猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

初夏を想う

指折り数えることを 許されるのだろうか 崩れ落ちるように いく春の中で 光を確かめられるだろうか 心待ちにすることを 許されるのだろうか 溶解し続ける 季節の中で また 夢を見られるだろうか

心得-1

「好き」と「嫌い」を とりあえず 心にこしらえた小箱にしまい込み 簡単には飛び出さぬよう 厳重に鍵をかけておく “少しぐらいなら” そんな誘惑にかられても 決してとりだしたりしないこと あの人に会う日は 必ず そのように心得ること Hadesさんによる写真A…

憧れの先輩

決まっているでしょう 人心を惑わすためよ ほかにどんな理由があると 思ってたの 大先輩は じまんの鼻先を空に向けた ほらほら そんなに落ち込まない そのくらいの覚悟 あなたにもあるでしょうに それとも 少し間をおいて 大先輩は静かに問う 人らの慰めにな…

店じまい

女でいることにも 男でいることにも そして 猫でいることにも ほとほと飽いたので SNSとやらを「店じまい」した 以前 五つのアカウントを回していた頃は のんびりした心持ちであったが やがて 「顔」を使い分けるのも 億劫になったものだから ひとつ消しふた…

記憶にまで嘘をつかれたので 僕は途方に暮れている 君が幸せだと嬉し涙を溢したのは 僕がそうだねと抱き寄せたのは 夢だったのか 妄想だったのか そもそもそんなことすら 記録されなかったのか いや 君と出会ったことが 一度もなかったと 真実はどうあれ 僕…

新じゃが

つけ置き洗い

あと1週間もせず 4月はいくので 投げやりなままの衣替えに ようやく着手する と言っても クリーニング店が次に開店するのは いつになるのか 夏の暑さは今年も前倒しなのか パンデミックは いやいや 悩むぐらいなら 手を動かせよと苦笑いしつつ 鍋蓋のよう…

案外平気だったなんて決して胸をはれないけれど

在宅でこじんまりな仕事のほかは 「何がなんでも出かけねば!」 という日はほとんどなく それでなくても 戒厳令数歩手前みたいな世の中なので 「うわ、今日は『何がなんでも』だ」 が訪れたなら そっと出かけて さっと帰宅 (マスクも厳重な消毒も漏れなく付…

家でお弁当

長い休みがやってきた そこでお弁当でも作ってみようと 思いたつ もう何年もの間 誰かのためにも 自分のためにも お弁当をこしらえたことがなかった 町が封鎖される少し前 思いつきで買った 冷凍唐揚げの大袋がある お試しセットの野菜ジュースのパックたち…

小さなスーパーの横にあるビルにて

ビルの窓から 地元民に愛される小さなスーパーが見える 仕事終わりにでも覗いてみるか と思ったら すでに棚はほとんど空っぽらしかった お米なんてほら 早めの昼休みをとっていた同僚が 手に入るだけありがたいわよと 500gの米袋を見せてくれた 明日からは …

切望

かわいいものが好きなだけなのに

「アレルギーで咳がでちゃいます」 少なからずそんな体質を持ち合わせている 寒暖差 美味しくてピリリと辛い食べ物 埃っぽい場所 そういうものにあまり強くないのは 幼少の時分からだ まだ「コロナ禍」という言葉が聞かれなかった頃 たまたま開いた地元企業…

週末光景

ひきだしから 裏紙を引っ張り出して 等分にカットする 中細ペンでこう記した つらつらと書き連ね もう1枚の紙にも こんなふうに それから少し天井を見上げ と書き加えた 流されず 惑わされず 慌てず ふだんの気持ちでいるために

心を診る猫の医者-8

あなたの心配ごとは あなたが作りだしているだけだから 少し経てば だんだんに 「なあんだ」って思えるようになって (すぐにってことではないけどネ) 薄まっていったり 軽くなっていったり それまでは ジタバタするより 仲良くしておいたほうが得というも…

