猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

風磨きのうさぎ-5

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お天気をつかさどるかみさまが

そよ風の中に

細く細く鋭いのを二、三本混ぜておくよう

風磨きのうさぎに命じました

 

いくら風やすみの年だとはいえ

うららかな日よりばかりでは

岬に暮らす人らも猫らもぼんやりしてしまうからです

 

風磨きのうさぎは

この前岬で集めてむしゃむしゃやった残りを

大事そうにとりだすと

ふかふかの前足でいつものように

ていねいに磨き始めました

 

やがてキラキラ輝き始めたら

できあがり

いつもだったらそこで手を止めるのですが

今日はかじってみたり伸ばしてみたり

そうこうしているうちに

銀色がかった糸のような

細く細く鋭い風ができました

 

少しだけ冷やしておいたそよ風に

出来上がったばかりの細く細く鋭い風を

二、三本編み込んでから

岬の上に広げるのでした

 

ものの数秒で

岬一帯にひんやりした風が満ちていきます

人らも猫らもなんだかすっきりした心持ちになって

ようし!とにっこりするのでした