猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん-8

朝から島中を ごうごうと雨風が走り抜けています こんな日は岬にすっかり人がいなくなるので 猫そっくりの店主はまあるい手で 「おやすみします」のプレートを 作っていたのです いつものようにお店の外だと ビュン! と連れ去られてしまうので 遠くからでも…

何度も不安になるものなんだ

とてもとても考えて迷って より分けて選びとって たくさんの中から ふるいにかけた それでも不安になって あの子に訊いても その子に訊いても 君なら大丈夫 君なら簡単 そんな気休めしかもらえなかった とてもとても考えて迷って より分けて選びとって たく…

イーストのご機嫌が悪ければパンは膨らまない

昨日 あたしの気持ちはとじていて 何かをこっそり育ててたんだ 反抗心だの 反骨心だの ノコギリで自分を削ぎ落とすように あたしの気持ちは狭くなって 何かをこっそり育ててたんだ これはこう それはそう 誰かが正しいといったから 誰かが間違いといったから…

きみが雨を呼ぶとき

きみが雨を呼ぶとき 歌が生まれる きみが風にのるとき 幸せが生まれる きみの指が描くとき 愛が生まれる きみの道が輝くとき 笑顔が生まれる 🐉

折り紙

角と角をあわせて ずれないように半分こ ほらできた 重ねることをくりかえすだけ 簡単でしょう 放射状に刻まれていく 美しい折り目 どうしてもそのとおりに折れなくて おっきいおててになりない 泣いて母を困らせた 角を角を合わせても ずれないように重ねて…

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん-7

トーザ・カロット岬に 夏の光がふりそそいでいます 毛糸屋さんでは ひぐらしの悲しみという名の レース糸が入荷したばかり レース糸もうっとりするほど素敵だけど やっぱり毛糸が好きで みかんの蕾の色の毛糸を ひとたま また ひとたま アルバイトのお給料が…

いつかのライオンのように

波しぶきのように 雲がゆらゆらして いつのまにかどうぶつの格好になりました キリンや象に似たものや きみの飼い猫にそっくりなのとか スローモーションの海のように ゆらゆらと 波しぶきは姿を変えていくのです 空がなくなっても 海がなくなっても いつか…

そんなこともある

世界がキライ この星もこの時代もキライ 遠くに行きたい つまり今は そんなに自分のことが 好きになれない時期らしい そんな朝もある そんな夜もある そんなことも ある

大好きだから

さっきまで 自分の中のやさしさを 少しいい気になって 見せびらかしてた さっきまで 自分の中の喜びを 少しやけになって 見せびらかしてた 今しがたきみが あははって 楽しそうに見せてくれた 笑顔にはやっぱりかなわなくて ぼくはいつものように ちょっぴり…

空とキスして

空とキスして 空に浮かんだ 空を抱きしめ きみが笑った 空とキスして 空を泳いだ 空を抱きしめ ぼくも笑った 空とキスして 空を走った 空を抱きしめ 心が透けた

今日この頃

下向くほうが簡単だし 誰とも目を合わさなくていい うつむくほうが 綺麗に見えると 誰かれともなく信じてる 今日この頃 下向くほうが気楽だし 自分とも目を合わさなくていい うつむくほうが 知的に見えると 誰かれともなく信じてる 今日この頃 下向くほうが…

わたしをさがしていますか

わたしはわたしを 生きていますか わたしはわたしを 楽しんでいますか おぼつかなくとも 今日を歩いていますか わたしはわたしに 苛立って なりふりかまわず 罰したくなる それでも わたしはわたしでいて いいですか 小さく 名前呼んでくれますか わたしをさ…

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん-6

今日は君のため息を 拾いにきたよ そろそろ泣きたい季節でしょ 月が隠れるのも雨の日の約束も 今年はどうも早すぎる だから君のため息を 拾いにきたよ なんだか下向く季節でしょ 星の色も毛糸の色も 濃くなりすぎる ため息つくぐらいで 染まるのが ちょうど…

あの頃

言われたんだ すごく美人さんだねって 悩みなんかないんだろうって どうにもこうにも苦しくなって 家中の鏡を布でくるんだ 窓にぼんやり映るぐらいで ちょうどよかった 言われたんだ ほんとに優等生だねって いつも正しいんだよなって どうにもこうにも悲し…

