猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

朝の光景

月の下半分を消しゴムで 丁寧にととのえていると 背中が温かくなってきました お日さまの匂いです さあ1日が始まります 今日は 泣こうか笑おうか それとも久しぶりに コーヒーを挽きましょうか 雲の上に遊ばせた感情を もう少しだけそのままに 消しゴムを握…

初夏の散歩

海向こう きみの描いた雲ひとつ

恋人たち

誰も知らない場所に落ち着き ふたりは全てをさらけ出す もう言葉も熱もいらないほど わかり合っていたはずだった 誰も振り向かない場所に落ち着き ふたりは全てをさらけ出す もう言葉も抱擁もいらないほど 寄り添っていたはずだった 不安などは些細なこと 不…

目曜のあした、禁曜のごご

目曜のあした、禁曜のごご 海沿いの懐かしい道を 飽きず眺む 目曜のあした、禁曜のごご 哀しみの筆を走らせる 目曜のあした、禁曜のごご 崖沿いの懐かしい街を 飽きず眺む 目曜のあした、禁曜のごご いつかの私が微笑んでいる

祈りが風になる前に

数えきれないほどの 朝と夜を往復して 目まぐるしく空は流れた 祈りが風になる前に 海を訪ねて 命の意味を問いただそうか 数えきれないほどの 朝と夜を往復して 狂おしく光が揺れた 祈りが風になる前に 空を訪ねて 命の意味を問いただそうか

麦雨

呼び止めむかやめむや迷へり 麦の雨

そこに横たわる明日

咲き誇り微笑み浮かべ 希望の途をたどり 枯れ残り嘆き深く 後悔の途をなぞる 先回りの不安を抱いて 思わずうつむけば 明日はまだ そこに横たわる 枯れ残り嘆き深く 後悔の涙を落とす 傷ついてなお仰向けば 明日はまだ そこに横たわる

傲慢な

天井知らずの理想を 編みながら 底なしの不安に沈む ただひとり 希望も消え 手放したいものばかりが 積み上がっていく 天井知らずの理想を 編みながら 底なしの不安に沈む やがてふわりと 浮き上がるまで いまひとり祈りに沈む

リンゴ

そんなの どっちでもいいんじゃないっすか こともなげに後輩は言ってのける リンゴを俺がかじる リンゴはやがて俺になる リンゴは気を許して俺に食われたのか リンゴに俺が気を許したのか どっちでもいいっしょ 仕事仲間のわたしのことは どう思っているのか…

血色(ちいろ)の海、乳色の空

血色の海に足をとられ 乳色の空を見上げたままだ 抱えたままのきみの抜け殻 生き場所はもう見つかっただろうか 血色の海に足をとられ 乳色の空を見失いそうだ 抱えたままのきみの抜け殻 生き場所をまだ探しているだろうか 血色の海にすっかり見とれて 乳色の…

悪戯小僧

悪戯小僧 私の内側に佇んでいる たまにこの子を連れ出して すっかりすっきり明るい気持ちで 空に豆などまいてみる 悪戯小僧 私の内側に潜んでいる たまにこの子がひょっこり現れ すっきりすっかり陽気に笑って あなたに花など摘んでみる 悪戯小僧 私の内側で…

水滴

どこかで水滴がぽたり 僕の心もピクリ なんでもない夜 明日は約束もない イヤホンに絡みついたバッハに 今にもとろけそうだったのに どこかで水滴がぽたり 僕の心もピクリ なんでもない夜 明日は約束もない きみの泣き顔をようやく 忘れられそうだったのに

積極的迷子

この角を曲がれば 駅はすぐだ なのに 横道にそれてみたり わざと反対方向を目指してみる 大発見があるかも 徒労に終わるかも 電車に遅れるかも 実は歩いたほうが早かったりして つらつらと考えつつ迷子になるのは 案外楽しい この角を曲がれば 駅はすぐだ な…

スクリーンセーバー

ひとりのオフィス ひとりの早朝 さくさく業務をこなしていたはずなのに ふわりとデジタルな花々が広がって ああ泣いていたんだと気づいた 失われた故郷への 失われた人たちへの 荒んだ思いと優しさが入り混じり あとからあとからあふれた ひとりのオフィス …

