猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

ショコラオレンジの夕闇-4

ショコラオレンジの夕闇は

少しずつ薄れ

浮かぶ海がようやく

はっきり見えるようになってきた

 

雲を数える人らと

明日は海まで行ってみようと

他愛のない約束をしたばかり

 

気配を感じて振り返ると

人のように言葉を話す猫が

ミモザと手提げを抱えて立っている

フリュという花屋の店長だった

 

くしゃみが出るようだったら

持ち帰りますが

 

ううん

あたしは平気です

ありがとうございます

 

猫は

こちらこそ、と微笑むと

ご両親からの預かり物です、と

手提げを渡してくれた

甘酒の飴がはみ出さんばかりに

入っている

 

明日のお出かけの時に

みんなといただきます

嬉しいな

お仕事頑張ってと

パパとママに伝えてくださいね

 

お安いご用です

では

 

フリュの店長は

慣れた手つきでミモザを形よく生けると

音もなくどこかへ立ち去った

 

大人になっても

子どもだった頃と距離は変わらない

どうやっても

あたしたちの上の

そのまた上の

ずーっと上に

 

遠くて

深すぎて

あたしはまた

空に見入る

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