猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

やさしい食卓

ほどよく煮えた

ポトフを前に

父さんは不機嫌だ

 

大好物のはずなのに

今夜は楽しみって

トーストかじりながら

笑っていたのに

 

みるみる満ちてく

涙の泉

 

ほろほろくずれる

にんじん

おじゃが

 

ぼくの心も

ポトフの湯気も

すっかり凍えて

 

母さんの花柄エプロンを

ぎゅううっとにぎってた

 

オトナになんてならない

そう決めたんだ

あの夜

やさしい食卓で