猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2017-05-01から1ヶ月間の記事一覧

買い戻す

そんなことは 一度だって思わなかった これからも たくさん手渡した あふれるほど押しつけた きみの顔なんて見もせず 愛情だと信じて ぎゅうぎゅう詰めた 思わない 買い戻すだなんて 過去を ふたりが歩いた空を それぐらいならいっそ 心を殺してしまうほうが…

昨日恋が終わったので

今朝は 青空さえ冷たく突き放してくる いつもよりずっと 夜が恋しい いつもよりずっと 月が愛しい

雨と人の間に

せっかちな風が もう 雨を連れてくる 傘の準備も 心の準備も 毎年前倒しの必要があって それでも間にあわないから あきらめて 葉ずれに包まれてる 雨と人との間に わかりあえる瞬間があったとしても どれほど時を巻き戻せば いいのだろう どれほど後悔すれば…

嫉妬

空の写真をノートに貼る癖があって 社会人になってからも しばらく手帳に貼っていた 初めてスマートフォンを使うようになり コンビニで現像する楽しみを覚えて やっぱり手帳に空の写真を貼っていた 空は毎日違う顔なのに ふたり写った写真はどれも似ていて …

ほら

ほら あなたは無造作に 両手ですくって かぶせてくれる ほら わたしは無意味に 硬直しきって されるまま 夕焼け朝焼け とろとろとけて 合図もないまま恋をした ほら あなたは無造作に わたしの好きな言霊を 投げてよこす ほら わたしは無意味に 疲れ果てて …

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん-4

おじいちゃんとミケと過ごした 楽しい休日は あっというまに終わって 今日からまた退屈な学校生活です ごろんごろんしたみかんが 果物屋さんにたくさん並んで 大忙しだと聞いて 学校が早く終わる日に アルバイトすることにしました 憧れの みかんの蕾色の毛…

感情をあやすのはたやすかった

体内時計は 狂っても 感情をあやすのは たやすかった 体内時計が狂うほど 感情が凪いで行った 体内時計も狂わされ 感情だけが規則正しく 破れた恋歌聴き流してた

KA-RI-MO-NO

この姿 いつかの恋 この声 この命 何もかもがKARIMONOで 何もかもを返せと言われて 泣きじゃくる そんな夢を見てた なにひとつ 残らないほど さびしいと なにひとつ 残せないほど さびしいと 思いこみたかった

きみの気配

きみの気配が すっかり消えたから ようやく街にきてみた 芳香をはなつ木が 変わらずむかえてくれて わずかに後ろめたかった きみといた頃 空も光もどこかうつろで 並んでいても距離しか感じなかった 芳香をはなつ木が 変わらずむかえてくれて わずかに思い出…

トビラヲシメテクダサイ

冷蔵庫が 覚えたてのハーモニカみたいに 軋んだ音を立てていた きみのふきげんな ため息に どこか似ていた 待ってるって スカイプで笑ってくれたのは 半年前のこと アイスポックスがあふれないように 食材が凍りつかないように 冷蔵庫は空っぽにしておくね …

さよならとつぜん

雨音 点滴 涙の粒が心に落ちた 風音 点滴 氷の粒が窓をたたいた さよなら とつぜん あなたは ずるいね かなしい きおくを たくさん のこした 雨音 点滴 涙の粒が心に落ちた 風音 点滴 氷の粒が窓をたたいた

きみが好きだった

散り散りの朝と 退屈な魔法 そんなものにまぎれて ぼくは夢を見なくなった はなればなれの雲に 想い出をつめこめば 五月の風に さらわれていった かわるがわる別れ話のあと キスを交わして ハグを躱(かわ)す そんな日々が 狂おしく そんな日々でも 愛おし…

わたしたちの取り分

わたしたちの取り分は そんなに 多くはなかった 羽根をもつもの 雨を待つもの 光を望むもの 闇を好むもの たいていの命は そのうちの いくつかに属して つつましく 空を分け合ったのです わたしたちは 取り分よりもよけいに 手にいれたがった 羽根を持たず …

もう一度僕は

もう一度僕は 遠い昨日に出会った 引き出しの奥の 鍵の壊れた日記の 香りで呼び覚まされた記憶の 幾度目かの夏の ほんのささいな ひとときだった 手放したはずの 遠い昨日に出会った僕は ふりはらったものか たぐり寄せたものか まどろみの中で迷ったんだ 夢…

遠くに置きっぱなしの昨日のこと

涙をためたりは しません 愛を夢みたりも しません 砂を数えたりも しません 星を嘆いても ものたりないのだから 笑っていても どこか空虚で 抱き合っていても なんか冷たくて 雨が降っても 忘れてしまうなら 会わなかったことに できれば あなたなんて あな…

