束

7月47日に会いましょう そんな約束を交わした 秋の入り口 7月47日に必ずここで きみの言葉をなぞるように 舌にのせた 夏の出口 セミが押し黙った 色とりどりの空

旅に出るわけ

ただいまを言いたくて 旅に出る おかえりを聞きたくて 旅に出る ほかに大事なものは そんなにないような気がする

きっと必ず

転んでもいい 逃げてもいい 泣いても叫んでも いい 笑えるから 笑い飛ばせるから きっと必ず

たくさんの

たくさんの私、たくさんのあなた、 たくさんの空、たくさんの風、 たくさんの雨、たくさんの夕焼け、 たくさんの別れ、たくさんの出会い、 たくさんの願い、たくさんの朝、 たくさんの、涙 たくさんのありがとう

古びた傘

ふりそそぐのは何だろう あびているのは何だろう うんとうんとふくらんで いつのまにか破裂して パラパラとふりそそぐのは何だろう この身にあびているのは何だろう 古びた傘を 無理矢理開いて閉じこもる こわいものをあたしの外に閉じ込める

帰路

みちみち月が みちみちみちて みちみちひかる みちみちこいし みちみち月を みちみちあおぎ みちみちてらす みちみちかえる

一期一会

もう会えないのだろう 多分 似ていてもきっと違っている そう いつかと同じ風だと思っても それは 似ているだけで二度と会えない だから この命に生きる この命と生きる 一期一会の命を抱きしめる