往復

人の心というものは よくしたもので 三日ほどまんじりともせずであっても いつの間にか 涙のときは減り 興奮のような悲しみと なし崩しの日常と なんとか行き来ができるようになる 二日続きで よく見知った人が逝ってしまった 一人は誰もが知る笑いに生きた…

雨の水曜日

あまりに悲しいことが続いて お掃除するのは夕方からにしようと決めました 簡単に隅っこの埃を拭いて 絨毯にコロコロかけて 気になるところは 除菌して どうなのかしらねえと思いつつ ささやかな「空間除菌」とやらも セットして くるくる動いているうちに …

過積載-5

あなたは何を その場所に積みすぎたのでしょう 希望 絶望 焦り 衝動 悲しみも怒りも 喜びも嬉しさも 積みすぎていると 感じたことはないでしょうか はちきれんばかり なんだかわからない 名前のつけられない感覚でいっぱいになってる それでもいいのです 喜…

容赦なく春はくる

開花宣言より はるかに遅れて桜が咲き 南下をたどる不思議さに 天の気まぐれを思う 桜前線という言葉は もはや死語かと思いきや そういうわけでもないらしく ネットの上では“エア・花見”が盛んだ 禍がどれだけ続こうと 春は訪れるのだ 容赦なく過不足なく 今…

名残の雪

過積載-4

希望と絶望は 同じ場所から生まれ 実体はなく “それ”をどう捉えるかは 自分次第である つまり 希望と絶望は もともと同じ姿であるから 見分けがつきにくいのも また事実なのだ あなたはどちらの姿を 今 捉えているのだろうか 嬉しいほうに傾いていけるよう …

通わず猫

過積載-3

振り返って よくよく過去を辿ってみれば 折々でときめきはあれど 風のようでも瞬きのようでもあり 心浮き立つこともあり ひそやかな嫉み妬み嫌味を向けられることもあり (鍵は万全ではなく 優しげな単語に潜む色が伝わるのは いつの世も同じ) ある程度懐具…

逃げる猫

日常と似て非なるもの

12月から1月の頃 不注意から腕を傷めて 少しばかり買い物が難儀になった 車もなく 家族も少なく 買い物は自分の役目である となると 食材などは少しずつ買い足せばよいとして 困ったのは かさばりがちなトイレットペーパーや 箱ティッシュ そこで 普段使いす…

鬱々の

ショコラオレンジの夕闇-4

ショコラオレンジの夕闇は 少しずつ薄れ 浮かぶ海がようやく はっきり見えるようになってきた 雲を数える人らと 明日は海まで行ってみようと 他愛のない約束をしたばかり 気配を感じて振り返ると 人のように言葉を話す猫が ミモザと手提げを抱えて立っている…

過積載-2

季節が変わり始める頃 どうしてだか 盛大にお腹を下してしまう 決まって 夜が深くなる時間帯だけだから 朝にはケロリとしているぐらいの ものであるが なかなかどうして苦痛である 大抵は なんだか腰がちょっと痛い なんだか背中が張るみたい なんだか頭痛が…

Diary〜架空ごと〜

小さな小さな本当に小さな かの生物(?)が 人らを翻弄している いわれのないデマが渦巻き いわれのない絶望を育み 増殖と根絶を繰り返す 宇宙の歴史の一瞬は まるで永遠に落ち続ける雫だ 誰かを思って歌うことも 誰かを想って泣くことも 誰かと触れ合うこ…

詩人屋さんの日常-4

トーザ・カロット岬と呼ばれる場所に 一軒の毛糸屋さんがあります 魔法の見えない人らにも大人気だったのですが (多くはショコラオレンジの夕闇に さらわれて行ったものだから) 今は閑古鳥が鳴いているのでした 長いしっぽの毛糸屋さんは 鍵しっぽを持つ詩…

ある朝-3

コーヒーメーカーが ぽこぽこ歌って 外では雀たちが騒ぐ とうの昔に 飛ぶモノらは絶えたことになっているのに やはりデマに過ぎなかったのか それとも 巧妙な策略で 星はまだ無事だと 思い込まされているだけなのか コーヒーメーカーが ぽこぽこ歌って 外で…