しっぽが揺れた

起きて やさしい声がして いつものリアルに転がり込んだ 夢のほうが よほど居場所があるだろうに 眠ったままではいられない ふにゃふにゃの脳内をなだめて ふわりとベッドを抜けると こっちと また声がして しっぽが揺れた 一度でいいから猫の日を過ごしたい…

誰よりも

誰よりもへた 何よりもにがて 笑うこと 泣くこと 哀しむこと やさしくいること そんなことより 救いようもなくへた 恥じ入るほどにがて 許されることも 許すことも

鍵ふたつ

その人は ふたつ持っているそうです 自らを 開くためのと 閉じるためのと ふたつ持っているそうです いつ頃からか 覚えてないそうですが 使い分けているらしいです

ひとりじめ

ひとりじめしたけど やっぱりきみとみていたかった ひとりじめできたけど やたらときみにあいたくなった いつものように パタパタしっぽをふって ケースの中でにこにこする もっぱらの仕事だから だけど やっぱり きみを探しているんだ クーン クーン きみに…

見えるようで見えないようで

てのひらに のるほどの世界しか 見えなくて どんどん感情がなまけものに なってくる 知り放題 とり放題 見放題 読み放題 聴き放題 だから 嘘も本当も そんなにめずらしくなくなって 作ることも 創ることも 歓迎されなくなった てのひらに載るほどの 未来しか…

意味なくなるから

手帳に 貼った? ノートに貼ったの? 矢継ぎ早な質問で 僕は涙をかわしてく 写真を手帳にはさんでおいたの でも 意味なくなるから 明日から にこりともせず 泣きもせず 低い声で君が告げる 持っていっても 仕方ないもの 燃やしても 惜しくないもの どうして …

ほんの夢たち

美味しくなりたい どうあがいても どう背伸びしても 食べ続けていることに 変わりないのだ ほかでもない 自分自身を だからせめて 美味しくなりたい 食べつくして しまう その日まで

なつかしいかみさまと出会う

朝を探して這ううちに なつかしいかみさまと出会う 空は まだ夜が濃く 風が 時折頬に触れた さびしいと いとしいの 境界線で転がるうちに なつかしいかみさまと出会う 幸せすぎても あたたかすぎても それだけを信じないように 悲しすぎても 孤独すぎても そ…

どうしてとりあげないんだろう

月はまだ あたしの知らない街に 漂ってる 月はいつだって やさしくあたしを 傷つける 月がもう あたしを嫌いになったなら どうして 空をとりあげないんだろう どうして涙をとりあげないんだろう

やさしい食卓

ほどよく煮えた ポトフを前に 父さんは不機嫌だ 大好物のはずなのに 今夜は楽しみって トーストかじりながら 笑っていたのに みるみる満ちてく 涙の泉 ほろほろくずれる にんじん おじゃが ぼくの心も ポトフの湯気も すっかり凍えて 母さんの花柄エプロンを…

特別感

特別感がそんなでもなくなってたね ちょうどよい感じだよね ね 3年経ったころ そんなことでくすくす笑いあった 特別感にも慣れたころ ふたりは日々を壊したがって 自然と しかめっ面になってたね 10年経ったころ ふたりの間のすりガラスは 崩れんばかりに傷…

金魚

約束で縛られる幸せ 約束に縛られる不幸せ 束縛と呪縛のまんなか 生と死の狭間 食べ始めの愛しさ 食べ終わるさびしさ あなたとのことを そんなふうに考えこんでしまう 金魚みたいにゆれながら

空をくぐったんだ

鯉が泳ぐ空を 一度だけくぐったんだ 幸せと不幸を必死で仕分けていた頃 風しか食べないくせに 空を泳げる魚がうらやましくて 会いに行ったんだ 恋が失われた日に 空をくぐったんだ 風しか食べなければ 楽になれそうな気がして 空を泳ぐ魚に 会いに行ったんだ

そんな嘘を自分についた

交換する体温と言霊さえあれば 愛ほどでなくていい そんなふうに思った 交換するアドレスと淡い約束さえあれば 恋ほどでなくていい そんなことを信じた 共有した時間と儚い思い出さえあれば 涙ほどでなくていい そんな嘘を自分についた

静かな五月

まぶしく 柳の新芽が揺れていたのです その橋は 地図にもちゃんと載っていて 渡れば有名な観光地が すぐそこなのですが まぶしく 柳の新芽がそよいでいたのです その橋は たまに人以外の生き物が 行き交う いわば 忘れられた場所でした まぶしく 柳の新芽が…