アナリーゼ

思いきりジャンプした その先に解決なんて見いだせないまま 思いきりジャンプした トニックもドミナントも 狂いっぱなしで 導かれるなんてまっぴらで 思いきりジャンプした その先に解決なんて見いだせないまま 思いきりジャンプした トニックもドミナントも…

好き

例えば おはようを交わすように 卵の焼き加減を選ぶように 今日の空模様を確かめるように 好き そう伝えられたらよかった

信じてました

ガマンをすればするほど 強くなるのだと信じてました 泣けば泣くほど 優しくなるのだと信じてました 叫べば叫ぶほど 気持ちが楽になるのだと 触れあえば伝わるのだと かたく かたく 信じていました

うわさ

空がイライラと 星を避けていきます なくなるなんて ありえないでしょ おとなたちも こどもたちも だあれも信じなかったのです 空はうねうねと 星を避けていきます 赤い空も 青い空も だいすきだったのに あのうわさ ほんとらしいよ もうすぐなくなるって 空…

梅雨寒の

梅雨寒の短かき袖に 猫を抱く

こぼれていった

無意味に泳ぎ続けることに飽きて 岸にすわりこんだ 楽しげなさざめきも うつろな気分も 欲望も祈りも憎しみも 塊になって流れている 水面をのぞきこめば とびきり醜いあたしが浮かんでて 慌てて指先でかき回した 今は泳ぎ続けるのに飽きて なんとなく岸にす…

きみの背中が見えなくなるまで

だいすきだった バツが悪そうに 斜め上見あげるとこも とてつもなく ウソが下手なとこも 白くないと月じゃない そんなふうに言い放つとこも だいすきだった 大丈夫 だから ありがとね 泣かないから きみの背中が見えなくなるまで

朽ちていく僕らの日常

干からびていくクリームソーダ 朽ちていくきみの笑顔 蝉は命を謳歌し 空は焼けるほどの青 錆びていく心の扉 朽ちていくきみの涙 蝉は愛を謳歌し 風はむせるほどの青 干からびていくクリームソーダ 朽ちていく僕らの日常 蝉は命の果て 森は悲しいほどの青

夢の出口に一人佇む

本のページを破るように 喜びだけを きみに手わたせればいいのに しおりがわりの小さな傷が 悲しみを増幅するから ぼくはもう 表紙を開けることすらできずにいる 好きなページに行き着くように 心の処理スピードも 改善されればいいのに しおりがわりの懐か…

Calystegia

手に触れて 体をつないで 声を聞いた 瞬間をくりかえしても悲しみが深くなるだけで 心に触れても 抱きしめても 意味はなかったのだとしたら どうして出会ったのだろう 想いを閉じ込められれば よかったのに そうして 外科手術のように とりさってしまえたら …

はちみつ色のまあるい子

はちみつ色のまあるい子 生まれてすぐ 道端のダンボールでみいみい言ってて 助けてもらった人以外には 心を開かなかったんだって はちみつ色のまあるい子 近づきたいけどイカ耳になっちゃう おかーさん以外は怖い人 おかーさん以外は信じない でも世界はおか…

ほんの少し夢を見た

翼ある命に憧れて わたしたちは時々 ほんの少し空を借りた どんなに真似ても 同じようにはなれないのだし ほんの少ぉし夢見るだけで 幸せだった ある時 もう少しだけ空を借りて もう少しだけとどまれないか そんなことをわたしたちは思いついた あと少し ほ…

ふわふわ

終わりもしなければ 始まりもしない 空から閉め出されそうになって 星からずり落ちそうになって それでもそんな声がする だから こころをときどき脱ぐように からだもときどき風に遊ばせてみる 終わりもしなければ 始まりもしない 大地から閉め出されそうに…

もう誰もいない

月の見える場所にはいない 時間軸と 待ち合わせの場所を わざとまちがえたから 触れ合っても風は動かず 夜はふたりを隠してはくれなかった 星の流れる場所にはいない 波のように光がうちよせ 愛した記憶も隠してしまう 月の見える場所にはいない もう誰もい…

塞がる

遠くでアラーム 止め忘れのあわてんぼはだれ 遠くでチリンチリン 自転車こいで きみはぼくを猫みたいだと笑った 遠くでなき声 それがだれか たしかめるまえに 夢が閉じた

一度だけなら

傷つけないですむのなら そう思ったので ちいさなかくしごとをしたのです 壊さないですむのなら そう願ったので ちいさなかくしごとをしたのです だけどそれは 傷つきたくないから 壊れたくないから そんなわがままでしか なかったのです 一度だけなら その…