寝言

あなたは呼んだ 舌の上ですっかり馴染んだ名を あなたは呼んだ それはそれは無防備に あなたは呼んだ 自分より近い場所にあるもののように あなたは呼んだ それはそれは優しく あなたは呼んだ あたしの知らない素敵な名前を しえんさんによるイラストACから…

方向音痴

磨く方向がもしかしたらあさっての方向なのか 他の道があるのではないか なかなか親でも ましてや自分でも気づかないもので 物心つくかつかないかの頃から 好きでもないことを 好きでもないのに さも好きだと振舞っていたらしい 才があったか怪しいものだが …

みかんのゼリーとショコラのプリンを携えて

きみがくる みかんのゼリーとショコラのプリンを携えて きみがくる 薄手のカーディガンを揺らして 僕に逢いにやってくる きみがくるくる操る言葉も きみがくるくる混ぜる冷たい紅茶も どうにもこうにも眩しくて 困ってしまう なのに 自分もかき回されてみた…

一方通行

共鳴したと感じたのは ただの思い過ごしだったろうか 同じ部屋の同じ時間を同じ家具に囲まれ 共鳴したと感じたのは ただの思い過ごしだったろうか 同じ食事の同じ時間の同じ空間の中に 共鳴したと感じたのは ただの思い過ごしだったろうか 一方通行だったの…

きみのデフォルト

これにしようよ これがいいよ きみがダウンロードしたアラーム音 どこにでもあるような うるさすぎないのは きみのデフォだし 文句をつけはしなかった これにしようよ これがいいよ 人目もはばからず 背の高いパフェにかみついた さりげなく苛立ちを生み出す…

捨てたい女

思い出はこれ以上増やさないことにする 恋にはこれ以上落っこちないようにする 荷物はこれ以上重くしないようにする そう決めたのに 捨てたはずの思い出が湧き上がり 前触れなく恋に落ち 結局は体も心もちぎれそうなほどの 重たい荷物を引きずり歩く 捨てた…

風磨きのうさぎ-5

お天気をつかさどるかみさまが そよ風の中に 細く細く鋭いのを二、三本混ぜておくよう 風磨きのうさぎに命じました いくら風やすみの年だとはいえ うららかな日よりばかりでは 岬に暮らす人らも猫らもぼんやりしてしまうからです 風磨きのうさぎは この前岬…

夢のうつつ

夢のうつつに雫落ち いつかは消ゆる命にも似て

五月の朝

羽織ろうか やめておこうか いっそのこと短い袖を選ぼうか 小さな迷いも楽しい季節 朝は霧雨昼は日照りで そこそこ悩みの種ではあっても ずいぶんぼやけてはいても 四季が動くのはとても幸せだ 羽織ろうか やめておこうか いっそのこと短い袖を選ぼうか 今朝…

死ぬのならひとりがいい

死ぬのならひとりがいい 誰にも知られず 誰にも知らせず 感謝と愛を抱きながら ただ眠りたい 死ぬのならひとりがいい 誰かの涙よりも 誰かの声よりも 夢見心地の温もりを感じて ただ眠りたい 幸せを思うだろう イマイチだったと舌打ちもするだろう まあまあ…

ショコラ

ひとかけら ショコラの誘惑午前二時

世界

“閉じるだけでいいのにね” わけ知り顔で囁いた その画面を その瞳を その扉を その心を “閉ざすだけですむのにね” わけ知り顔で微笑んだ その画面を その瞳を その扉を その心を 誰かの吐き捨てた言霊も 誰かが投げつけた嫉妬も 時も空間も越えるから わざわ…

風磨きのうさぎ-4

雲が薄く広がっています 女の子がフレアスカートで くるくる回っているような パン生地を気持ちよく伸ばしたような 誰もがウフフと笑いたくなる 素敵な空模様でした 踊る雲を描くのは少しばかり大仕事 ふかふかのところを 伸ばしたり丸めたりを なんどもなん…

風磨きのうさぎ-3

ずーっとそこにいたのか ずーっと昔の記憶が現れただけなのか 当のうさぎにもわからないのでした 風をピカピカに磨けば いつのまにか寒くなったり暑くなったり はたまた 雨でも雪でもない何かを落っことしたり そのことを特別だとは思わないけれど そのこと…

散歩道

よぶ声になにならむやと振り向かば 路傍に躑躅の嬉しげに咲く

みじん切り

みじん切り 呼吸調え十連休