猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

おまじない

すべてうそっこ みんなほんと みんなほんとで すべてうそっこ

猫の独白

賑やかな夢から抜ければ 雨の街が今日も佇む 昨日のあなたを想う 透明な猫になる 顔のない猫に戻る

ひとかけら

かみさまが 散らかした夢を ほんのひとかけら 心に飾っておきましょう

もつれ

空の指先が白い波を混ぜて 僕はかみさまにみつかった 記憶を閉じたままで あやとりするように かき回されつづけた 空の指先がくるりくるり 僕をからめとっていった 沈黙を抱いたままで 糸みたいに ほどかれ続けた 空の指先がとても静かに 光を放っていた 僕…

夜を残して

夜を残して 去った 夜だけが 味方でいたのに、 手放した 口もきかずに 夜だけが 抱き寄せてくれたのに、 手放した 顔も見ずに 夜を残して 歩き始めた 夜だけが 信じられたのに、

希望

泣きはらした大地に 足を踏み入れる日まで 朝を抱いていよう 光を見つめていよう 喜びの涙が大地を潤すまで 笑顔があふれるまで

欲動

鎖を引きちぎった金魚の吐息 鎖をのみこんださかなの尾ひれ 惑う背中は赤くて柔い すがる背中は熱くて甘い

contrail

飛行機雲を指でたどる 未来を微塵も疑わなかった あなたの耳を指でなぞる 明日を微塵も疑わなかった 歪んだ月の泳ぐ空 褪せた恋色そよぐ風

月に炎

紅をさすよに粧う月は やがて我が身を焦がさんと あらがう指先愛おしむ 紅をひくよに荒ぶる月は やがて命を燃やさんと 流るる光を愛おしむ 月に炎のあふれし夜は いつか宴が果てるまで 移ろう嘆きを愛おしむ

利器

手に入れたとき 何もかもが とてつもなく強くなって とてつもなく弱くなった

いつか消える

時間を縛り付けて おとなしくさせることが できるなら 時間に蓋をして 閉じ込めることが できるなら 胸の痛みはいつか消える 傷痕は消えなくても

一日が始まる

名前もない朝 名前のない気持ちが生まれた 名前を求めて空に問えば 名前が呼ばれて 一日が始まる

思いだせれば

思いだせれば 海から生まれたことを だれでも星屑を抱いていることを 思いだせれば 海に還ることを だれでも星屑に戻ることを 眠りにつく瞬間に 思いだせれば それだけでいい

秘密

舌の上にのせなければ 素直でいられる 舌の上で転がすだけなら 嘘を手渡さなくてすむ 舌の上で溶かすだけなら 秘密を守れる 自分にさえ知られず

体温

何度だって 生まれ変わっている どんな姿も現実となる 鏡に映ったさかさまの夢より リアルな命しかここにない リアルな熱しか存在しない

悪夢とあたし

夢の中で夢をみた あたしの中のもうひとりのあたし 別の名前で 別の顔してた 壊れたほんとのあたしを取り戻して あなたに会いに行くよ あたしに気づかれないうちに あなたとの鬼ごっこを終わらせるために あたしを生きるために

夢がわたしを押し戻す

夢がわたしを押し戻す 眠り足りない心が とろりとろりと揺れるのに 夢はわたしを押し戻す 遊び足りない夜が きらりきらりと騒ぐのに 夢もわたしを押し戻す 嘆き足りない嘘が ぷかりぷかりと浮かぶのに

記憶はいつか

おととい思いだした 空の匂いと ひまわり色した君のトート 失ったのは 雨の温度と恋の記憶 君の笑い声 幸せな涙

忘れ去られても

名前は忘れ去られても 道はつながっている 名前を失っても 祈りはそこにある 名前を奪われても 心は輝き続けている

最強の者

月は血の相 纏うは猛る獣の名 熱き心に愛を抱くとき 彼は最強の者となる

恐竜

恐竜に憧れ ときどき吠えてみる 恐竜の真似をして 大きな歩幅で走ってみる 恐竜を思い ときどき来た道を振り返る 滅びの道を 振り返る

多分ずっと

天空と星の ちょうど中間の場所 ぼくたちは ずっとずっとそこにいて 忘れてしまうぐらいそこにいて 多分かみさまに 愛されていたんだ いつからだろう かみさまが すごくすごく遠くなった かみさまの声が すごくすごく微かになった “かみさま” そんな言葉さえ…

仮定法未来

こじ開けてみても 固く閉ざしていても 昨日は鈍い痛みを抱いたまま さびしい顔で 佇んでいた こじ開けていても 固く閉ざしてみても 明日は鋭い光をたたえたまま そしらぬ顔で 待ち続けていた もっと楽に泣ければいいのに もっと楽に笑えればいいのに もっと…

僕の望み

ずぶ濡れのままで この身体を抜けだして 狂ったソラのした 隠れ鬼に興じたい そしてもう一度 君に囚われたい

こだまする心音

雫を押し開き こだまする 心音 髪がサラサラ 光った まぶたのむこう 唇を押し開き こだまする 心音 涙がほろほろ つたう ぬくもりのむこう

秘すれば紫

目もくれず 赤 見放した 青 あからさまに 緑 秘すれば 紫 気圧されるような 黄 キスをした 白

たくさん並んだ

たくさん並んだ星たちの たくさん並んだ花びらは たくさん浮かべた想い出の たくさん流れた哀しみも たくさん並んだ人たちが たくさん並んだ木々の芽に たくさん浮かんだ幻の たくさん落とした忘れ物

リンゴのモノローグ

あなたはリンゴの皮をむく あたしがレモンをぎゅっと絞る あなたはリンゴを8つに切って あたしはレモンの滓を捨てる お行儀よく並んだリンゴに レモンジュースとシナモンをふりかけ あなたはオーブンに入れた そうして あたしの心臓が焼けるのを 飽きもせず…

傘もささずに

なんて悲しい空の色 なんてきれいな水の粒 なんて冷たい君の熱 なんてきれいな君の瞳

巧妙な手口で

巧妙な手口で隠した 古い恋の物語 綻びかけてからいつも 鍵をかけ忘れたことに気づく 巧妙な手口で重ねた 古い恋の物語 壊れかけてからいつも 間違いに気づく